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ケイナとリンがマーロン達の所からえっちゃんの元へ。マーロンは止めない。
[二時前には来ないでと言ったはずよ]
えっちゃんは問い詰める。
[お金もらえなかったわ]
追い討ちをかける。
[二千万円]
マーロンは無言。どう動いていいか分からないのだろう。
ここまで大きな事とは思ってもいなかったようだ。
[この人達に脅されて人質に取られたと言ってもよかったのよ]
最後の追い込み。これ以上は逆ギレされかねない。
皆が振り返る。パトカーが来るのが分かった。誰かが通報したようだ。
[隠れてろ。俺達が引きつける]
マーロンが言い、仲間と共に道路に出る。
えっちゃん達は草むらに隠れる。
マーロン達を追うためにパトカーが通り過ぎた。
[うまくいったの?]
リンが言う。えっちゃんはうなづく。
[晩ご飯何食べたい?]
えっちゃんは笑顔で聞いた。
パトカーが戻る前に空き地から立ち去る。
トンネル。ようやく皆の緊張が解けたのか饒舌になる。
[もうあの人達来ないかな?]
[少しオシッコ漏らした]
[大丈夫だったの?怖い事されなかった?]
口々に話し出す。
[二千万円もらえなかったの?]
ケンが口にした。
[元々貰えないのよ]
[なぁんだ。本気にしちゃった]
ケンが答えた。小学生が二千万円の価値を知ってる。マーロンもよりリアルな価値を知ってるだろう。だがどうしようも出来ない。金より命が大切なのは分かりきってる。
[早くミヤビに知らせよう。心配してるよ]
皆、自然と早足になる。アパートの階段でミヤビとコースケの姿。ミヤビ達の笑顔を見て安堵してる。
えっちゃんは二人に説明する。ケンが[僕、頑張ったよ]と言う。
恐怖心は去り、困難も去った。安心から興奮に変わる。
[今夜食べに行けるんだ]
ケンがコースケに外食を自慢する。えっちゃんは仕事の休みをとってある。
コースケはえっちゃんを見た。えっちゃんはうなづく。
[じゃあ僕も行くよ。もちろんお祝いに奢る。なんでも]
[なんでも?]
ケンがとびつく。
[あぁ、なんでもいいよ]
コースケはえっちゃんを見て言った。
えっちゃんは笑顔のまま何も言わなかった。コースケの好意を受け取る。
コースケがミヤビとケンを連れてお菓子を買いに行く。
えっちゃんはケイナとリンと部屋へ。
昨日からの話を聞きたかった。ケイナの顔がイマイチ浮かない顔をしていたからだ。
ケイナとリンの話。
結局、どこも同じ境遇だった。
マーロンには病弱な妹がいる。小学生高学年か中学生一年生くらいの。他にもケイナと同じ年頃の女の子がいる。
その食い扶持を稼ぐ為にマーロンは金づるを探してる。恐喝や強盗、売春斡旋。良い顔をするのに奢ったりの交際費。他のグループから舐められない為に服などの体裁を整えないといけない。
お金はいくらあっても足りない。
まともな職につけない。つけたとしても足元を見られ安くこき使われる。
誰もかれもが、遊び金ではなく生き抜く為のお金が必要なのだ。
冷酷な現実の凄惨さはケイナの浮かない顔が物語っている。




