.25
キャサから貰ったメガネをかけて裏口から出る。表通りからパトカーの赤いサイレンの光が見える。
誰もが表の動向を見に裏通りには誰も居ないはずだ。
駆け足でその場から去る。何箇所も戻ったり、ビルの合間を抜けながらアパートへ向かう。
アパートの周りで五分くらい隠れてから中へ入る。
三階の通路の窓側に段ボールが四つ。ミヤビ達がやったのだろう。おそらく屋上にもある。
鍵を開ける。気配が変わる。皆まだ起きてる。
部屋の中は整頓されていた。物がかなり少なくなってる。寒々しい部屋になった。
全員、不安の眼差しで、えっちゃんを見る。
ケンとリンが抱きついてくる。
[ごめんね]
えっちゃんは謝る。
[コースケが来てさ。隣の部屋を使ってもいいと言ってきた]
ミヤビが言って、手のひらを見せる。手の中には鍵が一つ。コースケの部屋の鍵。
[コースケは?]
[まだ帰ってないはず]
えっちゃんは考える。まさか全てコースケが仕掛けたのか。あまりにも偶然過ぎる。
[迷惑かかるから辞めときましょ]
えっちゃんはその考えは言わずにそう答えた。
隣の部屋に移ってもあまり意味は無い。
ミヤビが口ごもる。えっちゃんは、何か他にも?と顔で促す。
[コースケが、姉ちゃんが断ると思うから、こう言ってくれ。と。僕もサイコロを持ってるんだ。と]
[姉ちゃんはコースケの事知ってるの?コースケは姉ちゃんの事知ってみたい]
ミヤビは続けざまに言った。何かを恐れてるようだった。
[他にもなにか言ったのね]
えっちゃんは言った。内緒に。と言われてるのだろう。ミヤビは口を閉ざす。
[姉ちゃんの事は信用してるでしょ。それに最近現れたコースケはまだ信じない方がいいわ]
えっちゃんは押す。
[だって姉ちゃん、コースケの事黙ってたじゃないか。あの時助けたのコースケじゃん。姉ちゃん言わなかった]
えっちゃんはミヤビの言動で気付いた。
ミヤビは自分以外の人を信用してない。信用したいのだが心の底から信用出来ないのだ。
ミヤビもケイナも、リンもケンも両親にさえ裏切られた。
どれだけ深い闇の底に居るのか。と、えっちゃんは思った。
[ごめんなさい]
ミヤビが言い過ぎた事に気付き謝る。不安はますます余裕をなくす。
[とりあえず寝よう。寝不足は気分も下がるし。とにかく。私がなんとかするわ]
普段なら自分の事を、姉ちゃん。や、ねぇね。と言うのだが、私と言ったのを、えっちゃん自身もケイナ達も気づかなかった。
誰も余裕など無かった。




