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セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


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オープンβテストの回想

 オープンβテストは静かな戦いの場だった。

 『RSS騎士団』のお披露目の場であったし、その基盤を築く大事な時期ではあった。

 俺だって実戦に参加し、リア充どもに天誅を与えはした。人員増強の為に勧誘活動にも尽力した。兵站を支えるシステム構築もした。将来を見据えての外交にも着手した。

 だが、最も重点を置いたのはシステム解析と攻略の検討だった。

 システム解析とはゲームの攻略本や攻略サイトを作るようなもので……ゲーム世界の物理法則を探るような作業だ。

 例えば『セクロスのできるVRMMO』ではボーナスポイントを能力値に割り振ってキャラクターを作成する。オープンβテストの時、俺は『腕力』と『器用度』を初期最高値にまで割り振って、余り全てを『体力』に入れた。

 しかし、これはゲーム的に正しい……つまり、合理的な方法だっただろうか?

 残念ながら答えはノーだ。間違ってはいないが正解でもない程度、及第点でしかない。

 では、どのように割り振るのが正解だったのか?

 それを知るには能力値の一点々々の意味を調査するしかない。もちろん、全ての能力値についてだ。

 ある程度の公式発表はあった。しかし、それらはイメージ把握を助ける程度にしかならない。

 例えば『腕力』のボーナス表には数値に対応して『ダメージ一段階増加』、『ダメージ二段階増加』……と表記はされている。単純に受け取れば「ああ、『腕力』を高くすれば相手に与えるダメージが増えるんだな」となる。

 だが、少し考えれば「で、その『ダメージ一段階増加』ってどれくらい役に立つの?」という疑問へ行き着くし、「『ダメージ一段階増加』と『ダメージ二段階増加』でどれくらいの差があるの?」となるはずだ。

 少しは心得のあるものなら「『腕力』最高値と最高値より一だけ少ない数値はどちらも『ダメージ三段階増加』だけど……この違いは何?」まで考えると思う。

 仮に運営に質問したとしても、必ずは教えてくれない。

 システムは隠されているのが基本で、何かの都合で公表されることがある程度だ。なんでかは知らないが……それがゲーム業界の通例らしい。

 『腕力』最高値と最高値より一少ない数値での例で言えば、武器を重く感じる分だけ最終的なダメージ効率に差が出ていた。武器が重い分だけ僅かに攻撃速度が遅くなり、長期的には時間当たりのダメージ量は少なくなるという仕組みだ。

 こんなのは解析チームがあっという間に検証方法を立案し、たちどころに解決した易しい問題でしかない。被験者にキャラクターを作り直させ、両方の条件を観測するだけで済む。

 段階ごとの差も、かなり簡単な問題と言える。

 諸条件を調節し一撃ごとのダメージを記録。その記録からダメージの算出方法を推定すれば判明する。

 ただ、試行回数の単位が基本で百、事例によっては千にもなるのが解析作業の辛いところだ。

 この調査では各条件ごとに被験者は攻撃、もう一人の被験者は攻撃を食らってダメージ量を記録、さらにサポートの『僧侶』が受け役を回復と……地味で日の当たらない作業を黙々と繰り返すこととなった。

 その調査結果を元に解析チーム一同でダメージの算出式を推理する。いままでの経験やセオリー、時には閃きや勘に頼っての作業だ。

 こうやって一つひとつシステム情報を解析していく。

 それらの基本情報を元に攻略分析チームは必要な情報を特定する。

 例えば「『ゴブリン』のHPは幾つなのか?」こんな情報ですら自分達で特定していくしかない。だが、それが解れば最適な『ゴブリン』狩りのレベル、装備、パーティの構成が判明する。

 もちろん、時には解析結果が間違えていることもある。間違いや勘違いが判明するなんて日常茶飯事だ。新事実発覚でそれまでの解析結果が無駄になることすらある。

 そんな風にやり直しとなっても……地道にコツコツと、黙々と解析作業を続けるしかない。

 俺達解析チームはもしかしたら、ゲームデザイナーよりゲームの仕様に詳しくなっていたかもしれない。

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