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セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


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『ドワーフの街』での調査――3

「そ、そういや! ドラゴンの再出現(リポップ)は確認した――したんだよな?」

「おう。例によって『魔術結界』持ちのメンバーに潜ってもらった。……また散財だったぜ」

 懲りずに話題を変えるウリクセスに、上の空になりつつ答えておく。

 ……なんとなく気が抜けてしまっている。まだドラゴン戦の疲労――精神的疲労が抜けてないのだろうか?

「それで……次の討伐は、いつ頃にするつもりなんです?」

「はぁ? 次って……そんなの企画する訳ないだろうが!」

 リルフィーの頓珍漢な質問に、思わず大声を出してしまった。

「いや……タケル……そう変な話でもないだろ? あり得ないとは思っているけど……『何度か倒すの』とか『低確率でドロップするアイテムの入手』がスイッチって説も――」

 とりあえず睨み付けると、ウリクセスも途中で口を閉ざす。

「可能性がゼロじゃないのは認める。でも、そんなの……積極的に調べる価値ないだろ? とりあえず個人レベル――もしくはギルド単独での挑戦は、抑制できてる。それで十分のはずだ」

「えーっ? そうなんですか? でも、カイさん達は……次回の研究を始めてますよ? もちろん『象牙の塔』と『妖精郷』の――『アキバ堂』の人達も」

 そう話すリルフィーは、心底驚いた――というか残念無念といった様子だ。……こいつ、懲りてないのか?

 しかし、前回の反省を元に、戦術の研鑽が始まってるのも事実ではある。

「それは念のためというか……転ばぬ先の用心とか……その手のアレに決まっているだろうが。だいたい二回目なんて、そんな予算はない。そもそも大赤字で終わったんだ。もう分配どころか……全員から参加費を徴収したいくらいだぜ」

 それを聞いて二人も、さすがに苦い顔になった。


 ここで勘違いして欲しくないのだけれど、俺達が特別にルーズだった訳ではない。公募討伐なんて、必ず赤字で――それも大赤字で終わるのが常だったりする。

 もし収支バランスで一見、黒字に見えようと……各個人の時給まで考慮すれば、必ずそうなってしまう。

 今回でいえば事前の練習やら当日の布陣、本番と……誰もが十数時間は費やしている。……裏方の奴らに至っては、さらに多くの時間をだ!

 それで今回の分配予定金な金貨百枚――無しではあんまりなので、形ばかりの支給額は決めていた――を割ると、なんと時給は金貨五枚前後になってしまう!

 ……もう地道にスライムでも倒していた方が、遥かに儲かる。

 いや参加者によっては、装備の新調をしたり消耗品を持ち出す羽目になっているから……採算なんて全く取れなくなっているだろう。


「おい、おい……大丈夫なのかよ、タケル? 俺らもギルドでオークション参加するけど……もう、本格的なご祝儀相場にしちまうか?」

「そこまで仕込まなくても平気……だと思う。ハチの野郎は、ギリギリ赤字程度で済ませれそうとか言ってたし」

 心配そうなウリクセスに、軽く首を振って答えておく。

 ……いまさら借金が少し増えたところで、大勢に影響はない。もう成るようになれだ。

「ウリクセスさんのギルドはドロップを――ドラゴンの『爪』とか『牙』、『鱗』を買うんですか?」

「うん。ギルドメンバー一人につき『鱗』を一枚。あとは適当に『爪』と『牙』を……前衛の人数分で足りるかな? まあ、適当に協力させてもらうぜ」

 などとウリクセスは、羨ましそうなリルフィーに答えている。

 それは廃人らしい先物買いというか先行投資でありつつ、ウリクセスなりに落とし前のつもりなんだろう。


「うーん……俺も記念品は欲しいっス! やっぱり分配の引き換えは止めておこうかな」

 などと言いながらリルフィーは分配の引換券――名刺サイズのプレートを首飾りにしたもの――を取り出す。

 確か表面には討伐の日時と参加者名、裏には俺達ギルド『ラフュージュ』の紋章とシリアルナンバーが刻印されているはずだ。

 もっと簡単なもので十分と俺は主張したのに、ハチに押し切られての採用だったが……どうやら悪巧みの一環だったらしい。

 どう考えても金貨百枚を貰うより、世界に一つしかない討伐参加証明書の方が価値はある。殆どの参加者は、換金を望まないだろう。

 ……つまり支払わなくて済む分、金貨数千枚は節約できる寸法となる。

「まあ、その辺は好きにしろよ。とにかく第二回なんてやらない。やるとしても、時間を置いてだ。なによりも必須の消耗品――『エリクサー』や『翼の護符』の在庫が厳しい。集めなおさないと無理だ。というか……あんな危険な遊びは、ゲームの時にやろうぜ? 今回は運良く成功したけど……命が幾つあっても足りねえぞ、あれじゃ?」

 しかし、リルフィーは軽く不貞腐れたような感じになるし、ウリクセスも納得いかないのか首を捻っている。

「いや、タケル……むしろゲームの時だと、こんな大公募は成立しないだろ。少なくとも俺のところは協力しないしな。お前のところもだろ?」

 ……言われて気づく。その通りだった。どうも気が緩みきってるらしい。


 今回は運良く成功したドラゴン討伐だが、実は企画の発案すら難しい部類だ。

 この糞ったれな不具合の下でしか不可能な、もう奇跡にも近い出来事とすらいえる。

 理由は単純で『数百人規模で利害が一致』など、通常のMMOでは到底あり得ないからだ。

 そもそも誰かの得点は自分の失点でもあるのが、競争の大原則といえる。こんなにも大人数で、一致団結して協力なんて……夢のまた夢だろう。

 さらに不具合が発生してなければ、俺はギルド『RSS騎士団』所属タケル少佐のままだ。

 少なくとも発起人となって討伐隊を興すなんてあり得ないし、誰かか興したところで協力も考え難い。……どころか逆に妨害へ回る可能性すらある。

 そして『聖喪』『不落』同盟も、傍観を選択するはずだ。ドラゴン討伐は、両ギルドの基本理念とかけ離れすぎてる。

 唯一母体となれそうなのは『自由の翼』だけか?

 だが、それはそれで妨害に値する理由となってしまう。得られるのは名誉しかないとしても、やはり他所に取られるのは癪だ。

 ウリクセス達のギルド『ヴァルハラ』などはアドバンテージを――自分達こそ冒険の先頭であるという立場を、脅かされたくないだろう。

 そして『RSS騎士団』の立場でいえば、どこにも名声を上げさせたくない。

 さらにギルド『モホーク』などの行動を予測すれば……皆で仲良くドラゴン退治など、邪魔をして楽しむ格好の標的でしかないはずだ。

 ……もう反ドラゴン討伐同盟すら視野に入ってしまう。

 おそらくゲームの時に大公募などすれば、ドラゴンと戦っている最中に襲撃を受ける。

 そして軽く後衛を散らかしてやれば、即座に壊滅するだろうから……討伐隊を興すのに比べたら、簡単過ぎるくらいだ。

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