表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

429/511

MPK――1

 すぐには動き出せなかった。頭の中が真っ白になってしまっている。

 ……MPK?

 なんで?

 どうしてグーカ達が?

「タケルさん!」

 リルフィーの諭すような、それでいて焦りも感じさせる叱責が現実へと引き戻す。

 考えている暇はない。もう行動に移すべき局面だ。

「……とりあえず話はここまでだ。悪いが俺らは急用が――」

「暫定リーダーが決まったら、必ず顔を出させる。それでいいか?」

 サッカー名人の返事を背中で聞きながら、大通りの方へ――『宿屋』の表の方へと出た。

 その間も繰り返される笛の音が、神経を逆撫でにしてくる。……この音色を嫌いなりそうだ。

 しかし、内容は俺にでも――いや、ギルドメンバーなら誰でも判別できる。その意味するところは「総員、至急でギルドホールへ帰還せよ」だ。

 そこまでの事態に発展しているのか?

 ……いや、これで正しい。

 緊急時にはギルドの総力を結集する。ゲームだった頃もセオリーだし、いまやゲームではない。鉄則とするべきだ。

 とりあえずの初動は動けている?

 カイが臨時で指揮を? いや、それともリンクスか?

 ならば、俺はどうする?

 とにかく救援に向かうべきか? 確か今日は『ゴブリンの森』でのボス狙いを――


 違う!


 ここにいる三人だけで――俺とリルフィー、ハイセンツで救援に向かってどうする!

 確かに拙速となろうとも、援軍を送る。その選択肢はあるし、無意味でもない。

 だが、そうだとしても全力を注ぎ込むべきだろう。

 戦力の小出しや逐次投入では、劇的な効果も見込めないし……二重遭難のような結果すら考えられた。


 ……まず冷静になるべきだ。


 ここでの間違いが、取り返しのつかない結果を導いてしまうかもしれない。

 ……とにかくギルドホールへ帰還か?

 集結の選択は大正解だ。戦力が集まれば集まるほど、採れる選択肢の幅も広がっていく。

 現状の指揮は誰なのか判らないが……ギルドホールへ戻れば、それも判るだろう。

 ならば、とにかくギルドホールへ向かうとして……そうなるとギルドホール区画への移動(テレポート)を受け持つNPCに…………一番近くにいるNPCはどこだ?

 頭の中で街の地図を広げる俺へ、上の空な様子でリルフィーが何か差し出してくる。

 ……『帰還石』だ。


 まだ全然、頭が回ってなかった!


 MMOでは下手に歩くよりも、移動系のアイテムやスキルで現在位置をリセットした方が早いケースがある。

 この場合だと『帰還石』を使って幾つかある到着地点――ただし、そのどれもが馴染みのある――へ戻った方が早かった。どの地点へ飛ばされようと、そこから最も近いNPCの位置は熟知している。

「グーカさんが? MPK? いや……でも……今日の狩場は――」

 何やらブツブツと首を捻るリルフィーから『帰還石』を受け取る。

「俺は待たない。はぐれたらギルドホールで合流」

 と言い捨て、そのまま『帰還石』を握りつぶす。


 ……いまの判断は間違いか?


 身体が光に包まれ、馴染みの浮遊感を感じながら……早くも後悔した。

 『帰還石』は最も近い街へプレイヤーを移動させてくれるから、街中で使えば同じ街へと飛ばされる。ようするに超短距離テレポートだ。

 しかし、三人同時に使ったからといって、三人とも同じ地点へ飛ばされるとは限らなかった。

 俺が遅れた場合は問題ない。

 リルフィーやハイセンツが待っていても、先行してしまっても対処できるだろう。

 しかし、逆に俺が先行した場合、二人は判断に悩むかもしれなかった。

 ……さすがに、どうとでもなるか?

 二人とも子供じゃない。

 それに俺がギルドホールへ戻るのが最優先……のはずだ。

 いや、こんなことを考えたり、悩んだりしてる段階で……俺は狼狽しているのか?


「隊長、あっちです!」

 軽い着地の衝撃と同時に、ハイセンツが叫ぶ。

 都合よく同じ地点へ飛ばされたのだろう。だが、残念ながらリルフィーの姿は見当たらない。

 待っている時間はなかった。言われるがまま走り出す。

 ……走る俺達は好奇の目に晒されるが、知ったことか!

 いまは外聞なんて糞くらえだ。何の役にも立たない!

 そんなことを内心で叫びながら、ギルドホール区画への移動(テレポート)を受け持つNPCへ目を合わせる(話し掛ける)

 普段なら気にもならない定番の台詞すら、もどかしくて堪らない。

 やっと出現したウィンドウを操作し、ギルドホールに最も近い出現地点(テレポート先)を選択する。


 すると視界が滲むように変わり、ギルドホール区画への移動(テレポート)が完了した。

「いきましょう、タケルさん!」

 どうやらリルフィーは先行していたようで、バラバラにもならないで済んだらしい。杞憂だったか?


 ……考えるのは後だ。とにかく走れ!


 すぐにギルドホールが見えてくるも、普段から食事などに使っている円卓には誰も姿がなかった。

 ここへ集合じゃないのか? 皆はどこへ?

 しかし、考える間もなく、背後のハイセンツから教えられる。

「隊長! 屋上です! 全員、隊長の天幕へ集合しています!」

 ……それもそうだ。

 身内以外をシャットアウトし、全メンバーが一堂へに集まるのなら、屋上しかない。

 危険なレベルで頭が回っていない気がした。我ながら酷すぎる。

 だが、それを危ぶむ時間すら惜しかった。

 ギルドホール内へ飛び込み、勢いのまま階段を駆け上がる!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ