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セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


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エピローグ――2

 そして事件の全体像も、やっと把握できるようになった。

 ……というよりログアウトしてから数日は、それしかしていない。

 ベッドで寝たきりだったし、大人しくテレビでも観ているしかなかったからだ。

 しかし、テレビ鑑賞なんて久しぶりだったけれど、意外と侮れない。インターネットすら使えない――マウスすら動かせない有様だと尚更だ。

 ……すぐに同じ内容の繰り返しとなり、最後には閉口してしまったけれど。それでも全体像は知ることができたのだから、良しとするべきか。


 まず驚かされたのは、俺達だけが――通称『セクロスのできるVRMMO』に接続していたプレイヤーだけが被害者でなかったことだ。

 VRMMO限らず、様々なVRマシーンを利用するシステムが狙われていた。

 俺達と同じVRMMOに始まり、MO――マルチプレイヤー・オンラインの略。MMOとは違い数人を相手にする――や各種VR対戦ゲーム、仮想レンタルルーム、VRオフィスと……多岐に渡っていて、枚挙に暇がないほどだ。

 ……おおよそ被害者百万人規模な、前代未聞の大事件といえる。


 さらに狙われたのは、どうやらVRサービスの基幹であるサーバー――ようするに運営側がVR空間を再現してるコンピューター――だったらしい。

 俺達ユーザーは、VRマシーンからインターネット回線を通じ、ホスト役である運営のサーバーへアクセスし、そこで演算されている世界の住人となる。

 この説明は大雑把過ぎるけれど、そう間違ってもいない……はずだ。


 そこで犯人は、まずサーバーを不正利用(クラッキング)した。

 続いて占有したサーバーを橋頭保に、次はログイン状態な各個のVRマシーンも支配下へ治めていく。

 その後、外部との接続や接続終了を不可能に――平たくいい直すとログインとログアウトをできなくする。

 例えるのならサーバーとVRマシーンは、無理矢理に籠城を強いられた訳だ。俺達プレイヤーが残ったままで。


 もちろん、全てのケースで上手くいったわけではない。

 成功率でいえば一、二割といったところだろうか?

 サーバーの支配に成功しても、誰かを閉じ込められなければ意味はない。ただの破壊工作に終わってしまう。

 事実として事件発生直後は、ありきたりのサイバーアタックの一種と考えられていた……そうだ。

 しかし、逆にいえば一、二割は成功した訳で、その成功例では俺達のような人質が捕らえられる。

 色々な憶測が流れているけれど、犯人の狙いは間違いなく()()だろう。


 つまり「デスゲームではない」という予想が正しかった!

 俺達は少し想像力が豊か過ぎて、さらには警戒心も強すぎたのだろう。

 犯人の狙いは俺達を閉じ込めることであり、ログインとログアウトさらに外部との接触を禁止しただけだった。

 なので発言を外部サーバーへ記録している各種全体メッセージは、エラーを起こして使用できず――

 やはり外部サーバーと情報のやり取りが必要なSS(スクリーンショット)SM(スクリーンムービー)の閲覧も不可能となり――

 当然にログアウトもできず――

 さらには『セクロスのできるVRMMO』特有の仕様で、キャラクターの復活もできなくなっていた。

 ……俺達に起きたことは、そう説明できる。


 そして、ここまで大それた犯行を企てた犯人は、単なるテロリストだった。

 過激派集団による犯行声明があり、政府機関も認めているのだから、テロだったことに疑いの余地すらない。

 つまり――


 自分達の主義主張が認められなかったり、世の中が思い通りにならなかったら、全く無関係な人すら殺める奴らによって行われた!


 もう俺は一生を通じ、テロを否定する。

 どんなに正しい思想も、テロという手段に頼った時点で無価値にしか思えない。

 なぜ自分達の大切なものが踏み躙られれば怒るのに……どうして他人の聖域は侵せるのか?

 それも時には、無関係な人間の命すら犠牲にして!


 しかし、憎めば済む話でもなかった。

 なぜなら不幸なことに過激派集団は有能だったからだ。

 そもそも遠隔大量誘拐――起きたことを分類するなら、これは誘拐だろう――は新し過ぎたし、致死性な病のように強力だった。

 まず誘拐という犯罪が抱えるリスク――人質の管理から解放されている。これは大きかった。いわゆるローリスク・ハイリターンにできる。

 半面、トレードオフで人質に対する生殺与奪の権利を失うが、それを犯人達は――

 虚偽(デマ)によって補った!

 つまり、無理矢理なログアウトは――リルフィーが主張したような『物理的にログアウト』は危ないと誤情報をばら撒いた……らしい。

 これに攪乱された政府側を、一概に非難はできないだろう。

 事実として俺達も「これはデスゲームを模倣した犯罪かもしれない」と予想した。同じような発想をしてもおかしくない。

 そして「これがデスゲームであれば、その単純な手段への対応策もあるはず」と考えるだろうし……誤情報の真偽を試す訳にもいかなかった。

 元々、数パーセントという僅かな確率ではあっても、『物理的ログアウト』には事故の可能性はあったし……それが重大な結果を招くことも珍しくない。

 一万人が『物理的ログアウト』をした場合、五百人前後に事故が起き、その半数に大問題が発生したら……二百五十人もの犠牲者が生まれる計算となる。

 とても選べるような選択肢ではない。弱腰と責められないはずだ。


 結果、過激派集団との交渉で譲歩を――俺達の解放を求めながら、裏ではシステムのコントロール奪取を狙う二正面作戦が選択された……らしい。

 ……これも陰謀論レベルでは、様々な憶測が飛んでいる。

 曰く、A社製サーバーにはないM社製に特有の安全上の不具合(セキリュティホール)を狙われた。

 曰く、VR技術の日本導入に際し、安全基準をM社製に合わせている。

 曰く、そもそも政府系施設にM社製だけが納品されているのは怪しい。

 曰く、政府は過激派と裏取引で身代金を支払った。

 曰く、タイムリミット間近に都合よく成功したのは、裏取引のあった証拠。


 ……陰謀論にも真実は混ざるという。全てを一笑に付すのは、危険でもあるはずだ。

 それでも一介の犠牲者すぎない俺としては、「現実側も大変だったんだなぁ」程度の感想だったりする。

 なんというか……半分以上が他人事に思えてならない。リアルに感じられなかった。

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