容易く得られた回答――2
偶然なのか、俺の方へ向かってきていた。
驚くべきことに『RSS騎士団』のメンバーだ!
顔の判別すらできないほど暗かろうと、鎧だけで判別できる。その為の装備統一ともいえた。見間違えることはない。
しかし、おかしなことに戦争用区画の中にいる!
「なぜそんな酔狂で危険なことを?」などと考える間もなかった。
様子がおかしい。足元が覚束なくて、酷く後ろを警戒もしている。
……誰かに追われているのか?
唐突に理解できた。
ジェネラルが襲われたのは戦争用区画の中だ。それは目撃証言にもあった。
どうしてジェネラルが区画へ入ったのかは謎だ。
そして、いま同じく区画内にメンバーがいる。
なにかのトリックに引っ掛けられたのかもしれない。どうやってか誘われた可能性だってある。
だが、それは……何らかの方法を使えば、戦争用区画内へ引きずり込めるということだ。
目の前のメンバーは、同じ方法で罠に?
頭の中で駆け巡る新しい気がつきを、かなぐり捨てて叫ぶ。
「とにかく逃げろ! 『翼の護符』を使え! 離脱しろ!」
呼びかけも虚しく、逃げるメンバーは、つんのめるようにして倒れこんでしまった。
地面にも何か黒い染みのようなものが広がる。
その光景に心臓を掴まれたかのような衝撃を受けた。
俺は……また仲間を失うのか?
いや、まだだ!
まだ終わってはいない!
死んでしまったのなら、すぐにエフェクトで判別できる。
だが、それは起きていない。倒れこんでしまっただけだ。
いまなら間に合う!
ほとんど反射的に走りだす。
近寄らなければ、何一つとして打てる手がなかった。
……逃げてきた方に人影は見当たらない。
飛び道具を使ったのか?
……なぜ『翼の護符』を使わない?
なんらかの理由で手持ちが無いのか?
いや、使えない可能性も――敵の『禁珠』で封じられた可能性もある。
とにかく急げ!
僅かな遅れで、間に合わなくなってしまう!
走りながらベルトポーチをまさぐり、『翼の護符』と『禁珠』を確認しておく。
手触りだけで数を確認……きちんと余分もあった。
同時にプランも考える。
……考えるまでもない。
即座に離脱だ。逃げの一手しかないだろう。
まず『翼の護符』を渡す。
これで手持ちが無かろうと『翼の護符』を使える。
そして『禁珠』で上書きだ。
禁止状態を『護符』から『回復薬』へ変更させる。
いや、先に指示するべきか。
念を押し、準備ができたのを確認してから、『禁珠』を発動が正解のはずだ。
その後、すぐに俺も『翼の護符』を使えばいい。
しかし、単独行動か?
そんな訳がない。
では一緒だった他の奴らは?
その確認は必須だ。まだ助けられるかもしれない。
では手順も変える必要がある。
しかし、どう変更する?
短い間なのに、走りながら色々なことを考えた。
……パニックになりそうだ。
しかし、とにかく倒れこんだメンバーのところへ到着できた。
……おかしい。
すばやく視界の隅を確認するも、『護符』は封じられていなかった。アナウンスがなされていない。
瞬時に思い違いを否定する。
こちらが逃げていたのだから、敵は追ってきていたのだろう。
そして『禁珠』の効果範囲は、使用者を中心に動く。
つまり、敵との距離に、まだ余裕があるのだ。事実、視界内に追撃者の姿は無い。
……諦めたのか? それとも飛び道具を?
どちらにせよ、この窮地は脱してしまうべきだ。
「立てるか? 『翼の護符』だ、受け取ってくれ。他に仲間は? いないのなら、すぐに離脱する」
周囲を警戒しながら投げ渡す。
しかし、追撃者は依然として見当たらない。
……見当違いだったのか?
敵がいて、襲われていたのではない?
だが、とにかく事情を聞く余裕はあるようだった。
そう判断し、倒れこんだままのメンバーを助け起こそうとして――
背筋が凍りつくような恐怖を覚えた!
気のせいと見過ごしてもおかしくない、あるかないかの微かな違和感。
なぜかメンバーの口の端が歪んで見えた。まるでこちらを嘲笑するかのようだ。
その意味を理解する間もなく、頭の中で――
短い警報音が鳴り響く!
もう馴染みの音――『危険感知』の警告音だ。そして、いまこの瞬間にスキルが発動したのなら、狙いは――




