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逃げるにもお金は必要。いくらかかるか分からない。仕事してる場合ではないが、お金が無ければ次の不安が解決出来ない。
皆のそばにいたかった自分にそう言い聞かして、えっちゃんは職場へ向かった。
[ガリお願いね]
猫をアテにするようじゃ終わりね。という思いを打ち消すように階段を駆け下りる。
職場へ着く頃にはかなりの神経を消耗していた。ケイナ達が心配で仕方ない。
うわの空で仕事をこなす。どうしたら[無かったか]のようになるかを考える。
えっちゃん達は隠れてきたので、外の情報は全く知らない。その代わりにえっちゃん達の情報も表には出回らない。
中華料理店の皿洗い。職場の中国人に聞こうかと思ったが、あの男達を聞きまわってると噂になる可能性が高く、聞く事は辞めた。
あのグループがどこを根城にしてるのかも分からない。
ナワバリはあの近くだとは思う。えっちゃん達を探すために、あの辺りを探し回る。
店は暇そうだったので、具合悪いから。と仕事をかなり早めに切り上げる。
[もし、私の事を探してる人が来たら何も教えないで]
その一言だけを職場の中国人に言った。
あてに出来るかは分からないが、聞きに来たのが子供や若者なら教えないだろう。
大人を動かしてまでは探さないだろう。あの男達も搾取される側に回ってしまう。
えっちゃんの知り合いの大人達。助けを乞えるような関係ではない。
表は、かなりの人通り。まだ夜中の二時前。終電を諦めた組みの飲み直し。これから飲み始める人も多いだろう。
裏道から帰ろうと思っていたが表を通った方が人込みに紛れこめる。それにあの連中が見張るとしたら、裏道だろう。
表は警察官にさえ気を付ければいい。
えっちゃんは前髪をたくし上げ帽子に詰め込む。パーカーを羽織る。
警察官が現れると、そこだけ空白になるからすぐに分かる。誰もが警察官のそばになど居たくはないからだ。
若い男の罵声が聞こえる。酔っ払いのケンカが始まった。片方は呂律が回っていない。複数の声。何人か分からないがグループ同士のケンカ。最悪な部類のケンカが起きた。
野次馬が集まる。すぐに警察官も現れるだろう。それも四方八方から。
どこへ逃げるのがいいかを考えた矢先に誰かが、えっちゃんの腕を掴んだ。




