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セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


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『岩山』――3

 一縷の望みをかけて男どもを見てみれば……全員が抜かりなく目を逸らす。……ある意味、有能で抜け目がない。

 こんなに逃げ足の早い奴らばかり集めたのは、どこのどいつだ?

 ただ、リルフィーだけは首を捻っている。

 久しぶりすぎて、ジョニーと()()()()()()のことを思い出せないのか?

 かといって、奴に下駄を預けたら、予想の斜め下になるのは間違いない。

 やはり、ここは俺が交渉役か? どうして面倒臭い厄介事は、常に俺なんだ?


「よし、まずは話し合いというのは、俺も賛成だ。いまからそっちへ行くから、攻撃はするなよ?」

 奥へ話しかけながら……剣は鞘へ収め、両手は判り易く降参の意――いわゆるホールドアップの体勢をとっておく。

 全ては相手を安心させるための、ジェスチャーに過ぎなかった。

 声から確認できるだけで男三の女一……計四名だ。多くても、あと一人、二人増えるぐらいか。

 自暴自棄になって襲い掛かられようと、まず即死はしない。死ななければ、何かしらの技術介入もできる。ただ――

 なんだって、こんなに手間が掛かるんだ?

 チャーリーの時だって、すぐには信用してもらえなかったし……今回も攻撃の可能性を――悪意の存在を、警戒されてるようだ。

 そして、この降参の仕草……不具合が発生して以来、このポーズが板に着いてきた気すらする。

 ……慣れねばならないのだろうか?

 これでも俺は、この世界最強勢力の参謀格であり……その所属する集団はイケイケのタカ派だ。なぜだろう……少し悲しくなってくる。


 奥まで進むと、四人の男女が居た。

 予想通りに男が三人、女が一人。ジョニーと()()()()()()、若いのが一人、年寄りが一人だ。

 他にはもう居ないのだろうか? どこかに隠れている? まあ、そうだとしても……リリーかリルフィーなら、発見できるだろう。

「あ、『RSS騎士団』! そ、それも……タ、タケルか!」

 真っ先に俺に気付いたジョニーが叫ぶ。

 もう懐かしさすら感じる下膨れのニキビ面と、何度見ても問い詰めたくなる虎の耳は健在だ。

 前回会った時から比べると、装備も多少は新調されていたから……順調にレベリングが進んだのだろうか。忙しい社会人のはずなのに、たいした人だ。

 旧交を温めるべく、精一杯の笑顔で話しかけてみる。

「しばらくだな、ジョニー。元気してたか?」

「……そ、そうか……そういう運命なんだな。ま、負けねぇ! 俺は負けないからな! お、同じ奴に二回も負けたらッ!」

 そうジョニーは意味不明なことを叫び、剣を抜いた。

 ……リア充ながら、天晴れな奴だ。

 前回の決闘モドキで、お互いの格付けは済んでいる。敵わないことは理解できてるはずだ。

 その証拠に、もう半泣きで、抜いた剣は微かに震えていた。

 命懸けで絶望的な戦いを始めることになったら、誰だってこうなるはずだ。べつにジョニーが臆病なんじゃない。まだ心が折れてないだけで、賞賛に値する。

 ただ、俺達は戦いに来たわけじゃないんだが……。

 むしろ、救援部隊だ。どうしてここまで警戒を……無理もないか。俺達の――『RSS騎士団』は日頃の行いが悪すぎた。


「おい、タケル! あんまり意地悪するなよ! 可哀想だろ!」

 見かねた秋桜が、俺を叱るが――

「ジョニー! あ、あの女! あいつ……『不落』の金髪だよ! 『陰鬱の精霊』もいる! や、やらせない! ジョ、ジョニーは私が……さやタンが守るんだから!」

 ()()()()()()の方が、過剰な反応をした。

 やはり、例の蛍光ピンクの髪もバッチリだ。

 ジョニーと並んで戦おうとする姿勢は、殊勝にも思えるが……視神経にダメージが発生するので、ずっとジョニーの背中に隠れていてくれないものか。

 そして秋桜とリリー……お前ら、普段なにやってんだ? 『陰鬱の精霊』って……リリーが献上された通り名か?

「はぁ……ほら、脳筋は下がって。リリーもよ。タケルさんの邪魔です」

「な、なんだよ、アリサ! この金髪は……タケルがそうしろって――」

「あ、あの……ア、アリサお姉様? そ、そこまで仰られなくとも――」

 しゃしゃり出てきた秋桜を、アリサが窘めたが……それで事態は、更に悪化の兆しを見せた。

「ま、まずい! あの(ひと)は……『破滅への案内人』ですよ! 魅入られた者は、破滅させられるという……そんな大物が……なんで? 懐刀の『ブラッディ』さんも一緒だ! これは……誰かが命を捨てる覚悟じゃないと……逃げることすら」

 ……『ブラッディ』さんは、ネリウムのことだろう。

 なら『破滅への案内人』とは、アリサのことか?

 そういえばアリサは、色々な通り名を持っているらしい。その理由を聞くのは、色々なゴタゴタで忘れていた。

「プ、プロパガンダですよ! プロパガンダ! それに、あの人、ちょっと大袈裟に言ってます! あとでちゃんと説明してくれるよう、()()()()おきますから!」

 思わず振り返ってアリサを見ると、そんな答えが返ってくる。

 なぜだろう……その()()()()には立ち会いたくないな。

 そしてリルフィーにも言いたいことがある! この訳の判らない通り名のバーゲンセールで、羨ましそうに指を咥えているんじゃない!

「もう……みんなヤンチャなんだから! あとでお説教ですからね! ――『聖喪女修道院』のリシアンサスです。できたら、その……お話でも?」

 ありがたい。リシアさんが取り成しを買って出てくれた。『聖喪』のネームバリューなら――

「『聖喪』じゃと? 噂は聞いたことはあるんじゃが……アンタがその『聖喪』なのか? 誰か判断できるか?」

 向こうの爺さんがそう答えるが……なんの反応も返ってこない。

 まずい。こいつら『聖喪』のこと、噂程度でしか知らないらしい。当然、リシアさんが、そのギルドマスターなのもだろう。

 べつに有力ギルドの情報は必須事項じゃないから、そんなこともあろうが……いまはタイミングが最悪だ。

 そして四人は――

「ご老体……やはり、ここは僕が残りますから、三人は街へ帰還を!」

「いや、残るのはワシじゃ! こういうのは年齢順と相場が――」

「俺が残るぜ。さやタンは……急いで『帰還石』を使うんだ。戦闘になったら手遅れになっちまう」

「やだ、私も戦う! それにジョニー……勝っても帰れなくなったら――」

 などと、再び揉め始めた。

 もう、故意を疑いたいほどだ。そもそも何日もこんなとこで、こいつらは何をしてたんだ?

「……タケル『くん』? どうするんや?」

「どうするも、こうするも……」

 呆れた様子のジンだったが、俺にも答えようがない。

 この流れでジンが出張っていって、説得できるだろうか? そう悩んだ矢先に――

「サブマス! サブマスじゃないですか!」

 向こうの若いのが叫んだ。

「おお! こんなとこにおったんかい! 自分、いままで何してたん?」

 まるで動じずにジンは応じたが……素早く視線が動いたのは見逃さなかった。

 こいつ、急いで相手の所属ギルド調べてやがる!

 そして……つまり……この若いのは『自由の翼』所属なのか?

「最初からお前が交渉すりゃ良かったじゃねぇか!」

 ……思わず怒鳴りつけた俺を、責める者はいないはずだ。

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