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セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


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PvP――2

 しかし、そう決断したにも関わらず――

「正直、見損なったぜ、ハンバルテウス。この屑共は団長の仇で……そこで脅されてるのは、お前の副官で……縛られているのだって、まだ子供だぞ? どうして誇りを捨てた? なぜ仲間を裏切る?」

 とハンバルテウスを非難してしまった。

 ……もう遅く、余計な言葉だろうか?

「お、俺は……俺は、ただ……ただ理想を追っただけで……それなのに……どうしてか――」

 絞り出すように呻き、視線すら合わせてこない。


 ……そして大きな疑問が解けてしまった。

 どうして『RSS騎士団』の捜索で、この三人組は――『甲冑野郎』に『偽団員』、『盗賊』の三人は発見できなかったのか?

 答えは至極簡単。内部に協力者がいたからだ。ハンバルテウスの手引きで、上手い具合に潜伏していたのだろう。

 どんなに大きく権勢を保っている組織であろうと……いや、そうであればある程、それ自身で隠したものは探し出せない。

 そしてハンバルテウスが、ゴブリンの森の強姦魔にして『甲冑野郎』と接触し続けた証拠でもある。

 ……この狂人とだ! そんなことをすれば、誰であろうと歪む! 曲がってしまう!

 ハンバルテウスが堕落してしまったのは、こいつが耳元で俺への憎しみを囁き続けたからだろう! そうに決まっている!

 いや、俺自身に問題があった? それともハンバルテウスにか?

 二人共にサッパリした性格ではない。互いに認められないからって、『河原で殴り合って夕暮れには親友』なんて無理だ。

 結果、互いに不満を貯め込み続け、爆発の時を待つことになる。

 やはり俺は――俺達は、どこかで間違えている。どうすれば良かったのか、いまだに解らないけれど……殺し合いをしないで済む未来もあり得たはずだ。


 だが、もう行動するべき時が来ていた。何を言っても、もう後悔でしかない。


「これが最後だ。遺言ぐらいは()()()()。俺達の方はお別れを言う()()は終わってるぜ? そうだろ、皆?」

 待ちきれないといった体で剣を振り回しながら煽り、後ろ手では『禁珠』を皆に見せておく。

 おそらく『禁珠』を回すことになるが、手間取ると破たんする。……アリサは一番に慣れてないはずだが、大丈夫だろうか?

「なにが遺言だ。招待状を送るより先に来たのは、タケル……お前じゃねぇか?」

 ずっとニヤニヤ笑っていた『甲冑野郎』が、堪えきれないといった様子で口を開く。

 この土壇場で楽しそうにしてやがる! ……本物のきちがいか?

「まだガキは縛っただけで……お前用の飾り付けは済んでなかった。ひどく興覚めだし、残念だ。どんな悲鳴を上げたか、どれだけ騒いだか……漏らさず教えてやろうと思ってたのによ」

 うっとりと口上は続いた。

 ……訂正の必要がある。きちがい()()じゃない。こいつは間違いなく、正真正銘に狂っている。

 また下卑た笑いを漏らしながら追従する『偽団員』と『盗賊』も、似たようなものだろう。

「せっかく俺達は楽しく()()()を遊んでたのによぉ。βの頃からうるせえこと言いやがって……自治厨の糞が」

「ログアウトできないんだ。好きにさせろよ。正義感ぶって……断罪だぁ? 自分勝手の都合を振り回して……俺達と、どこが違うんだ?」

 もう理解の範疇外としたい。理性が拒絶している。


 また、モヒカンをして『本物寄り』と言わしめた真実を思い知らされた。

 おそらく、これはもう一つの可能性だ。

 こんな意味不明な不具合が発生し、誰にも彼にも凶器が配られたら……力の理論が罷り通り、血で血を洗う最悪の事態もあり得た。

 あらゆる意味で『弱さ』を持ってしまったものは、『強い』者に支配され搾取される。

 つまり、女性は暴行され、弱者は殺され、誰かを踏みつけにできる者が最強の狂った世界だ。守るべき誰か――仲間がいることすら、おそらく弱点となる。

 もう末世のような地獄だろう。

 そうならなかったのは、このゲーム世界の民度が高かったせいもあるし、幸運に恵まれただけともいえる。

 ……ほんの少し匙加減が違うだけで、物事はどちらへも転がれたのだから。


 そしてこいつらは、不具合発生後も『自由に行動していた』可能性がある。

 ……というか、言外に認めたも同然だ。

 『組合』のクピドさんから指名手配を求められたのは、こいつらのうちどちらか、または両方か?

 確かに不幸な事件も、起きているとは思っていた。しかし、ここまでの悪意に拠っていたとは!

 なぜ性的犯罪が無くならないのか、初めて理解した。解らさせられた。

 おそらくこいつらには、軽犯罪程度の認識しかしていない。だから、簡単に繰り返す。

 自転車や傘を盗むものは、何度でも盗む。

 ちょっとした背任や横領をするものは、犯罪と認識すらしていない。

 飲酒運転の常習者は、絶対に止めないだろう。

 なぜなら罪の意識を感じてないから。


 ……駄目だ。これ以上は一日の許容範囲を超える。

 どう処理するにせよ、いまは脱出だけを考えよう。


 空いた手で『禁珠』を掲げ、全てを振り払うように声を張る。

「始めるぞ! 俺が最後で、後ろから! ネリウムさん、指示を!」

 すぐに三人から気持ちの良い応えが返ってきた。……士気は十分だ。

 また、後ろから――後衛からと順番を指定すれば、最初はアリサかネリウム。そしてネリウムに支持を頼めば、どちらが先かで悩むこともない。

「いきます! 『石』を禁じます!」

 背中でアリサの声がする。

 同時に視界の隅では「『禁珠』が使用されました。『石』類は使用できません」とアナウンスが流れた。

 現状の開始だ!

「リルフィー、前へ出るぞ! 二人は俺らの後ろに!」

 叫びながら、不意を討たれた『盗賊』と『偽団員』へ剣を振るう。

 ……難なく避けられる。大振り過ぎたか。

 だが、二人が下がったことでスペースが空く。そのまま前進だ!

「えっ? だ、駄目だ! タケル! 俺――」

 何かルキフェルが言ってるけれど、応じる暇はなかった。先に二人を庇う位置へ入りたい。

 ……やはり予想通りに『翼の護符』を持ってないのか?

 しかし、視界の隅ではリルフィーが、器用にも手裏剣の如く『翼の護符』を二人へ投げていた。

 妙に上手い。あいつ……そのうち、羽根型手裏剣とか使い始めないだろうな?

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