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セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


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224/511

変化――3

「で……どなたが優勝したんです?」

「馬鹿っ! 若旦那は熱心だけど、薀蓄ばっかりというか……典型的な賭け事はからっきしな――」

 気付けば部屋の人数が増えていた。

 HT部隊の面々だ。アリサに報告へ来たのだろう。

 しかし、いくらVRMMOでも、人間は勝手に生えてきたりしない。俺が話に夢中になってた間に、入ってきてたのか?

「き、昨日のは大会というか……本当の『ジャンケン賭博』じゃないし! こう……もっとヒリヒリした勝負じゃないと、本気になりにくいというか……雰囲気が和やか過ぎたというか――」

「うわっ……ギャンブルで負けて言い訳」

「それはかっこ悪いです。若旦那、かっこ悪い」

 なんというか……ボロクソだ。

 まあ、いつものごとく俺を肴に遊んでいるのだろう。

 しかし、なんだって女性陣は、賭け事に否定的なんだ?

 少しはアリサを見習って欲しかった。勝とうが負けようが、何一つ文句を言わない。

 ……それはそれで、問題あるのか?

「なんとでも言えばいいさ。それよりも、何か変わったこととか……危ないこととかなかった?」

 いつまでも『ジャンケン賭博』の話をしていても仕方がない。話題を変えて切り上げることにする。


 それに聞き込みの結果の方も気になった。

 当たり前だが彼女達からの情報は、俺達のものとは全く違う。

 そもそも情報源が異なるだろうし、同じだとしても男女差が発生するはずだ。

 さらに男子禁制というか――完全に女性限定のコミュニティだってある。俺たち野郎は、最初からオフリミットだ。

 求める情報がその辺に隠れていた場合、俺達『RSS騎士団』のメンバーには手が届かない。

 『HT部隊』を創設したジェネラルの老獪さを、改めて思い知る。

 ……しかし、どういった経緯なんだ? なぜかアリサが隊長だし?

「危険って……そんなのある訳ないですよ」

「若旦那が、街中の聞き込みに限定したんじゃないですか」

 やや不満そうな返事だった。

 何が気に入らないのか判らないけれど、我慢してもらうしかない。まだ狩場で――街の外で活動するのは危険だ。

 ただ、少し納得はいかない。

 逆に街の外での任務を強要してたら、俺は人非人の外道だと思うのだが……世間一般では違うのだろうか?

「まあ、街の外へ出たいのなら、明日までは我慢して。今日の調査しだいだけど……いくつかの狩場で、活動を許可できると思うよ。だよな、カイ?」

「ええ、まあ……現時点までの調査結果だけでも、いくつかの狩場は大丈夫かと」

 カイの言葉を聞いて、リルフィーが満面の笑みになりやがった。

 その実に嬉しそうな顔には、腹立たしいを通り越して飽きれてしまう。

 愛嬌があると言う者もいるだろうが……散歩の期待に胸を膨らませる犬のようでもある。もし尻尾があったら、凄い勢いで振っているだろう。

 隣に座るネリウムも苦笑いするしかないようだが、満更でもないのか?


 こんな話になっているのは、本日から狩場の調査を始めたからだった。

 いつかは金貨が――資金がショートするのは判っている。

 使うだけでは、目減りする一方だ。どこかで稼がねば、当たり前に破産する。つまりは結局、狩りに行くしかない。しかし――

「今日から狩場への立ち入りを解禁します。というよりも、行くしか選択肢は残ってません。なんとか協力してギルド資金を稼ごう」

 などと言い出したら、無責任ですらある。

 おそらく志願制で人員を募ることになろうが……まだ余裕のあるうちに、比較的安全な狩場を選考し、保険の利いた戦術を考えるべきだ。

 少なくとも情報部は、そのようなことを考える為にある。

 そして本来の目的を達成するべく、数チームを狩場への調査へ派遣していた。


「うへぇ……三食昼寝付きの生活も、今日までだったのかぁ」

「若旦那の甲斐性なら、あたしらの食い扶持ぐらい……無理か」

 つい今さっき、あたかも街へ閉じ込めていると文句を言われたのに、これだ。

 根本的に『HT部隊』の彼女達は、俺のことを玩具と認識している。間違いない。俺の被害妄想じゃないはずだ。

 さすがに噛み付き返してやろう。そう思った矢先に――

「そうそう、若旦那。ヴァルカンさんですけど、見つかりませんでしたよ?」

 と目先を逸らされた。なかなか手ごわい。

「ヴァルさんがどうかしたんですか、隊長?」

「あれ? カイには言ってなかったか? ディックさんに頼まれて探しているんだ。なんでも、朝から見当たらないらしい」

「へっ?」

「いや、だから……朝から姿が見えないから、ディックさんが心配してるんだ。いつもの午前中の幹部会議の後、兵站課へ寄ったんだよ。届けるSSだとか、色々と用もあったしな。その時に頼まれた」

 SSを――スクリーンショットを届ける約束は前々からだ。

 そして預かっていた『のびのび君・一号』についても、話は通しておかねばならない。

 秘匿武器であるはずの『のびのび君・一号』を、ネリウムが使っているところを見たら……ヴァルさんだってビックリするだろう。

「……気になりますね」

「けど……朝から居ないだけだぜ? 大騒ぎするのも、なんだかヴァルさんにさ? 例えば俺が、『朝からいない』ってだけで捜索されたら……ばつが悪いな」

 カイの指摘には、煮え切らない答えしかできなかった。

 が、その場は異様な雰囲気に包まれた。全員の目が激しく泳いでいる。それに決して俺と目を合わせようとはしない。

 いや! 一人だけ目が爛々と輝いている。

 ……ネリウムだ。

 このパターンだと、もの凄く痛い目に会う気しかしない! そう俺の()()()が囁いている!

「興味深いですね! 朝()()居られないのと、朝()()()()()戻られないのでは……大きく意味が違いますし」

 ネリウムは鼻息荒く、軽く頬を紅潮させ……もの凄く楽しそうだ。

 ま、まずい。こ、このままでは……()られる! だが、どうすればいいんだ?

 絶望に陥る寸前、救いの手が差し伸べられる。

「大丈夫ですよ、タケルさん」

 アリサだ!

 どんな時でも俺の味方なアリサは、ちゃんと救いに来てくれた!

「私がお迎えに上がりますから。……お話も着けさせていただきますし」

 そう宣言し、ニッコリと笑う。……凄く怖い。

 あと胸元の懐剣を握り締めるのは、止めたほうが良いと思う。……訳もなく謝りたくなる。

 いや、あれは()()()だったか。

 布袋に包まれているから、懐剣と区別しにくいが……あれは懐包丁で間違いない。アリサが『ダンシング・ダガー』の魔法で飛ばすのと寸分変わらぬ――というか、モデルにした武器だ。

 それに、だが、しかし、そんなことより――

 迎えに行くって……どこへ?

 話を着けるって……だれと?

 絶体絶命の危機に陥りかけたその時、今度こそ救いの手が差し伸べられる。

 扉をノックする音がした。来客だ。

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