表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

421/511

需要――4

「あー……アレだ。俺が『鑑定士』として依頼を受けなくなったのは、色々な事情もあるけど……この糞ったれな不具合の間は、なるべく物事を変化させない。なるべく動かさない。そんな配慮でもあるんだぜ? 自粛というか……しばらくは自重するべきだろ?」

 ……なぜか二人には――リルフィーと『ゆうた』の二人からは、共感を得られなかったらしい。

「その考えは、間違ってないと思うっスけど……それを揉め事の中心も同然なタケルさんが口にしても――」

 なんと背後(味方)から痛いところを突かれた! リルフィーの癖に賢しげなことを!

「あ、あははっ……大手ギルド運営陣だと、そういった考えになるんだな。でも、逆にいってしまうと……いつまで()()が続くのかも判らんし」

 なんと『ゆうた』にフォローをされる始末だ。

 ……本来ならお前の役割なんだぞ、リルフィー! 

 ただ、まあ指摘は正しいか?

 ギルド間での調整を推進したり、安全の観念(ルール)を変えたり、ドラゴンを倒したりと……確かに俺は、世界へ影響を与え過ぎている気がしなくもない。

 少しは俺も、自重するべきなのだろう。

「なにより待たせちゃってる。待たせ過ぎちまった! 結局のところ、この不具合は()()()()に過ぎないんだと思う。なんというか、もう……待たせている罪悪感に押し潰されそうで」

 妙な照れを滲ませながら、『ゆうた』は言うが……それは判らなくもなかった。

 ……どうしてリルフィー(こいつ)は――そして皆は、待っていてくれたのだろう?

 またギルドを――『ラフュージュ』を立ち上げることで、俺は応えられたのだろうか?

 とりあえずモニョモニョした気分を晴らすべく、無防備なリルフィーの脛を蹴っておく。

 不満の声が上がるも、そんなのは無視だ。どうせ痛いといっても、リミッターはかかっている。

「それでも……止めるのか? その相手が……ネカマだったら?」

「……思っていたよりも難しい問題だったんだな。それに……意外と気にしないかもしれない。確かに驚くし……話し合いの必要性も生じるだろうけど……べつに、その程度のこと……もしかしたら……つまらないことなのかもしれない」

 苦笑いで『ゆうた』は答える。

 ……悪くない(おとこ)の顔といえただろう。俺だって似たような感慨を持たなくもない。

 もし惚れた()が――

「ボクは男の子なんだよ!」

 などと妄言を口にしても、笑って受け入れてやるのが立派な(おとこ)というものだ。

 しかし、意気に感じなかったのかリルフィーは、不思議そうな顔をしている。

「なら……べつにタケルさんへ依頼しなくとも……よいのでは?」

 ……なるほど。確かに素人考えだとそうなる。

 そして『ゆうた』が恐れるものも判明した。こいつは『究極の恐怖』を知っているのだろう。

「い、いや……その……男の方から口にするのもッ! 友情を取り違えた勘違い野郎といわれるのもッ! どちらも覚悟はできているッ! 面白くない結末があり得ても、男から動くのが……それが甲斐性ってものだろうからッ! それでもッ! それでもッ!」

 ……それでも『究極の恐怖』は越えがたい壁か。


 誰かに確定申告をしたとする。

 その結末は、基本的に二つのパターンしかない。

 まず、めでたく受理され、以後は細かな納税額の調整となるパターンが一つめだ。

 ……これには「今度は戦場で会おう(リア充爆ぜろ)」ぐらいしか、俺からの言葉はない。

 もう一つは逆に「ごめんなさい、友達としてしか考えられないの」と断られるパターンだ。

 ……それが友人に起きたことだったら、一晩ぐらいなら愚痴を聞いてやってもいい。

 また確定申告をしたことで始まる物語だって……世界が一巡に一回程度の確率であり得ると聞く。……滅べ!

 だが、この単純な筋書きに悪のネカマが混ざると、『究極の恐怖』という結末が加わってしまう!


 プロポーズした瞬間に――

「えっ? 俺、男だし! ()()()! こいつ()()()! ざーんねんでした! 騙されちゃったな、この変態ホモ野郎!」

 と詰られるのだ!


 そして変態ネカマファッカーとしての烙印を押され、以後は日陰者としての生活を余儀なくされる。引退の理由となることすら珍しくない。

 だが、そんな珍事が頻繁に起きるか?

 MMOに詳しくなければ、そんな疑問を持つかもしれない。

 しかし、決して小さくない確率で発生する定番の事件だったりする。なぜなら――


 それ()()を目的としてネカマとなるプレイヤーが、一定数いるからだ!


 なぜこんなプレイヤーが生まれるのか、正直いって全く理解できない。

 悲劇の――悪意の再生産が原因かもしれないし、突然変異で生まれる悪なのかもしれなかった。

 しかし、どんな理由だったにしろ、折り紙付きの変質者――それもサイコパスレベルな異常者だ。

 誰かの顔に『ネカマファッカー』という糞を塗りたくる。

 ただそれだけの為に何時間、何十時間と費やす。……標的(ターゲット)が罠に落ちるまで延々と!

 これは最早、キチガイ呼ぶ他はないはずだ!


 ……だが、しかし、それはインターネットが――人の心が抱える闇であることも否定はできない。


 結果、誰が誰に告白しようとも、突然に裏切られる可能性が生まれた。

 なぜなら人を嘲りたいだけの変質者が、サイコパスレベルで偏執的に、情熱と才能の全てを注いでくるから。

 ……ただ人を蔑みたい一心で。

 それはネカマに関わる問題だけでなく、インターネットのあらゆる場面に隠されている闇で……『究極の恐怖』と呼ぶ他のない何かだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ