表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

191/511

捜索――4

 何やら関わったら面倒臭そうな言い争いも聞こえてくるが、無関係を決め込めそうもなかった。

 なぜなら騒ぎの中心になっている奴らは、揃いの装備で身を固めていて……まあ、ようするに身内で……つまりは我らが『RSS騎士団』の仲間だ。

 紅一点ならぬ白一点がいるから、近寄らなくても部隊名も判別できる。第一小隊だ。

 ……やはり、あの白備えは見直させたほうが良いのか? 例の『死神の鎌(刈り取るもの)』と合わさって……どんなに遠くからでも、確実に狙えそうだ。優先防衛対象の『僧侶』なのに!

「あー……ちょっと行ってくる」

「あ、あの……た、隊長? で、できれば穏便にといいますか……れ、冷静に?」

 カイが妙な感じに宥めてきたのは、顔に出ていたからだろう。俺が不機嫌の極みというか……いい加減に我慢の限界が近いことが。


「逆らうようであれば……我々に敵意があると考えねばならんな」

 ……まるで脅しだ。

 まあ、そんな物言いをしているのは、第一小隊の奴らの方だが。

 そして、場の雰囲気は逆風というか、アウェーというかで……完全に孤立しちゃっているのだが、まるで気にしちゃいない。

 ある意味で頼もしいというべきか、開いた口がふさがらないというべきか。

 ざっと見た感じでは、どうやら聞き込みをしているようだ。手に持っている紙は、チャーリーの証言を基にした似顔絵か?

「だから……黙って顔を見せれば良いんだよ!」

 隊長の――ハンバルテウスの言葉を補強するように、ルキフェルが怒鳴る。

 まるでヤクザかチンピラだ。客観的に眺めて、初めて判った……俺達『RSS騎士団』の横暴さが。情報部のメンバーなら、もう少しスマートにやるだろうが……隠れている力関係は同じだろう。

 まあMMOでは、武力を背景にしても反則にはならない。

 だから非難するのはお門違いなのだが……現状でも同様かというと、疑問は覚える。もう少し協調だとか、助け合いを意識しても良いはずだ。もはやゲームではないのだから。

 あまりの荒々しいやり方に、女の子なんかは泣き出す寸前になっていて……良く見れば知り合いで――カガチだ。不具合に巻き込まれていたのか。

 なんだろう……厄介事のレベルが上がった気がする。

「あっ! お兄ちゃん! 助けて! お兄ちゃんのお友達が、カガチを虐めるんだよ!」

 目敏く俺を認めたカガチは、そんな角の立つことを言い放つ。もちろん、素早く俺の腰に抱きつくようにして、隠れるのも忘れていない。

 いや、確かに面倒臭くは感じたが……見てみぬ振りをするつもりはないから、必死にしがみ付かなくても平気だ。


「おや、参謀『殿』……どうかされましたかな?」

 同じく俺に気付いたハンバルテウスが言うが……奴も不快感を隠しきれていない。

 ……なぜだ?

 同じ気持ちを共感でき、意見も異ならず、そもそも仲間だというのに……どうして俺達二人は、お互いを厄介者にしか思えないのだろう?

「……何をしているのか問い質しておきたくてな、『少尉』?」

 なるべく穏便に言ったつもりなのに、視界の隅でカイの顔付きが変わった。まずい、全く感情を隠せなかったらしい。

 確かにフラストレーションは最高潮に高まっている。

 いまの俺の望みは、ただ一つ。一刻も早く探索へ向かうことだ。正直、それ以外の全ては後回しにしたい。

 なのにジンの茶番に付き合ったり、ハチの独断専行を裁定したり……もう何もかもに、足を引っ張られている感じがする。

 そして止めと言わんばかりに、ハンバルテウスだ。

「何を、とは心外な……崇高な任務に従事しているだけだ!」

 さすがに気分を害したか。

 まあ、少し意地が悪かった。普段は使わない階級を呼び掛けて、奴を逆撫でしてしまっている。

 俺は『少佐』で、奴はいまだに『少尉』。他愛もないことだが、奴には不満でならないらしい。

「そうなのか? 俺はまた……無駄に悪評をばら撒いているのかと思ったぜ」

「タケル……いや、タケル『少佐』か? 俺達はただ……アレックスを()った奴を探しているだけだ。タケルが――『少佐』が気にするようなことはしてない」

 ルキフェルも、ややふくれっ面で釈明をしてきた。

 この態度の方が納得できる。俺の機嫌が悪いのかと邪推しての、わざわざ階級名を使った呼び掛けは苦笑いしか出ないが……なんとなく共感はできた。

「何とでも好きなように呼べばいい。前にそう言っただろ? だけどな――」

 説明しようとして、思わず口篭ってしまった。

 二人は――第一小隊の面々は、把握できているのだろうか?

 この場は街の中じゃない。城壁を出てすぐの場所といっても、完全に街の外だ。つまりは、ようするに……攻撃を受ける可能性がある。

 それに強権を持つ憲兵隊じゃあるまいし、あのようなに居丈高に振舞えば反感を買う。

 結局、回りまわって最後には自分を――そして仲間をも、苦境へ追い込む可能性すらある。そんなことも理解できないのだろうか?

 いや、いっそのこと……それを奴に、俺自身の手で判らせれば――

「タケルさん?」

 リルフィーの声で引き戻された。やや驚いているし、不審そうでもある。

 いつの間にやら、俺の左側やや後方に陣取っていた。さり気なく抜刀できる姿勢をとっていて……事情が解からなくとも、荒事になれば参加する。そんな意思表示だろうか。

 ある意味で心強いが、非常に拙い。殺気がダダ漏れになっていた証拠だ。

 俺の殺気なんぞ、付き合いの長いリルフィーにしか察知できないだろうが……これは少し、努めて冷静にならなくてはならない。どうやら頭が煮えてしまっている。

「犯人の捜索に関しては、情報部が一任されているはずだ。手が足りなくなったら、助力を頼む。だから、それまでは手を出さないでくれ。かき回されたくない」

「そのようなこと申されても参謀『殿』、我々は正当なる報復のために――」

 こちらを嘲るような表情のハンバルテウスを遮る。

「あー……はっきり言わなかったのは、配慮だ。命令の形にした方が良かったか?」

「タケル! 俺達は……階級はそんな風に使わない約束だろ!」

 反発するルキフェルにも、可哀想だがショックを与えておく。

「それは違うぜ? いままで露骨な命令をしてこなかったのは、ただの配慮の結果に過ぎない。よく考えろ。俺には、その権限が与えられている。不満があるのなら、俺にじゃなくて……団長か副団長に掛け合え」

 なるべく平坦なトーンで言ったつもりだったが、かなり角が立ったらしい。狙い以上のショックを受けた表情を、ルキフェルはしていた。

「……この借りは必ず返すぞ」

「ああ、そうしてくれ。次の幹部会議の議題は、これにしよう。俺も理解して欲しいことが沢山ある。――それから、そこのお前! アンタの審査は俺がする。いつの間にか入団してただとか……絶対に認めないからな?」

 ハンバルテウスに答えつつも……なぜか第一小隊と一緒の志願兵に――先ほどギルドホール前で出くわした奴らの一人に、釘を刺しておく。

 こちらは苦虫を噛み潰したような顔だったが……その冷静に計算しているところが不信感を募らせる。志願兵の奴らは、思っていた以上に厄介事の種か?

「とにかく、ギルドホールで待機していてくれ。……()()()()()言い直さなくても良いよな?」

 そう念を押しながらも、内心では失敗を噛み締めていた。

 全体的に判断ミスが多いし、これでは後顧に憂いが残ってしまう。

 俺を睨むハンバルテウスの表情から、そんなことを思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ