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えっちゃんは百人に囲まれたイメージを頭に描く。格闘技場だとコースケは目星を付けた。もしそこなら、おそらくリングの上だろう。全員は乗れない。シュミレーションをする。どこを狙うか瞬時に思い付く。
目をつき、喉をつき。金的を蹴る。それでは致命傷になる。
手加減出来るか?それが一番難しいと思った。
恐れや不安はこれっぽっちもなかった。
どんな服装で行くかを考え始めた。
そこで自分の事が怖くなる。本当の自分は好戦的で何人も人を殺してたのかもしれない。
そんな事はない。自分に言い聞かす。
[深く考えるな。始まれば身体が勝手に動くしな]
コースケが言った。
[本当の私は残虐なの?]
[凄く優しいさ。嘘じゃない]
[何人殺したの?]
聞きたくない気持ちが強かったが、言葉が勝手に出た。
[思い出したら分かるさ]
コースケは優しく言った。
って事は私は殺した事があるのね。えっちゃんは思った。
ひょっとしたら、自己嫌悪で自分からわざと記憶喪失になったのかも。
[このままではダメなの?]
[このままって?]
[記憶が無いままでは]
[戻さないとなぁ。不安なのは分かるが、戻って良かったと必ず思うよ]
記憶を思い出すか確固たる証拠がない以上、何を言われても、どう考えようが全ては想像でしかない。
現実を考える。カズを抑えた方が楽だろう。えっちゃん達に少しでも関わると大損する、命を失うくらいに思わせる。
それにはやはりコースケの作戦が適切だと思った。
コースケがカズを抑え、私が恐怖を与える。




