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セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


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ギルドホールをデザインしよう! ――1

 定期メンテが明け、ギルドホールも無事に確保できた。

 第一回に売り出された三つは『聖喪女修道院』と『不落の砦』、それに俺達『RSS騎士団』で予定通り、何事も無く平和裏に落札だ。

 最初の入札金額、金貨十万枚から一度も動かなかったが……これは偶然の結果だろう。不思議なこともあるものだ。

 一般人には、それで納得してもらうしかない。

 競売を管理しているNPCをぐるりと封鎖して……話しかけられない様にして落札する手もあった。それなら金貨一枚で事足りただろう。

 しかし、あまりに暴力的だし、GMに――運営に目を付けられる可能性もあった。まだ監視されたり、対策を取られるのは好ましくない。

 それで解りやすく『金貨十万枚もの大金で落札』という説明を作ったのだ。それを疑問に思うなんて……失礼じゃないだろうか?

 金貨十万枚なら準備できた他のギルドは、苦々しく思っているはずだ。

 おそらく「奴らが満足するまでは我慢。本当のオークション開始は、その後からだ」などと考えているか?

 だが、それは間違いだ。俺は最後のパーツを――知りたかった情報を手に入れてしまった。仕掛けるなら最初に、つまり今回だったのだ。

 俺は満足しない。今後も落札し続ける。だから『本当のオークション』なんて……いつまで待っても始まらない。

 これが世界征服への最初の一手で……最後の一手だ。

 まずはあと三つ。最低でも三つのギルドホールを確保すれば良い。

 そうなれば俺が――俺達『RSS騎士団』が、運営に代わってオークションを始められる。もちろん、ある意味『本当のオークション』であるから、一律金貨十万枚なんて値段にはならないだろう。

 売る相手はもちろん、『RSS騎士団』が好ましく感じ……少なくとも俺達に中立、できれば協力を誓うギルドだ。

 そして手元には大量の売却益が残る。『本当のオークション』で得た金額だ。想像もつかない大金となるだろう。

 その莫大な資金を使って次のオークション――これは運営が取り仕切る方――で全ての競売品を落札する。

 どんなに価格が高騰しても構わない。どのみち上乗せした金額で転売する。俺達の懐が痛むことは無い。むしろ、高くなればなるほど、利益にすらなる。

 あとは何度でも――ギルドホールが売り切るまで繰り返せばいい。

 そして世界が変わる。

 ギルドホールを所有できるギルドは、全て『RSS騎士団』に中立か協力的。そうなれば世界を征服したと言えるのではないだろうか? 少なくとも、世界最大の権力機構として君臨できる。

 これはプレイヤー間でギルドホールを売買できる前提だ。そこが予測と違っていたら、作戦はご破算になる。何よりも先に知りたかったのは、その方法だ。

 しかし、問題なく可能な仕様だった。心配していた複雑なシステムなども無く、普通のアイテムと同様、ただ『権利証書』という名前のアイテムをトレードするだけ。あまりのシンプルさに、拍子抜けしてしまった。

 これで勝てる!

 そう、世界は清浄化され、我ら『RSS騎士団』の悲願が達成されるのだ!

 まだ検討中だが……古き良き伝統「男女七歳にして席を同じゅうせず」を守らせれば良いだろう。男は男だけのギルド。女は女だけのギルド。もちろん、パーティもだ。

 同志達よ、俺は成し遂げるぞ!

 もうリア充に虐げられることはない。いや、リア充はこの世界から根絶する!

 非モテ、ブサメン、毒男、ぼっちなどと差別されることもなくなるのだ!

 良いことを思い付いた! ついでにバレンタインデーとクリスマスも禁止にしよう!

 だが、焦っては駄目だ。まだ浮かれてはならない。いまは落ち着いて、静かに……誰にも気付かれることなく……王手となる最後の一手の為に動くのだ。

 あと一つ二つは『不落』も、ギルドホールを欲しがるだろう。それなら共闘を続けてもいい。こちらから、そう誘導しても良いくらいだ。

 狙った状況になるまで……資金繰りが完了するまで、まだ時間がかかる。コントロール不能な相手に渡るより、用途のハッキリしている秋桜達の方がマシだ。秋桜たちが所有したギルドホールは……世界が清浄化してから考えればいい。


「それでは臨時の幹部会議を始める。議題は……まあ、諸君の想像通りだ」

 会議はジェネラルの宣言で始まった。

 場所は定例の……占拠している宿屋の中で、一番大きい部屋だ。まだギルドホールは完成していない。どのような建物にするか、これから会議で決めるところだ。

 特に決まりがあるわけではないが、慣例で幹部会議の参加は尉官級以上からとなっている。正直、堅苦しくも感じるが……あまりに大勢で会議しても仕方ない。

 出席者は団長ジェネラル、その副官サトウさん、副団長ヤマモトさん、第一小隊隊長ハンバルテウス、第二小隊隊長シドウさん、第三小隊隊長アレックス、それに情報部から俺とカイの二人。この場に居ない尉官も数名いるが、各部門の代表者は集まっている。意思決定の場として十分だろう。

 そして尉官級ではないが、俺はヴァルさんを連れてきていた。形式としては参考人となる。

 しかし、同じ様にハンバルテウスの奴まで、背後にデックさんを従えていた。「勝手に情報部の人員を!」などとは思わないが……厄介ごとの予感はする。

「とにかく、ギルドホール?の落札はめでたいな。アジトや基地がある……戻るところがあるのは喜ばしいことだ。ご苦労様だった、タケル大尉」

 団長から労いの言葉があった。

 いまだに疑問なのだが……なんで階級付けがしっくりしてるんだ? ハンバルテウスも固執してるが、あいつのはゴッコ遊び感が拭えない。ジェネラルの場合は……板に付き過ぎてるというか……呼びなれているというべきか……。

「タケル君のことだから、次の準備はしてるんだろう? 良ければ聞かせ欲しいな」

「はい。それじゃ……ヴァルさん、準備をお願い」

 ヤマモトさんに促され、手はず通りにしようとしたら……なぜかヴァルさんは嫌そうにした。まだ観念してなかったのか?

 少し怖い顔をしたら、しぶしぶ黒板代わりにしている壁に図面を貼った。それは俺が注文したもので、ギルドホールの案――本部建設案の一つだ。

「……これが俺らの買った土地か? ……数字じゃイメージし辛いな。二十メートルかける十メートルってどれくらいの広さだ?」

「……ざっと六十坪、畳で換算して百二十畳敷、バレーボールコートと同程度です」

 アレックスの疑問に、如才なくカイが答えた。

 久方ぶりに顔を見た気がする。

 アレックスは第三小隊を束ねているが……あまり俺と接点がない。第三小隊全員の生活サイクルが夜型なのだ。ほとんどのメンバーが深夜にログイン、明け方にログアウトしている。

「ここに俺達のギルドホールを建てるのか……楽しみだな、タケル! ……それで物は相談なんだが……その……トレーニングルームをだな! 作らないか?」

 恥ずかしそうにシドウさんが提案する。

 なんだってVRの中でトレーニングなのか謎だ。それでもシドウさんの希望なら叶えたいところだが……アレックス同様、シドウさんも勘違いしている。

「みなさん、良く見てください。これは敷地図じゃありません。見取図です。ヴァルさん、次の……三次元図を見せてあげて」

 仏頂面でヴァルさんは指示に従った。……あとでフォローする必要があるな。

 新しく貼り出されたものには、俺の注文通り、敷地面積一杯に建てた真四角な建物が描かれていた。出入り口は正面に一つだけ、簡素な物があるだけだ。窓などは一切ない。

「これじゃプレハブじゃねえか! ……っと、すまない。言い過ぎた。許してくれ、タケル大尉」

 アレックスが慌てて砕けた物言いを訂正した。

 別に階級で呼ばれなくても気にならないし、フランクに話してくれた方が助かる。気にしないでくれというように、手を振って答えておく。

 それよりも、三次元図を見て鼻で笑ったハンバルテウスの方が不愉快だ。

「うん、まあ……こういうのを予想してたけど……ここまで徹底するとは考えてなかったよ。それでタケル君……説明が必要だと思うよ?」

 一人楽しそうにしているヤマモトさんが、先を促した。

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