表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

183/511

変わっていく世界――6

 俺に介入できたのは、そこまでだった。

 だが、後から現れたモノは、引き続き何かを……音?を立て続けている。

 そして最悪なことに……解読しようと集中してしまった。しかし――


 の、脳が……脳が痛い!


 脳が理解を拒んでいるのか?

 溶けていく。頭が溶けていくかのようだ。

 ……おかしいぞ?

 脳に……脳自体に痛覚はないと聞く。

 いや、全ての感覚は脳で判断する。それは痛覚もだから、痛くても変ではない?

 違う! そうじゃない! そうじゃないんだ!

 それはそうだけど、のうにつうてんはないはずなんだ。

 だから……ぜったいぜつめいのききには、のうをひじょうしょくにするといい。だってつうてんが……いたくないんだからへいき。

 なにもたべるものがなくなって、がししそうになったら……のうてんをかちわって、のうをたべればいいんだ。いたくないからへいき。

 どこかとおくで、おんなのこがわらっている。

 かんだかいわらいごえだった。きいてるだけで、かなしくなってきちゃいそうだ。


 あれは……亜梨子ちゃん…………いや、亜梨子?

 すぐ後ろに座っているカイくん――カイが呻いた。

「ギ、ギルド……い、『異界』だと? そ、存在したのか?」

 ああ、そうだったか。さっきの音は、僕らの世界とは異なる――もの凄く遠くて異なるどこか、そこで奏でられたんだ。それなら、脳が溶かされても納得だね。

 ……うん?

 …………ギルド? ギルド『異界』?

 ………………ということは――


 こいつ、エビタクじゃねえか!


 後で振り返ると、俺が惚けていたのは一瞬だったらしい。体感では輪廻を何回か繰り返せるぐらいの永劫に感じたが、事実関係から推理するとそうなる。

「あ、亜梨子君? し、しっかりしたまえ!」

 ひきつけを起こした亜梨子を、ギルド『東西南北(ニュース)』のメンバーが介抱していた。

「過呼吸を()()()()()してんだ! 無理やりにでも口を塞いでやれ!」

「えっ? で、でも……」

「早くしてやれ! この世界で窒息はしない!」

 視界の隅で、行動に移ったのが見えた。これで亜梨子の方は一安心か? そして――

「とにかくお前は黙れ! 俺達全員が、おかしくなっちまうだろうが!」

 なおも何か話し続けようとしたエビタクを、怒鳴りつける。


 それを聞いて「おい、おい……冷静になれよ」とばかりに、エビタクはホールドアップをしてみせた。

 恐ろしいほどの攻撃力を持ったエビタクだ。驚愕に値する。

 こちらへ配慮しているようなのに、この有様だ。俺が今まで遭遇してきたエビタク類と比べても、文句なしに最上位の存在だろう。

 これで加減されていると判断できるのは、頭からズタ袋のような物を被っていたからだ。

 つまり、この惨状を、眼前のエビタクは声だけで引き起こした。

 顔を隠しているのは、俺達を壊してしまわない配慮だろうし……直接に姿かたちを見たら、もっと酷い目に遭わされる。その証拠に他ならなかった。

 そのズタ袋の上へ、視線の焦点を合わせる。カイの言った通りに、所属ギルド名に『異界』とあった。

 ……カイの奴はこんな時に、よく所属ギルドを調べる気になったものだ。


 ギルド『異界』の名前は、都市伝説的に聞いたことがある。

 いわく、どこそこの狩場で、形容しがたいナニかと出会った。そいつの所属ギルドは『異界』だ。ギルド『異界』のモノと出会ったら気をつけろ。

 そんな噂だったはずだ。

 ……だが、待って欲しい。

 システム的には『異界』という名のギルドだが……本当にそうだろうか?

 こいつらがギルド?

 俄かには信じ難い……というより、ナンセンスにすら思える。

 それはシステムの誤認識に過ぎず、実際には……このゲームのどこかが、異世界と繋がってしまったのではないか?

 前にも似たようなことを思ったことがある! あの時の直観は正しかった!

 こいつらは深い闇か何か、決して人類には理解し得ない深い淵に棲んでいて……その異なる世界と、我々の世界が繋がってしまったのだ!

 そう思わなければ、おかしいことだらけ……いや、そう考えれば説明の付くことの方が多い!

 姿を見ただけで、声を聞いただけで精神に障るなんて……異常なことだ!

 おそらく、こいつらの真の名が知れ渡っていないのだって……その言葉を認識してしまえば、もう戻れなくなるからに違いない。

 いや、いま現在の意味不明な不具合だって……こいつらの超常能力が原因と考えたら――


「……我々は通達に来た。一方的になってしまうが、それは許して欲しい。我々ギルド『異界』一同は、旧『聖喪女修道院』聖域を本拠地(ホーム)として占有させてもらう」

 脳が溶けていく感覚と戦いながら、必死にナニを言っているのか考える。

「どういうことだ?」

「事故を起こしたくない。我々は時折……街中でも攻撃を受けることがある。それは仕方がないことかもしれない。だが……いま現在、その様なことがあれば……双方にとって悲劇だ」

 その理屈は解かる。

 ほんの少し匙加減が違うだけで、こいつらを攻撃していた可能性はあった。

 出会い頭だったり、偶然にも夜だったり、何か他の事で腹を立てていたり。そんな時、反射的に迎撃しても……それは勇敢さの現れだろう。

 いや、趣旨が違うか?

 奴が言うのは警告で……街中でプレイヤーを攻撃したら、通常は攻撃側だけが排除対象となる。

 エビタク類は、あれで温厚な奴が多いと聞く。先制攻撃をするのは、常に俺達側で……『衛兵』に排除されるのも常に俺達?

 そんな馬鹿な! 運営はエビタク側の味方をするというのか! そんなのは世界に対する造反だ!

 ……うん? 何か考え違いをしている?

 しかし、考えている間にも、再び脳がとろけていく。

 のうがとろけたらたいへんだ。ながれだしちゃう。そうなるまえに、はなをおさえるんだ。えきたいかしたのうは、はなのあなから――

「とにかく、警告はしたぞ! 我々も可能な限り、引き篭もるつもりだ」

 そういいのこすと、エビタクはたちさってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ