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セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


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エピローグ――5

 しかし、再会は悲しいだけではなかった。

 実際にクルーラホーンさんとミルディンさんにお会いできただけでも、得難い経験といえる。……なんせお二人とも、むこうでと全くお変わりがない!

 そして味を占めた訳でもないけれど、調子に乗って別のオフ会にも参加した。メールで顛末を聞かれたクピドさんが、俺を呼んで下さったのだ。


 新宿のやや外れ、伊勢丹やマルイなんかの裏あたりで、クピドさんはお洒落なバーを経営していらしゃった。

 俺のようなガキには敷居が高い――もちろん新語の意味で――というか、まだ早い大人な世界を感じさせる。

 クピドさんなんて真っ白なレースのついたブラウスを大胆に胸を開け、口髭なんかも蓄えられていて……いかにも『ザ・夜の男』なダンディーモードだ。

 さらには主婦として家に収まる前は、この街で働いていたと仰るガイアさんも駆けつけて下さり、『組合』メンバーを中心とした賑やかなオフ会になった。


 もちろん場違いな俺が混じったのには理由がある。

 いつの間にかクピドさん主導となっていたけれど、『甲冑野郎』達へお灸を据える作戦が開始寸前となっていたからだ。

 『組合』のコネを――それも運営内部への伝手を、ややイリーガル気味に大活用した結果、目ぼしいターゲットのリアル特定が済んでいた。

 ……実に恐ろしい人達だ。

 ネット系の商売だと、顧客の情報は秘匿される。それは絶対厳守といってもよかった。一プレイヤーとして要求しても、必ず突っぱねられる。

 それなのに強要できるクピドさん達のコネは、尋常なレベルではない。

 普通なら業務上横領や背任だとかの……露見したら社会的にアウトな部類の話になってしまう。

 しかし、クピドさんの暴走?は、それで止まらない!

 まず、その手の知識に詳しいという『組合』メンバーによって、架空のVRコンテンツ・テスターの募集を開始された。

 それから偶然を装ったダイレクトメールなどで、『甲冑野郎』(ターゲット達)を誘い込む。

 もちろん、現物のVRサーバー設立を――つまりは実際にアクセスできる本物を用意済みだ。

 甘い言葉に乗せられてログインした瞬間、哀れな生贄の羊達は、クピドさんがいうところの()()()()()()()()に遭わされる。

 ……それが大まかな作戦の概要だった。大掛かり過ぎる!

 まあVR上で行われるので、最低でも命の保証はされている。それだけで奴らも感謝するべきだろう。


 これを世間の人は、やり過ぎと考えるだろうか?

 非情といわれるかもしれないが、俺には過剰な報復と思えない。

 なぜなら奴らには、回避するチャンスが与えられている。……逃げる選択すら許されなかった女の子達より、ずっとマシだろう。

 それに「もうVRサービスなんて懲りごり」と悔いていれば、俺達も追撃はしない。話もそこで終わりだ。

 また、奴らの暴挙が、所詮はVRのゲームに過ぎないのであれば、俺達の報復も同じように大したことではないだろう。

 逆に厳し過ぎる罰であるなら、当然に奴らの罪も重い。

 |「目には目を、歯には歯を」《ハムラビの法》は、もはや文明的じゃないないかもしれないけれど……いまも説得力を持っている。


 なんて報告じみた話題を、アリサとのメールに書いたら……とても怒られた。ちょっと意味不明だ。

 また――

「バーで俺は『ヘテロの兄ちゃん』と連呼されたのだけど、意味が解らん。アリサは知ってる?」

 と書いたのも拙かったらしい。なぜかカンカンだ。

「もう一人でクピドさんのお店へ遊びに行ったらいけません!」

 と厳命されるし……少しアリサは過保護じゃなかろうか? 年頃の娘さんでもあるまいし、多少の夜遊びぐらい男の甲斐性だと思う。

 ……もちろん、そんな感想を正直に返していない。俺だって少しは学ぶ。


 しかし、このゲーム内の名前――プレイヤーネームでメールを出せるシステムは、やはり便利だ。

 営業休止中――どころか倒産の可能性すら囁かれている運営が、維持してくれたことに感謝だろう。なんせプレイヤーネームでしか連絡の取れない人も多い。

 そして正式サービスが開始する直前の頃みたいに、またアリサと頻繁なメールのやり取りも再開していた。

 アリサは雑談好きというか筆まめな方だから、内容も他愛のない話ばかりだけど。

 まあ、アリサの日々が知れて嫌な思いはしない。密かにメールが楽しみなぐらいだ。

 先日はようやく車椅子生活が終わって、なんとか松葉杖で歩けるようになったと書いてあった。実に喜ばしい。

 反面、せっかく痩せれたのに、徐々に元へ戻り始めたと嘆いてたりもする。

 他愛もなく可愛らしいと思わなくもないけれど、しかし……そんなこと言われてもなぁ。

 どちらかというとアリサはベストな感じだから、元に戻るのなら俺としては万々歳だけど……そんなことを書いたらセクハラだろうし。


 なぜ女の子は返事に窮することを手紙(メール)に認めるのだろう!


 その証拠に、なぜかメールのやり取りが始まった秋桜とリリーも……俺を困らせて楽しんでいるのかと疑いたくなる。

 特にリリーは、あれの個人情報でも狙っているのか、なかなかに意味不明だ。

 やたらと都下の霊園へ知り合いの墓参りに行った話をするのがおかしい。奇妙過ぎる。

 例によって、俺を相手に足りない陰謀分を補給しているのだろうか? 犬用の暇つぶしガムにでもなった気分だ。


 そして秋桜も秋桜で、意味不明なメールを連投してくる。

 脈絡なく天気の話をしたかと思えば、唐突に今日食べたパンが美味しかったなどと返答に困る感じだ。

 正直、意図が分からない。これは何かの罠? それとも嫌がらせか?


 ちなみにネリウムからも時折メールが届く。主にアリサへ出した返事のダメ出しで。

 ……アリサに宛てたメールの内容を、どうしてネリウムが知っているんだ?

 しかし、似たようなダメ出しは、リリーからも送られてくる。

 どうやら俺の出したメールは、女の子達の間で公開されているらしかった。


 ……少し俺の扱いが、酷すぎやしないだろうか?

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