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早乙女さんと恋したい  作者: 春滝
ヴァルキリー編
7/7

7話『早乙女さんに恋したい』

それからの事、結論から言うとヴァルキリーは早乙女さんの身体から離れなかった。

その過程から話していこうと思う。


研究者について、あそこまで攻撃を入れられながらも研究者は健在であった。

最後の状態は研究者にとっても予想外の出来事であり、不安定な状態だった為にこちらの一撃で簡単に止まったらしい。

今は別の部署に送られて事情聴取をされているらしいがありのままを話すらしく、それもすぐに終わって今後の処置についての話になるらしい。

今回、一番の怪我を負ったのは実は俺であり、続いて力を消耗したヴァルキリーだった。つまり、物的被害はそれなりだが人的被害は殆ど無かったのだ。

なので研究者に重い罰を下すのは難しいらしく、今後について迷っているらしい。


「そうだねぇ、ヴァルキリーに代わる研究材料をくれたらジッとしてるよ」


とは研究者の言葉だ。


そしてヴァルキリーの話に戻る。

研究者の今後について迷っている事に関して一番困っている、自称だが、のがヴァルキリーだった。

ヴァルキリーにとって研究者とは他のヴァルキリーに何かした存在なので無罪放免というのはよろしくない。最高なのは処分、出来たら禁固、最低でも監視付きの釈放、と兎に角研究者に対しての罰を望んでいた。

研究者曰く、他のヴァルキリーからは力を奪っただけなのでいつかは目覚めるらしいがヴァルキリーにとっては簡単に信じられる話ではない。

という事で、監視の名目でこちらに残る事を選んだらしい。


そして今、俺と早乙女さん、というかヴァルキリーは放課後の教室にいた。

騒動も終わり、最近は表に出てくる事も無かったのだが突然手紙で呼び出されたのだ。

しかし要件に関しては全く書かれていなかったので直接問いただすしかなかった。


「それで、何か用なのか?」


「そうだな、用と言うのは他でも無い。貴様と私達に関わる話だ」


「私達?」


私達、俺はここにいるヴァルキリーと他のヴァルキリーの事だと考えたがそれは間違いだった。


「私とこの身体の本来の主、早乙女郁についてだ」


「早乙女さんと、一体何なんだ?」


とりあえず幾つかの考えが頭に浮かぶ。ヴァルキリーと一体になっている事についての説明か、それとも他の身体に移る事についてか、しかしまたも予想は外れた。


「うむ、早乙女郁は貴様を意識しているようだ」


「え?」


意識が真っ白に染まる。


「と言うのもだ、今回の件で貴様と早乙女郁は接点を持った。しかも周囲の人間から貴様が早乙女郁をよく見ているという話も聞いている。それらの積み重ねにより早乙女郁は貴様に好意を持つに至った。さらに」


「ちょっと待った、ストップだ、ストップ!」


「分かった、整理する時間が必要だろうしな」


何とか時間を貰えたので俺は急いで頭の中を整理する。

確かに俺も誰かが自分を好きという話をしたら意識するだろう、だがそれはその誰かに対して最低限の好意を持っていたらだ。流石に嫌いな人物に好かれていても複雑な気分である、悪い気はしないが。

そして意識してしまえば何気無い相手の仕草に対して意識してしまい後は一直線、崖から転がり落ちるより簡単に恋に落ちるだろう。

つまり早乙女さんは俺に対して最低限の好意を最初から持っており、今回の事で俺の事をどれ程かは分からないが好きになったのだろう。


「ざ、罪悪感が凄いんだが」


何故なら俺は早乙女さんを恋愛的な意味で好きとは言えない、だと言うのに早乙女さんは恋愛的な意味で好きなのだ。

しかもその原因がこちらが監視の為に早乙女さんを見ていた事なのだ、さらに言えば色々と外出したりもした。


「気にする必要は無い、早乙女郁が好きになるだけの価値が貴様にはあったという訳だ」


「と言ってもな」


「それにだ」


俺の言葉を遮りそう言うとヴァルキリーは迫り、金の瞳でこちらを見つめる。

急な事に驚いた俺はその瞳に縛り付けられる。

ヴァルキリーはそんな俺の顔に手を伸ばし、顔を近づけて言った。


「私も気に入った、今回の事でな」


「んっ!?」


ヴァルキリーは俺にキスをしてきた、そして金の瞳が黒の瞳に変わる。

つまり、キスをした状態でヴァルキリーから早乙女さんへと意識が変わる。

早乙女さんはすぐさま俺から離れたが、混乱した俺はそのままだった。


「ち、違うから?こ、これはね、え、えーと」


ヴァルキリーは現状をどの様にしたのか、そんな事を俺は考えていた。

というか現実から思考が逃げた。


「兎に角、また明日!」


そう言うと早乙女さんは走って去って行った、俺はというと未だにその場に立ち尽くしたまま。

事態の急変に取り残された俺はその場に座り込み、人生最大の溜め息を吐く。

思った以上に今の早乙女さんの表情が良かった、彼女が恋人になれば何度でもその表情を見る事が出来るだろう。

しかし現状、先ほども言ったが恋愛的な意味で好きとは言えない。


「早乙女さんに恋したいなぁ」


しかし贅沢な悩みではあるが普通に早乙女さんに恋をするのは難しいそうだ。

彼女の中にいるヴァルキリー、それに特保の事など問題は尽きない。

早乙女さんとヴァルキリー、二人の事を考えながらもう一度、溜め息を吐くのだった。

ヴァルキリー編、完

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