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セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


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高度に発達した科学は宗教とも見分けがつかない――5

 しかし、流石のシドウさんは格が違った!

「つまり、しばらくは……あー……『キティ』か?の完成に全力を注ぐということだな? 了解だ。喜んで協力させて貰う」

 白い歯も眩しいナイスガイな笑顔には、腰が蕩けてしまいそうだ。

「おい、いいのか? シドウ?」

「べつに構わないだろ。コンピューター開発そのものは有益だろうし、どのみち完成するまで一年。改良に二年だ。その時点に話し合いで間に合うと思う。それに……新任の『ギルド外部監査官』殿に逆らうものでもないだろ?」

「ふむ。タケル君の立場もあるか。分かったよ、隊長」

 などと第二小隊内の意見統一を終えられた。

 見事ですらある。おそらく信頼の賜物だろう。反論ばかりな俺とは大違いだ。


 ちなみに『ギルド外部監査官』とは、俺が新たに獲得した役職名だったりする。

 その名が示す通りギルド外部から――『RSS騎士団』外部から、監査権を持ってギルドへの再加入を果たしてしまった。

 会社(ギルド)から叩き出(クビに)されたのに、騒乱に乗じて外部監査官として舞い戻る。

 まるでアメリカの連続テレビドラマみたいな展開だけれど、少し攻撃的過ぎやしないだろうか?

 俺の顔を――というか頭上にギルド『ラフュージュ』と『RSS』の紋章(エンブレム)が並んで浮かぶのを――見たハンバルテウスの表情は、ちょっと忘れられそうにもない。

 それによくある話とはいえ、外聞にも悪かった。

 どうやったって内ゲバばかりというか……「あそこの系統(ライン)は分裂やら再合流やら頻繁で、腰が軽いというか、考えが浅いというか」などと評される原因にもなる。

 『ラフュージュ』からは俺だけが再加入なのも、追い風となってるだろう。……悪い意味で。

 まあ、この()に再加入を熱望なんて、危な過ぎて許可なんてできやしない。喧嘩を煽ってどうする!


 しかし、そんな遺恨の自動生成器状態でも通じる策はあった。

 とにかく顔を合わせる機会を設けてしまうことだ。それも頻繁かつ定期的に。

 『キティ』計画に参加さえしてもらえば、向こう二年から三年は場ができる。

 あとは努力だ。シドウさんは協力してくださるようだし、運が良ければハンバルテウスとも落ち着いた話ができるだろう。

 一緒に作業やスポーツは、仲良くなる近道――とリア充共が信奉する経典にもあった。決して悪いアイデアではない……はずだ。

 ましてや当事者として先生方も巻き込める!

 俺だけでは人徳不足もあり得るかもしれないが、先生方の英知をお借りすれば……まあ無理っぽい程度なら解決できる……と思いたい。

 そう考えるとシドウさんら第二小隊のメンバーが『RSS』に残留してくれたのも、好都合か?

 いきなりハンバルテウスと接触するより、少しは摩擦を抑えられるだろう。窓口になってくれるだけで格段の差がある。


 ……というのは、表向きの理由だ。


 これ以外に俺を突き動かす衝動が――恐怖があった。

 ほとんどの者は計画においてミルディンさんを警戒すると思う。だが、それは間違ってはないけれど、決して妥当でもない。

 なぜなら真に恐ろしい方は――最も畏怖すべき方は、別にいらっしゃる。それは――


 クルーラホーンさんだ!


 ただ軽く、ご感想を漏らされただけ。

 しかし、それで十分だ。それだけで警戒に値した。

「助かったね、タケル君。ネジの開発からじゃなくて」

 そうクルーラーホーンさんは、仰ったのだ! 何でもないようなことのように!

 正直、これを聞かされるまでの俺は侮っていた!

 クルーラホーンさんは人徳によって、ギルド『妖精郷』のマスターにして合弁事業『アキバ堂』の最高責任者に選ばれられたのだと!

 だが、真実は違う!

 海千山千な先生方を率いる総大将が、ただ者であるはずがなかった!

 ネジの開発からスタートだろうと、クルーラーホーンさんなら計画を完遂できるのだ! 例えそれが人類の見果てぬ悪夢であっても!

 そう、いつか必ず先生方は到達される! クルーラホーンさんの先導に従って!

 もはや徒に反対するよりも、協力しつつ身近にいた方がよかった!

 万が一にでも『外』へ――決して接触してはいけない古きナニカが棲まう世界へ到達してしまいそうなら……この身と引き換えにしてでも止める為に!

 嗚呼、ナニカが! 『外』でナニカが!


 悲壮な覚悟に打ち震える俺を、現実へと呼び戻す声がした。

「ちょっと宜しいですか、隊長?」

 誰かと思えばカイの奴だった。

 不機嫌そうなのは……まだ『RSS』への再加入を止めたことに腹を立ててるのか?

「なにしてたんだ? 厄介ごとか?」

「悩んだのですが、ちょっと手に余ったもので。カガチの所在が分かりません」

「分りませんって……そんなの一々調べなくとも――」

 言いかけて気付く。

 まだ厳戒態勢を解いてなかった。全員に所在を報告するよう義務付けてある。

「ここ一時間ほど……ですかね。所在が特定できてません。ギルドホールにも心当たりのある者はいないようで」

「……うーん?」

 戦時下や抗争中なら大問題だ。直ちに総力を挙げて捜索を開始するべきだろう。

 しかし、そこまでする必要があるだろうか?

「とりあえず厳戒態勢を解除……も納まりが悪いな。カガチを発見してから――全員の所在を特定してから解除……か?」

「では招集をかけて捜索を?」

 それもそれで大袈裟な気もする。

「んー……暇な奴が聞いて歩く程度でよくないか? 俺も移動のついでに探してみるし? どうせ街で遊んでるだろ」

「まあ、そうだと思いますけど……では、手の空いた者に頼んでおきましょう。ところで隊長はどちらへ?」

「ヤマモトさん達に――元祖『RSS』と『モホーク』、あと第三小隊のメンバーに呼ばれててな。どうも『宿屋』の再配分をしたいらしい。ここの差配は頼んでいいか?」

 カイが無言で肯いたので、俺も予定を前倒しにするべく立ち上がる。

 ……どこをほっつき歩いてるんだ、あの不良娘め。

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