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階段を上がる。コースケの部屋のドアは開いていた。廊下にミヤビとケン。
コースケの部屋の中をチラリと覗く。
扇風機が一台。ケンやミヤビ達の本。色鉛筆とチラシ。畳んである布団。
今までにもミヤビ達がコースケの部屋で遊んでた事が分かる。コースケが何故この部屋を借りたのかは分からない。
廊下の窓から下を覗く。見張りの一人はアパートの周りを動き回ってる。もう一人はずっとアパートの入り口を見てる。談笑はしていない。命令に忠実。
[怒らないで]
ケンの声で振り向く。怒る事なんて出来ない。
[利用出来るのは利用した方がいいと思って]
ミヤビの追言。
ミヤビの言う通りだった。えっちゃんは、意地でコースケを遠ざけていた。私が皆を守るから。守れると思っていた。大人の力を借りず頼らず。だがこのザマ。心が弱ってく。自分の弱さにうちのめされてく。
それを打ち消すように、ケンにこれからやる事を説明する。ケンの力が必要。
[俺の役目は?俺も皆の役に立ちたい]
説明し終わった後にミヤビが言った。
[私がなんかあった時にはミヤビ、貴方が皆を守らなきゃならないのよ]
えっちゃんはミヤビを諭す。
[僕も皆を守るよ]
ケンが力強く言った。えっちゃんは強くケンを抱きしめた。
部屋に入りテレビを付ける。沈黙は耐えられない。くだらない料理番組。楽しそうな非現実な世界。本気でこんな番組を見てる人なんかいるのだろうか。
食欲は誰も湧かない。それでもあり合わせの物を用意する。ケンもミヤビも食べる。えっちゃんも喉に押し込む。やる事は分かってる。体力が大事なのも分かってる。短時間だが睡眠をとる。眠りが浅いまま仕事行く時間。
階段を降りる。公園に男が四人に。おそらく交代なのだろう。新しく見る顔は居なかった。動けるメンバーは限られてるのだろう。
六人。多くても八人くらいか。
えっちゃんはそう見定める。
お互いチラリと見るだけ。
かまうな。と言われてるのか。向こうもえっちゃんを一目見てすぐ視線を外した。
えっちゃんは職場へ向かった。




