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セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


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『岩山』――2

 その『岩山』だが、プレイヤーには特殊な使われ方をしている。

 テレポートで移動可能になる前から、橋頭堡としての活用だ。

 理由は判らずともモンスターの進入がない以上、休憩所場所として重宝する。

 そして安全地帯を背にすれば、背面攻撃(バックアタック)を警戒しないで済むのはもちろん、相手取るモンスターの数も調整しやすい。

 ソロから少人数での修行場所として手頃な上に、ログアウト可能なのも大きかった。

 通常、ログインしたら、前回ログアウトした場所に出現する。

 ……この仕様には賛否両論あるが、ログイン・ログアウトをゲーム攻略に利用されないためだ。

 ログアウトすることで何か状況が変わる――例えば街へ戻されるなど――のなら、利用した攻略も……それなりに古典だったりする。

 結局、どんなに対策しても、プレイヤーは何かしら上手い抜け道を探し出す。

 仕様やルールの大半は、運営と楽をしたいプレイヤー達の抗争が育んできた。呆れる者もいようが……それもまた、MMOとゲームの遊び方の一つだと思う。

 そして狩場でのログアウトも可能だ。……普通はやらないが。

 なぜなら次にログアウトした時、そこが安全かどうか判らない。

 ログインした瞬間、モンスターに囲まれている可能性はあるし……よく聞く失敗談でもある。

 しかし、なぜか『岩山』は安全だったから、ログアウト場所として適当だ。

 これがソロ志向のプレイヤーや、ウィークディは忙しい社会人に着目された。

 なんせ歩いて数分もしない内に、すぐに狩場だ。準備時間は圧倒的に少なく済む。

 「寝る前の一時間に軽く狩りを」なんて考える、ライトユーザー層に人気の狩場となった。……いや、最初からライト層救済が目的だったのかもしれない。

 プライムタイムにもなれば、人気を当て込んだ商売人だって現れる。独りでここまで来れない奴も、似たようなメンツを集めてツアーを組む。

 街レベルは大袈裟すぎるが……狩場でコミュニティが形成される典型例といえた。


 それに『スライム狩り』は、いうなれば入門編だ。お次は『ゴブリン』狩りか『コボルト』狩りなど。それに飽きる頃、やっと初心者卒業となる。

 そして次の狩場として『岩山』を――中級者を目指す。

 定番攻略ルートの一つだ。

 まだ幾つかルートはあるが、そんな風にして……実力を養ったり、装備を買う資金を稼いだり、活動範囲を広げていったり……そんなのがMMOの楽しみ方の本道だろう。

 もちろん、その間にギルドを探したり、誘われたり……野良ツアーか何かで知り合いを増やしたりもだ。

 ゲームを楽しみ、交流を広げ……そして自分自身も世界の一員となりつつ、世界の充実を手助けしていく。

 そんな流れを作る内の一つで、この『岩山』は中級者の社交場ともいえる。

 ……いや、いえたか。

 こんな不具合が発生した今、ここのコミュニティは潰れてしまっただろう。戻れる奴は全員、街へ帰還しているはずだ。……戻れたのなら。

 こんな風に潰れたコミュニティや、機能不全に陥ったシステムは数え切れないくらいだろう。

 いま、このゲームは壊れてしまっている。

 それがいつまで続くのか、いつかは直るのか。それは判らないけれど……そのことを考えると、少し悲しくなってしまう。……そんなことを嘆く暇は無いはずなのに。


「やばい感じがするぜ……俺の勘がそう囁いてやがる」

「灯を持っているところをみれば……プレイヤーでしょうか?」

「かもな。……おい、そろそろ逃げろ。こんな荒事は俺達の――男の仕事だぜ?」

 二人の男の会話が聞こえてきた。

 『岩山』にある洞窟というか、隙間というかの奥の方。ちょうど正体不明なオブジェのある方向からだ。

 俺達の持つ光源に気付いたようだが……何か様子がおかしい。

「や、やだよ! わ、私も戦う!」

「なに言ってんだ、子猫ちゃん? いいか、戦うのは最後の手段なんだぜ? まずは話し合いからだ」

「な、ならっ! わ、私が居ても――」

「……お嬢さん、彼氏さんの言うことを聞いときなさい。その……そうしてくれた方が助かるんだ。お嬢さんが『帰還石』で離脱してくれたら……我々の分の『翼の護符』が助かるからね」

 とりあえずのところ男が三人、女性が一人か?

 いや、声が聞こえるだけで四人としておくべきか。敵意のないことを表明すれば、穏便に話が進むと思うが……油断して、不意は打たれたくない。

 リリーが軽く肯いてくる。

 ……スキル構成は判らないが、何か探知系のスキルを使ったのか?

 よし、それでは声を掛けるか! そう決断し、口を開く寸前に――

「やだ! わ、私……ジョニーと一緒に戦う! ジョニーと一緒じゃなきゃ……生き延びても仕方がないよ!」

「さやタン……おめえは俺の女なのに……俺に恥をかかせんのか? さやタンの為に命ぐらい……いつだって張れるんだぜ?」

 どこかで聞いた声だと思っていたら、ジョニーとさやタ………………()()()()()()だった。

「ふふ、お二人は若いな。じゃが、こういうのは年寄りの仕事と相場が決まっとるんだ。さ、ここはジジイに任せ、皆はお逃げなさい」

「……何いってるんですか。そこまでのお年じゃないでしょう。一人残るのなら……僕の方が向いてます。ここは僕に任せて――」

「や、やだよ! み、皆で帰ろうよ! さ、さやタンが……さやタンがドジだから……さやタンのせいなんだから……」

 なんだろう。凄いことになっちゃってるぞ。

 俺、いまから……あんなノリの人達へ、話しかけなきゃいけないのか? 「助けにきたぞー!」って?

 そんなことするぐらいなら、「じゃーん! どっきり企画でしたぁ!」と言う方がマシだ。怒って斬りかかられるぐらいは我慢する。

 普通のテンションで話しかけたら、絶対に大怪我をするだろう。それも双方がだ。そんな思いで後ろを振り返ると――

 女性陣の様子がおかしい。

 一様に頷いていたり、軽く顔を赤くしてたり……アリサに至っては、軽く涙ぐんですらいる。もしかして……ジョニーと()()()()()()の二人に、感動してるのか? なんで?

「……おい、ジン! お前が声を掛けろよ。お前んとこ、善いもんギルドだろ? 慣れてんだろ、こういうの?」

「あ、あほなこといわんといて! この企画は、タケル『くん』立案やろが! わい、そんなスカしたことようせんわ」

 ちっ……使えない奴だ。

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