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えっちゃんは部屋に入りサイコロを久しぶりに振った。出目は三。
記憶のない時の私。なにかのキッカケで思い出せそうな気もする。思い出したくて無意識に蓋をしてるのかもしれない。
知ってしまうと、今の自分ではなくなる気がして怖い。
皆はまだ寝ている。静かに服を脱ぎシャワーを浴びる。頭の片隅に気になってる長剣の構え。瞬時に何パターンかの構えが思い浮かぶ。イメージ通りに腕が動きそうになる。シャワーのお湯を熱くする。それでも消し去る事は出来なかった。マーロンと出会った時の倒す想像が再び蘇る。夢で見た短剣の柄の装飾が思い浮かぶ。
両手を胸元に上げて拳を握ってみる。気づかないうちに少し膝を曲げ身体を低くしていた。どの方向にでも動ける構えに。精神の輪郭が狭まり集中してくのが分かる。
鏡の中の裸の自分を観る。そのファイティングポーズは怖いほどサマになっていた。
拳を広げ手を降ろす。
裸の自分。確かに人間と同じ姿だと思う。小ぶりながらもリンと張った乳房。無駄な脂肪のないお腹周り。無毛な腰回り。高校生とは言い難い。でも中学生特有のふくよかさはない。
フッ。とえっちゃんは笑った。
胸が大きい方がいいとか、誰かを好きになるとか、そんな話題で頭がいっぱいになるのが普通の女の子。
でも私は違う。今を生き抜く事しか考えられない。それでいいのか?
それでいい。えっちゃんは振り払うように鏡にシャワーをかけた。そして頭からシャワーを浴びた。
やるべき事をやる。今夜の仕事の為に早く寝る。何の為に働く?ミヤビ達と楽しく過ごす為に。
ミヤビ、ケイナ、リン、ケン。
かけがえのない存在。
髪の毛を拭きながら寝ている皆を眺める。ミヤビが目を開けたのが分かる。えっちゃんは微笑み声に出さずに、ただいま。と言った。ミヤビも声を出さずに、おかえり。と返す。そしてまた目をつぶった。
えっちゃんは一人うなづく。
考えても仕方ない事は考えない。この平和な一瞬がずっと続くようにする事だけを考える。
えっちゃんはリンの布団に入った。リンの唇に当たってる髪の毛をすくう。リンは無意識にえっちゃんに抱きついてくる。えっちゃんはリンの頭を撫でて眠りに入った。




