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セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


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捜索――3

 俺が周りを観察していたように、俺達も周りから注目を集めていた。

 もはや馴染みの警戒反応と思えるが……その視線には、好奇心が込められている気もする。どういうわけだ?

「あー……タケル『くん』! 待たせるようで悪いんやけど……ちょっとええかな? あそこの奴らと――ウチの奴らと、少し話してくるさかい」

 そんなことをジンが持ちかけてきたが……わざとらしく声を張っている。

 仕切っている奴らのことだろうか? 正直、そんなのは後にして欲しいところだが……何か意図がありそうだ。

「……なるべく早くしてくれよ? 俺達のパーティは、だいぶ出遅れているんだし」

 適当に答えておく。

 カイが何か伝えたそうにしているし、なんとなく狙いも読めてきたからだ。

 おそらく自分や他の参加メンバーで捜索へ行くのを、この場で見せ付けておきたいのだろう。いわゆる政治的パフォーマンスやジェスチャーの類か?

 その証拠というか――結果として、行列の奴らもざわめいている。

「おい、あいつら荒野へ調査に行くつもり……なのか? 正気かよ……命懸けになるんだぜ?」

「……そうみたいだな。でも……参加メンバーは豪華だぞ? 『RSS』のタケルに『自由の翼』のジン……あの二人、犬猿の仲じゃなかったのか?」

「『不落』の秋桜と『聖喪』のリシアさんもいるな。この前、全員でバトルロイヤルの喧嘩してなかったか? それに『ヴァルハラ』の奴も……あいつはギルマスだろ?」

 などと噂をされている。

 しかし、悪いアイデアではないと思われた。

 ここで表面上でも友好関係をアピールできれば、後々に緊張でもした時に役立つ。

 なんでジンが参加したのか、少し不思議だったが……この目論見もあったのだろう。やはり抜け目のない奴だ。

「大手の停戦合意は、本気だったみたいだな」

「うちのギルマスにも交渉させた方が――」

「――いや、規模が小さいところは状況を注視しながら、独自の――」

 なんて論評も聞こえるから、この推測であっているだろう。

 敵――臨時に停戦中なだけで、ジンの野郎は味方ではない――であろうとも、その発想や力量は認められるし……ある意味で信頼もできる。

 それに奴が平和路線を選ぶのに、俺から否やもない。

 事態が解決するまで、一切の荒事を起こしたくなかった。結局、骨が折れようとも……話し合いで済ましたほうが、万が一の取り返しも付くはずだ。

 力による解決は、どうにも……決定的過ぎる気がしてならない。


「……どうした?」

 仏頂面のカイへ、あやすように訊ねておく。

 なにが気に入らないのか判らないが……これは割と頭にきているようだ。放っておくと、絶対に俺にとばっちりが来る。

「隊長、あれを……」

 カイが指し示す方向には、簡易天幕が張られていた。

 そして見覚えもある。本陣設営用の代物で、やはり新規開発の兵器というか……新しい『RSS騎士団』の備品の一つで、篝火と同じく秘匿中の品だ。いや、だった。

 攻略担当としては我慢ならないのだろう。まあ、秘密にしていた兵器を勝手に持ち出されれば、誰だってイラッとはくるか。

 カイが無言で押し付けるように渡してきたメガネを掛ける。

 例によって『長視界』スキル入りだ。それで改めて天幕を観察してみれば、細かな様子も見て取れるようになった。

 まず、間違いなく『RSS騎士団』の天幕だ。『RSS騎士団』の紋章も付いているから、間違いようもない。

 そして持ち出したのは、情報部の――商業担当チームの奴らだ。

 一目で判る。見知った顔ばかりが天幕の中に陣取っていた。商業チームの奴らが勢ぞろい……は、言い過ぎでも半数以上は居る。

 そして天幕には品書きのように――

「『基本溶液』買取致します。一本金貨十一枚」

 だとか――

「『みどり草』、『あお草』、ご不要な中級・上級の『回復薬』の売却協力を!」

「お手すきな『錬金』スキル持ちの方、お手伝いをしてくれませんか?」

「各種素材、買取および販売、価格は応相談。資材流通を助け合いましょう」

 などと、賑やかに張り紙が張られている。

 色々と問題点はありそうだが、コンセプトというか……何をしているのかも、すぐに理解できた。一見、たんなる商売にしか思えないが、おそらくそうじゃない。


 しかし、確認は必要だろう。

「……ハチ? あれ、お前の仕業?」

「仕業って……隊長、その言い方は酷い!」

 そんなことを言いながらも、ハチは最後尾から俺のところまでやってきた。

 まるで悪びれてないし、ニコニコ笑ってやがる。これは……いわゆる確信犯か?

「なにをヘラヘラと――どうして許可もなく天幕や篝火を――」

 説教を始めたカイを、軽く手を振って止める。

「あー……カイの言い分が正しい。あー……ハチは後で……あー……始末書か何か書いて提出するように。――で、一応は確認しておきたいんだが、儲けてないよな? いや、多少は構わないけど……足元を見たりさ?」

「た、隊長!」

 多少は配慮したのに、カイは裁定に不満なようだ。

 ……どうしてハチは独断専行というか、目に見えている衝突を避けないのだろう?

 行動に筋が通っていても、こんな風にやれば誤解もされる。たんにスタイルが性に合わないという理由で、カイともぶつかってばかりだ。

 ただ、ハチが隠している才覚で、それに気付けないわけがないから……多少はわざか。カイとのやりとりも、ハチ側は楽しんでいる節もあるし。

「よしてよ、隊長……売るのも買うのも、底値に金貨一枚しか上乗せしてない。全く儲けがないとは言わないけど、ほとんどボランティア。……それとも稼ぎにいった方が良かった?」

 ハチは人の悪そうな顔で答えた。

 なんだか試されている気もする。

 この機に利益を積み上げるべき、そう感じたのならハチは先に相談を持ちかけたはずだ。つまり逆算すれば、これは論じるまでもない選択なのだろう……ハチにとっては。

「馬鹿をいうなよ。疲れるだろ? まあ、目立つところの……顔役は『自由の翼』に任せて、俺らは地道に罪滅ぼしのボランティア。それで良いよ。それより、手は足りてるの?」

 ハチは無言で肯きで返し、カイはむくれた。


 カイは不満なようだが、これはボランティアだとか……助け合いの精神に近い。

 止める理由は無いどころか、むしろ自発的に提案すらあり得た。気取った言い方をするのなら……力を持つ者の義務か。

 細かいことを言うのであれば、篝火だってタダではない。

 皆が困るからと、その出費に黙って耐えるのは……精神性の問題といえるはずだ。

 それに、このままでは誰かが介入しないと、『基本溶液』の価値は無くなってしまう。

 現状、気軽には『みどり草』と『あお草』を採取へいけなくなっている。そして『基本溶液』は『回復薬』にしないと、NPCは買い取ってくれない。いつかは『基本溶液』だけが余り始める。

 つまり、大量にドロップされる『基本溶液』は、将来的にゴミ同然だ。

 それでは行列を作っている全員が、悲しい思いをするだろう。

 積極的に買い取って値段を支えたり、中級・上級の『回復薬』から無理やり『みどり草』と『あお草』を採取したり……色々なサポートが必要となるはずだ。

 各種素材だって、各自がバラバラにNPCへ売却するより、余剰分だけ売った方が万人の利益にはなる。


「基本的にハチの判断は認める。混乱に乗じて儲けようとしなかったのも、褒めておきたい。そしてカイの不満も妥当に思える。だから、ハチはカイが納得する始末書を提出。それで良いよな?」

 なんでカイとハチは上手くやってくれない……というか、ハチはわざと騒動を引き起こすのが好きなんだ? 頭は良いんだから、賢く立ち回ってくれればいいのに。

 まだカイは裁定にまだ不満なようだが、全ては後まわしだ。

 俺はさっさと先へ進みたいし、ここで無駄に時間を潰したくない。もう揉め事は全て回避の方向で――

 そう思った矢先に、騒ぎが起きた。

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