.10
朝方、仕事帰り。アパートの前でえっちゃんは隣の窓を見上げた。カーテンは前のままだった。
あの後コースケは帰って来たのだろうか。
軽足で階段を上がり、ゆっくりと三階へ。聞き耳を立て気配を伺うが、居るのか居ないのか分からなかった。
カギを開けて部屋に入り仕切りのカーテンをから部屋を覗く。皆寝ていた。いつも通り。変わらない生活。このまま変わらないでいたい。
えっちゃんは着替えて布団に潜り込んだ。
揺さぶられて起きた。何時?の質問に1時。とケンが答えた。
なんか夢を見てた気もしたが一瞬のうちに記憶から消えた。
えっちゃんはムクリと起きだす。少し寝過ぎた。夢を見た日はいつも寝坊する。
部屋は湿っぽかった。そろそろ梅雨がきて夏が来る。
ビルの合間に挟まれてるせいで風はあるのだが、日があまり当たらなく湿気が強いのだ。
今までのように玄関を開けっぱなしにする事も出来ない。
なるべく窓を開けとこう。とえっちゃんは皆に言った。
窓に近いリンが窓を開けた。
[あっ]
リンの声に、どうした。とミヤビの声。
[なんか隠れた人っぽい]
ミヤビが窓を覗く。
二人で下を見るも変わらない景色。
[気のせいかも。ごめん]
リンの言葉で二人は窓から離れた。
[隣の人は戻って来た?]
誰も答えない。誰も寝ていて分からない。
[ご飯]
ケンが福建の訛り言葉で言った。皆食事の支度を始める。
えっちゃんは買い出しにケイナを連れてく。付き添いはいつも一人だけ。ケイナなら敏感に感じ取れる。
あまり行かないスーパーに行く事にした。
わざと公園を通り、裏道を通り。少し遠回りをする。
心配のし過ぎだった。
途中の電気屋で扇風機が安売りをしていた。二人眺める。残り二台。と大きく書いてある。
[買う?]
ケイナが言う。
[帰りにね]
えっちゃんの、言葉にケイナが歓声の声を上げる。
[やっぱ辞めた。は絶対に無しだからね]
ケイナは念を押した。えっちゃんは元々買う予定だった。梅雨時期の五人分の服を乾かすのに必要だからだ。
買い物を終えて電気屋を覗くと扇風機は二台とも売り切れていた。
ケイナは凄く残念がったが、えっちゃんは必ず買うから。となだめた。
怪しい気配は無かった。まっすぐ帰り、えっちゃんは仕事に出かける。




