表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

448/511

指名手配――2

 クピドさん――装いはザ・伊達男な感じで、実にダンディだ――に続き、ガイアさんも続いて小部屋へと入ってくる。

 ……すごいメンツだ。

 表の世界の女王であるリシアさん、裏世界の帝王たるクピドさん、裏表を通じ最も敬意を払われているガイアさんとで――三巨頭が揃い踏みとすらいえる。

 正直、『ラフュージュ』の規模では比較にもならない。対抗できそうなのは全盛期の『RSS』ぐらいか?

 また、お三人共に真剣な様子で、先ほどに俺の脳内で繰り広げられた妄想が、とんでもなく場違いに感じてしまう。

 例えるのなら、騙し討ちで葬式へ連れてこられたみたいだ。べつに誰に知られる訳でもないけれど、申し訳ない気分で一杯になる。

 ……でも、男なんて『妄想が七分に、現実が三分』が基準じゃなかろうか? 俗に一日一万回ともいわれるのだし――


「そういえばタケルには、言ってなかったか? 実は何人か()()してたんだ。あー……もう三人になるな。この世界からご退場をお願いしたのは」

 前置きなしのクピドさんの発言で、一気に目を覚まさせられた。

 ……処理? 退場? それは一体?

 慌ててリシアさんとガイアさんを伺うも、特に驚いたご様子ではなかった。どうやら既知のことらしい。

 とにかく真意を問い質そうとするも、さらに先回りをされる。

「レイプだ。その犯人を、独断で俺が対処した。べつに宣伝することでもないから、吹聴して回ったりはしてないけどな」

 そう断言されたクピドさんは、詳細の説明を拒絶される感じだった。

 ……当然か。

 事後でのことを、どう話し合えば? また話しても、気分の良いことでもない。

「私のところは……その……詮索はして欲しくないのだけれど……何人か預かっている子がいるの」

 あらゆる犯罪に犯人がいるように、被害者も存在する。そしてリシアさんのところなら、名無しのまま身を隠せるだろう。

「色んな子と話をすると、良くない噂も耳にしてね」

 そう説明を加えるガイアさんは、なんだか悲しそうだった。


 俺の身の回りでレイプの被害者や加害者が出なかったのは、単なる偶然だ。

 もちろん安全には気を配ったし、確率論でいうのなら相当に低くできた。だからこそギルドを作ったともいえる。

 しかし、守れたのはギルドの仲間やギルド外でも親交のある奴と――限定的な範囲でしかない。

 そして歯止めが利かない奴というのは、どんな場所、状況、境遇にでもいる。当然に性欲を他の何かへ転化したり、抑えたりできない奴もだ。

 万単位もの大人数が、一ヵ月以上もの間、意思に反してゲームに閉じ込められているのだから……ありとあらゆる問題が発生するのが当たり前だろう。

 耳にしなかったからといって、起きなかった訳ではない。目を背けても、世界の裏側では子供が飢えて死んでいる。

 ……それは心を痛めようとも、でもあるが。


 また、VR独特の問題も背景にはある。

 レイプを容認してしまうシステム――本当に撲滅したいのであれば、絶対に性交できなくすればよい――なのもネックだろう。

 これだけが原因でもないけれど、結果としてPKと強姦とを同列に考える者すら生みだしている。

 実のところVR空間での性交は、色々と特殊だ。なにより表面的には、女性が問題視する点が全てクリアされている。

 第一に妊娠しない。

 これは当たり前だろう。どんなに精巧にできたVR空間やアバターであろうと、現実の肉体へ受精させることはできない。

 同じ理由で性病などの、病理的なリスクもゼロとなる。

 これは人によって意見が分かれるが……純潔の担保だって可能だ。VR空間で何度となく性交をしようと、肉体的には処女のままでいられる。

 つまり、VRで性交しようと、妊娠もせず、病気もうつされず、処女性も喪わないで済む。

 さらに、きちんと立ち回れば、匿名性の維持も可能ときている。

 何か致命的な問題を起こした――例えば「誰とでも性交する」などと後ろ指をさされようと、匿名性を利用すれば解消可能だ。


 この事実を背景に――

「VRではフリーセックスが標準となるし、レイプなんて少し不愉快な出来事に過ぎない」

 と主張した者もいる。当然、大間違いだが。

 ……もし納得してしまった場合、大事なことを幾つも見落としている証拠だ。

 逆の立場で考えれば、すぐに理解できると思う。

 なぜならレイプを容認するのなら、自らが標的とされる覚悟も必要となる。

 ここでエロ漫画によくあるような『痴女同然な女性とムフフ』を想像してはいけない。俺は異性愛者だから、細かく語るべきではないかもしれないが――


 ある日、突然、顔見知りですらない男によって襲撃を受ける。少しでも抵抗すれば蹴る殴るの暴行を加えられ、とても抗えそうもない。なんだなんだと戸惑っているうちに――


 と酷い目に遭わされた挙句、一生忘れられそうもない不愉快な経験を強いられる。

 もう言葉の暴力にも近いが……レイプする側にとって、被害者など後始末に使うティッシュペーパーほどの価値しかない。人格否定どころか、あると考慮すらされないだろう。

 それがレイプだ。

 結果として肉体的に何一つ喪わなかろうと、決してPKと比較できるような出来事ではない。


 もちろん、事実として()()はならなかった。

 おそらく人類は――VRでセクロスできるようになった俺達世代は、根本的な問い掛けをされている。

 「なぜレイプはいけないのか?」という、根本的な質問をだ。

 加害者や被害者にもなったことがない、どころか性交を未体験(童貞)な俺がいうのもだが……究極的には『相手に拒否する権利があったかどうか』の問題に思える。

 勢いに任せて押し倒す、酒やムードに酔わした、土下座して頼んだ、金や権力にものをいわせる……どの手段を選ぼうと、過程のどこかで相手の拒否権さえ守られていれば、それは恋愛の交渉としてセーフだと思う。

 しかし、いくらルールや法律、慣習に則っていようと、相手に拒否権がなかったらアウトではなかろうか?


 ……いずれにせよ、この世界は何もかもが自由な楽園とは程遠い。

 現実と同じく不愉快なことは不愉快なままに、容認できないことは容認できないままだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ