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セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


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226/511

変化――5

「裏情報って、どんなのだったっけ?」

「隊長……上位職を実装予定という内容のインタビュー記事があったじゃないですか。ゲームデザイナーの。おそらく転職のタイミングが、二十五レベルなのかと」

 そうカイは説明してくれたけれど、それなら俺も耳にしたことがある。


 色々な媒体がゲーム会社を――MMOの運営を取材するのは、よくある話だ。

 ジャンル的にマイナーでも専門雑誌やテレビ番組、インターネットサイトなど、数え切れないほどある。

 マイナーというよりアマチュアとなるが、亜梨子の所属するギルド『北東西南(ニュース)社』ですら、正式な取材の実績があった。

 しかし、ゲーム作りの観点だけなら、あらゆる取材にメリットは存在しない。

 それなのに愛想が良いのは、MMOの運営がビジネスだからだ。

 また、そうでなければ――商売として成り立つ規模でなければ、面白いMMOにはならないのだと思う。

 そんな背景を踏まえれば、マスコミには甘くなっていると容易に推察できる。

 諸刃の刃ではあろうが、宣伝効果は絶大だ。これはおそらく、どんな業種でも似たようなものだろう。

 そして取材ともなれば、何か土産となる情報を持たせて帰さねばならない。

 慎重に狙ったリークが値千金となった。そんなこともある。……もちろん、大失敗もあるだろうが。

 結果、基本的には眉唾物でありながら、時には大スクープもあるという……実に微妙な情報源となっていた。


「アレだろ? 『ちょっとクラス』とかいう構想のことだろ? 名前の語呂からしてサブクラスみたいなもんだろうけど……出所が微妙すぎてな。おそらくゲームデザイナーの個人ブログとか……信用できないにも程があるぜ」

 これは少し端折っている。

 とあるゲーム専門雑誌のインタビュー記事で、正式に上位職みたいなシステムの実装が発表されていた。

 しかし、その時点で内容は全く謎のままだ。

 まだ第一報であるし、派手に人目を惹ければいい。その程度の賑やかしなのは間違いなかった。大半の者が、そう受け取ったと思う。

 しかし熱心な奴というのは、どのジャンルにもいるもので……メインゲームデザイナーの個人的なホームページを、特定してしまった馬鹿がいた。

 そこにあった情報も組み合わせると、いま言った『ちょっとクラス』構想へつながる。


 一連の流れが偶然なのか、狙い澄ました情報漏洩なのかは判らない。

 ……このゲームの運営は意外と狡賢いから、故意にリークした可能性も十分にある。

 どちらにせよ、このような情報ルートは珍しくなかった。

 MMOだけでなく、ネットゲーム業界に限らず……それどころかゲーム業界以外も含め、あらゆるジャンルで見受けられる。

 結局、ありとあらゆるクリエーターは、血肉を持った誰かということだ。

 愚痴を言うこともあろうし、それがどこかから漏れてしまうこともあるだろう。

 思いついた何かを見せびらかしたくて仕方がない時だって、あるかもしれない。

 作品を世に送り出したものの、後から言い訳したくてたまらなくなった。そんな場合だってあるだろう。

 そういった様々な理由から生じた――いわば作者が人間ゆえに起きてしまう漏洩は、どうにも避けようがなかった。

 もしかしたら製作者以外は誰一人として全貌を知らない物など、この世には無いのかもしれない。


「でも、隊長……『教授』は十分に可能性があると――」

「それは『人読み』の結果だろ? ゲームデザイナーの性格から考えて、抑え目なサブクラス系システムが濃厚だっていう。いや、『教授』を疑ってるわけじゃないけどさ……この材料だけで言い当てたら、ほとんど超能力だぜ?」

 『教授』はゲームを遊んでいるだけで、ゲームデザイナーのプロファイリングまでしちゃう人だ。ある種の超能力者といっても良いレベルだろう。

 それを信頼するのは個人の自由だが……確定情報として動いたり、考えたりするのはやり過ぎだ。

「……なんだ、お前らの方が詳しいぐらいだな」

「そ、そうっすよ、タケルさん! 『ちょっとクラス』ってなんっすか? 一人だけ新仕様を知っているなんてズルいっすよ!」

 ウリクセスは呆れているし、リルフィーは騒ぎ出しやがった。

 ただ、奴の名誉の為にいっておくと、三分の理ぐらいはある。

 ここだけの話だ。誰にも言うな。広まれば自分を含めて、全員が損をしてしまう。

 そんな場合でも、情報を流さねばならない相手が存在する。同じような裏情報を教えてくれる者だ。その仁義を守らなかったら、次の時には知らせてもらえない。

 リルフィーはちゃらんぽらんな様でいて、その辺の筋だけは守る。請求するだけの権利は十分にあるだろう。


「あー……普通の……ありきたりなサブクラス系のシステムだ。『ちょっとクラス』ってのは……例えば『僧侶』の『ちょっとクラス』とかを選べるらしい。『戦士』なのに、()()()()『僧侶』呪文を使えるだとかだな」

「その『ちょっとクラス』という名称は、ゲームデザイナーの付けた仮称ですね。いまある四つのクラスを、全て実装するらしいですよ」

 細かな部分をカイが補足してくれた。……実際、カイの方が詳しいと思う。

「『戦士』なら……ちょっと『僧侶』呪文が使える。ちょっと『魔法使い』呪文が使える。ちょっと『盗賊』ぽいだな」

「……ちょっと『盗賊』ぽい?」

 いまいちピンとこなかったのか、リルフィーは首を捻っている。

「ありきたりな言い方に変えたら『パラディン』、『魔法戦士』、『冒険者』ってとこじゃねえか? でも、『ちょっと盗賊』とか面白そうだよな。いまスキル数で苦しいけど……その辺を解決してくれそうな気がするぜ」

 気がつけば、その場の全員が熱心に聞き入っていた。

 軽く興奮しているのも伝わってくる。

 まあ、俺だって最初に話を聞いたときは熱くなった。実に正しいMMOプレイヤーの姿と言えよう。

「『僧侶』や『魔法使い』は、どうしても接近戦で苦しいから……『ちょっと戦士』で補強するとかな。少し厨っぽいけど『盗賊』で『ちょっと戦士』なんかは……おそらくアサシンだぜ、ポジション的に」

「解析チームでは同クラス選択を――例えば『戦士』で『ちょっと戦士』を選択できるのか。もしくは『ちょっとクラス』を――サブクラスを選ばないでもいいのかに注目してましたね」

「まあ単純に考えて、四クラスかける四クラス分で十六パターン。その半分が選べない、もしくは実質的には死んでいるとしても……八パターンだからな。一気に今の倍になる」

「それどころか各クラスに専用サブクラスなども想定できます。さらにステータス割り振りのバリエーションまで考えると……すぐには把握できないぐらい自由度が高くなりますね」

 簡単にだが、俺とカイとで説明できたと思う。

 しかし実際のところ、『教授』なんかに語らせると話はややこしい。

 各プレイヤーは四つのクラスしか覚えなくて良いのに、十六パターンの選択肢を用意できるなど……裏の意図を探り始めたら限がなかった。

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