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戦場の黒い花  作者: 武池 柾斗
第二章 クロと自警団
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2-18 一抹の不安

 クロは入団三日目から、見張り役として隼人とペアを組んで行動した。美佳は調理係長の仕事をこなしながら、第五層警備長としての役目を果たすようになった。


 第五層へ白コートが侵入してくることを想定して迎撃態勢時の配置を決め、第五層の各団員に迎撃態勢時の役割を与えた。そして、女性や子どもに軽めの訓練を施すようになった。それぞれが余裕のある時に、筋力トレーニングやゴム弾を使った射撃練習をする。それらは美佳の指導の下で行われ、ときには隼人や団長、副団長が加わることもあった。


 クロが見張り役となり、第五層の団員が訓練を行うようになってからも、団長と副団長はいつものように平常時はふざけていて、そのたびに美佳から鉄拳制裁を受けていた。しかし、仕事はしっかりとこなし、自警団をまとめ続けていた。


 隼人とクロは、毎日のように医務室へ行くようになった。見張りの前に住山と軽口を交わし合う。五十五歳と自警団最高齢でありながら、住山には驕った様子がなかった。

 クロと初めて顔を合わせたとき、住山は、


「誰かに似ているような……」


 と首をかしげていたが、それは気のせいということにした。


 クロは住山だけでなく、他の団員とも打ち解け、談笑することも多くなった。クロの様子を見ていくうちに、隼人は彼女に対する警戒心をなくしていった。


 隼人はクロと過ごしていくうちに、自警団での生活を楽しんでいる自分がいることに気づいた。しかし、過去の経験から、この日々がいつか終わりを迎えることを悟っており、楽しさと同時に悲しみを覚えていた。




 クロが入団してから一週間経っても、白コートが現れることはなかった。

 隼人は団員の様子を見渡して不安を感じる。白コートに対する恐怖心が薄れてしまった団員が多いのではないか、と。隼人が松永自警団に入って一年が過ぎたが、白コートによる死傷者はその一年間でゼロ。


 彼らにとって、白コートは過去の存在になってしまったのかもしれない。そう思ってしまい、隼人は胸が苦しくなった。

 恐怖を忘れた者は、いずれ痛い目を見る。


 白コートを軽く見た団員が犠牲になる。そのようなことが起こらないように、隼人はただ願うばかりだった。





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