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奥のボックス席にユダが座っていた。好意的だと思ってるのだが、相変わらず何を考えてるか読めない雰囲気。
えっちゃんが座るなりユダは言った。
[キャサからは聞いた。最初に言っておくよ。お金も恩も要らない。感謝も要らない]
えっちゃんが、なんで。と言う前に手をかざされる。
[えっちゃんは、お金や恩を売るために仲間と過ごしてるの?]
えっちゃんはユダの言葉に首をふる。
[じゃあ何の為に?]
何の為に。えっちゃんは考えた事もなかった。
[たまたま]
思い浮かんだ言葉はそれだけ。
[たまたまで他人の世話を焼くのかい?今何人いるの?]
[四人]
[なら五人目は?六人目は?この界隈にだけでも三十人はえっちゃんと同じ境遇の子供がいるよ。全員面倒見るの?]
えっちゃんは何も答えられない。
[何の為に?]
ユダは同じ質問をした。
[目的なんかないわ。ただそうしたかったからそうしただけ]
えっちゃんは答えた。本当にそうだった。
[そうか。そうしたかったんだな]
ユダはそう言い口を閉ざした。沈黙。音楽も無い。表から自転車のベルの音。ユダの前のコップ。カラン。と氷が溶ける音。時計の針が進む音。
[えっちゃんはどこで過ごしてきたの?]
また質問。質問の意図が分からない。
[記憶がないんです。アケミさんという人に拾われて]
素直に答える。質問されてホッとした自分がいる。自分から何を言えばいいのか分からなかった。助けを乞うべきなのか。乞うてもいいのか迷っていた。
[今よりも辛い生き方だったのかな
?]
質問は続く。
[分かりません]
[身体に大きな傷とかある?]
[ありません]
[男がいた事は]
[いません]
[なんでそんなに落ち着いていられるの?]
[落ち着いてなんていません。どうしたらいいか分からないんです]
えっちゃんは全て素直に答える。
[本当は何才?]
[分からないです。身体で判断して小学生ではないし、高校生にはなってないと思ってます]
えっちゃんは気付いた。ユダは私に興味があるのだ。思わずユダの顔を見つめた。
[質問ばかりでごめんね。答えてくれてありがとう]
とユダは言ってポケットから小さな箱を取り出し開けた。中は大粒のダイヤモンドの指輪だった。
それからユダは簡単に説明し始めた。




