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早乙女さんと恋したい  作者: 春滝
ヴァルキリー編
2/7

2話『特殊異人保護衛部』

夜、特保支部


「うん、愉快」


そう言って笑うのは俺と比べるとかなり背の低い少女であった。しかし早乙女さんと違い純粋な黒髪、綺麗と評するしかないその顔、女性として必要な物を殆どは持ち合わせていた。

本当に、幼女体型なのが一部の評価を除けば残念なのが勿体ない。爬虫類を思わせるその瞳も人によっては忌避するものかもしれない。


「じゃあ助けてくれれば良かったじゃないですか、玖水先輩」


白澄玖水しらすくみず、俺と同じく特保に所属する1年先輩であり、異人でもある。不純物無き黒髪と爬虫類の様な瞳は異人としての特徴であり、先輩でありながら彼女が幼女体型なのも長命であるが故に成長の遅い異人だからである。

彼女も俺と同じ学園に通い、そして影ながら早乙女さんを護衛する1人でもある。というか学園における護衛は俺と玖水先輩しかいない、年齢も理由だがそれだけでは無い。


「余り理人を苛めないでくれよ、玖水」


「はい、でも司は理人に甘い」


声をかけてきたのは俺達の上司、良上司よしがみつかさだった。現場には出る事は殆ど無いが上との交渉等が上手く、俺達には欠かせない人物である。

俺、玖水先輩、良上さん、この3人だけが特保の面々である。実際の仕事の時は他の部からも何人かは来るが、正式に特保に所属しているのが3人だけというのが衰退の現実である。


「そうかい?まぁ、理人も玖水に無理を言うんじゃないぞ」


「そりゃあ、分かってますよ」


玖水先輩も俺と同じく護衛ではあるが、俺以上にその姿を隠す必要があった。というのも玖水先輩が早乙女さんとの接点が無い事が1つ、もう1つの主な理由は俺では護衛出来ない場所の護衛だからである。つまりは切り札、とまではいかないもののいざという時の為まで伏せておく必要があるからだ。


「それでは、そろそろ本題に戻ろうか」


「了解、ここまでにする」


「分かったよ、それじゃあ俺から」


そして俺達は現状を報告し合う。当然連絡はいっているので何が起こったのかは全員理解しているが、やなり本人の口から直接聞くのとは違う。こうやって直接話し合うのが出来るのは人員が少ないここの数少ない利点である。


「今まで襲撃は無かったんだし、もう護衛はいらないんじゃないか?」


「同意、でもまだ短い」


「そうだね、確かに今までは無かったが今後は分からない。特に憑依系は憑依されている側にも被害があるから気をつけ過ぎても問題は無い」


2人の意見にそういうものかった納得しながや俺は今後に関して考える、確かにこちらの護衛が無くなった直後に襲われたという話は稀にだが聞く。そう考えるとクラスメイトを見張るぐらいならそう難しいものではないのでそれくらいは頑張るべきだろう、だが。


「それじゃあ理人、今度の買い物は頑張るんだよ」


「期待、楽しみにしてる」


「・・・了解」


最後の2人の言葉にはこう返すのが限界であった、というのもこれも俺が悪いのだが諦めがつかない事はあるのだ。

というのも数時間前、俺が早乙女さんに言った言い訳が原因というものだった。


『実はさぁ、えぇっと、相談があって』


私こと、早乙女郁が菅くんにそう言われたのは今日の放課後、記憶は少し曖昧だけど私は話があると呼び出されたらしい。そこで菅くんから相談があると言われたのだった、そしてその内容というのが買い物に付き合って欲しいとの事らしかった。


「どうして私に相談してくれたんだろう」


というのも私と菅くんの関係というのはただのクラスメイトであって、それ以上でもそれ以下でも無いという関係。それなのにわざわざ私を選んで声をかけたって事は私でないといけない理由でもあるのかもしれない。


「菅くん、か」


私は学校での菅くんの事に関して考える。

私の知る限り菅くんは特別に何かがあるわけでは無い普通の男子だった。それなりに勉学に励み、友達も何人かいる感じだった。そういえば、体育の成績に関しては良かったっと聞いた事があるような。後はバイトをしているらしく部活には所属していないとか。と言っても本当にバイトしているのかも、バイトをしているとしてもその内容は全く知らない。

私の知る菅くんはそれぐらいで、好き嫌いや誕生日とかも知らない。つまり友達ではないクラスメイトとしては知っているであろう事ぐらいしか知らなかった。菅くん側は分からないが、それが私から見る菅くんだった。


「あ!」


そこまで考えて私と菅くんに関わる噂を思い出した、それは菅くんが私の事を見ているという噂だ。私の数少ない友人は菅くんが私の事を何かしら意識しているのは確実だと言っていた。その時の私は何かの偶然であると否定して特に気にする事は無かったけど、今考えてみるともしかして、


「菅くんが、私の事を好き?」


そう口にした瞬間、顔が燃えているのかと思ったぐらい熱くなった。というのも私は積極的では無い事もあり男子を自分から意識した事は無かったし、かと言って誰かから好意を伝えられたという事もない。即ち、私にとって菅くんが初めての人となったのだ。

好きかもしれないと考えただけでこうも意識するなんて聞いたら友人は私の事をチョロいと言うに違いないだろう。でも初めてなのだ、初めてというのは特別であり、特別なのだから意識するのも仕方ないのだ。

私は自分に精一杯の言い訳をしながら何とか頭の中の混乱を抑えながら眠りにつく努力をするのだが、当然簡単に眠れる訳も無くいつもより数時間後に寝落ちしたのだった。


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