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セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


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271/511

その翌日――1

 翌朝、階下へ降りていくと、既に朝食の支度がされていた。

 完全に寝坊だ。例の仮設洗面台へと急ぐ。

 厳密に言えば洗顔の必要はない。全ては気分の問題にすぎないが、やはり朝は冷たい水でシャキッとするべきだ。

 そんな俺へ微笑みながら、アリサが近寄ってくる。手にはタオルを持ってだ。

 ……なぜか少しくすぐったい。

「ありがとう」

「はい……どうかしました? 顔に何か付いてます?」

 受け取ったタオルを使いつつ、アリサの顔を観察してたら不審に思われてしまった。

「なんでもない。うん、今日も良い天気だな!」

 慌てて誤魔化すと、あるかなしかの笑顔に戻ってくれた。

 なんだか機嫌が良さそうだ。それはそれで何よりだが……まるで眠そうには見えない。

 俺と同じぐらい――いや、俺より早起きしているのだから、俺より短い睡眠時間のはずだが……あまり寝ないタイプなんだろうか?


 昨夜の緊急会議の終わって『詰め所』に戻ると、アリサは帰りを待っててくれた。

 ……つまり、寝ないでだ。

 眠いし面倒臭いしで、もう『本部』で適当に休もうとも考えただけに、かなり驚かさせられた。

 ……全く後ろ暗いことはないのに、反射的に謝ってしまいそうなぐらいは。

 ちょうどゲーム世界はぎりぎり午前中で、まるで大胆な朝帰りの様相ではあった。

 いやリアル時間で考えると午前様か?

 どちらにせよ、そう褒められた帰宅時間ではないが……それだって任務ゆえだ。

 当然、同じようなことがあったら、次は待たずに先に寝ていて欲しいとは言ってある。あいまいな微笑で誤魔化されてしまったが。

 もし俺達二人が『詰め所』へ戻らない選択をしてたら……アリサは朝まで寝ないで待っていたのだろうか? そんな疑念が湧いてくる笑顔だった。

 まあ、そんなことはない。

 当然だろう。アリサにそこまでする理由がない。ないが、しかし――

 次からは何があっても、何時になっても戻ろう。

 そう心に固く誓うことになったのは、俺が臆病だとかそういうことではなく、人として礼節を弁えているから……ということにしておく。


 やっと席へと着いた俺へ――

「おはようさんです。先に頂いてやすぜ」

「やっと起きてきましたね」

「おー……タケルさんより早起きとか、初めてかも!」

 などと口々に挨拶をされる。さすがに誰から何を言われたのか、把握なんて不可能だ。

「おはよう。遅くなって済まない。食べてた人はそのままで。待っててくれた人はありがとう……それじゃ食べようぜ?」

 ざっくりした受け答えになったが、また口々に色々と返事をされる。まあ把握しきれないが、賑やかなのは良いことだろう。

 それでいつも通りな朝の風景――


 ……にはなららなかった。

 二つほど妙なことがある。いや細かく言うと三つ……いや全部で四つか?

 とにかく色々と変だ。


 真っ先に目に付いた変事には、「絶対にツッコまないぞ」と心に堅く誓う。

 ……藪を突いて蛇を出した場合、痛い目に会うのは突いた方だ。


 その決意も新たに、まず俺が定位置にしていた席に置いてあった紙を取り上げる。

 畳まれていたのを広げると、一枚の紙なのが判った。かなり大きい。

 元々は二つ折りだったらしく、その折り目だけ綺麗に跡ができている。

 その裏表に隙間がないくらい文字が書かれていた。

 ちょうど本のように読ませるつもりなのだろうか? 四ページしかない本になるが。

 実物を見るのは初めてだったが、心当たりがあった。

 これは新聞だ。

 まだ携帯端末やインターネット環境が充実してなかった頃、紙に情報を書いて伝達する時代があった。『昭和劇』なんかでも、目にしたことはあると思う。

 そう思って見れば、ちょうど一ページ目――確か新聞は『面』で数える――に『東西南北新聞』と書いてある。

 間違いない。予想通りに新聞だし、ギルド『東西南北(ニュース)』の発行物だ。


 どんな物かと、ざっと流し読んでいく。

 一ページ目――一面には発刊の挨拶、自分達の目指すべき姿勢やポリシーなどが述べてあった。思ったよりも真面目だ。

 ちゃんと「この不具合を皆で協力して乗り切りましょう!」みたいなお題目もあったするし、それらしさは出ているか?

 二面には各狩場の状況がざっと紹介してある。

 新聞はニュースサイトなどの祖先に当たるものだ。

 となれば一般人が知りたい情報を伝えるのが本道ではある。……若干の疑問は感じるが。

 特に『西側』の狩場について「某騎士団が中心となって、新しいマナーを提唱――」などと書かれてしまっている。対処の必要があるかもしれない。


 三面からは、やや砕けた感じの内容だったが……その関係者だと、かなり微妙な気分になる。少なくとも俺はなった。

 早くも昨日のお祭り騒ぎ――ネリウム考案、遠く明代の頃より伝わる『()()()(レイ)闘技(バトル)』が記事になっていたからだ。

 もうギルド『東西南北(ニュース)』の奴らの勤勉さには頭の下がる想いだが……それ以上に不可解な点もある。

 挿絵だ。

 SS――スクリーンショットにも不具合は発生しているから、写真が使えないのは判る。

 ……いやSSが確保できたところで、紙面に印刷するのは無理か?

 とにかく、写真の代わりに挿絵が描かれていた。

 メイド服姿の秋桜、和風メイドなリリー……これは何がテーマなんだろう?

 なぜかアリサはごく普通のブラウスにスカート、その上にごく普通のエプロンという格好だ。敢えて言うのなら……若奥様か?

 かと思えば亜梨子は――やはり参加していたらしい――バニーガール姿だし……コンセプトへの謎は深まる。

 が、まあ、そこまではいい。

 こんなことをいうと変態扱いされそうだが、一人を除いて全員が可愛らしかったし、とびきりに色っぽくも感じた。

 それだけでイベントの成功も確信できる。

 この挿絵というアイデアもナイスだ。現場に居なかった俺にも、なんとなく雰囲気が伝わる。

 問題を感じたのは、描き手の方にだ。

 この絵師を俺は知っている気がする。もしかして、この絵柄は――

 T先生じゃないだろうか?

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