表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

180/511

変わっていく世界――3

「とにかく、全員に『翼の護符』所持を徹底。各パーティのリーダーは、出発前に確認すること。もちろん、ショートカット登録もだぞ!」

 俺の指示にグーカとリンクスが黙って肯いた。

 二人ともハンバーガーのような、サンドイッチのような具材を挟んだパンを口にしながらだ。行儀は悪いかもしれないが、もう十分に時間を無駄にしている。細かいことを気にしてる場合じゃなかった。

「隊長、人数分けですが――」

 やはり食べながらのカイが、質問を投げかけてくる。

 ……確かベーグルだったか?

 皆への指示で忙しいのを気遣って、アリサが俺の分も支度してくれた。小洒落た感じの食い物だが、美味そうだ。ゆっくり味わう時間があればいいのだが……。

「あー……とにかくフルパーティを基本に。戦力不十分になるくらいなら、捜索チームの数を減らそう。グーカとリンクスがリーダーの――この二つのパーティへ主力を集めるぞ。攻略チームはいつものように、シドウさんのところへ――第二小隊へ助力を仰げ。話は通してある」

 攻略チームと解析チームの面々も肯き返してくる。

 これではシドウさんに丸投げに近いが、大丈夫だろう。情報部とシドウさん達は、何かと協力することが多い。むしろ普段通りの慣れたやり方だ。

「タケルさん、私達は――」

「アリサのところは、手分けして砦の街と第二の街を再捜索してくれ。手の空いた者も回す。それから悪いけど……アリサは俺のパーティな。……外へ出るのが怖かったら、街で待っていてくれ」

 しかし、首を横に振ることで応じられた。微かに微笑んでもいる。

 べつにレディファーストだとか、荒事に女性をうんぬんとか……その手の気取った主義主張じゃない。

 確かに最前線へアリサ達を――HT部隊を送り込むのは気が引ける。それで安全な街の再探索を割り振った。

 そんな選択をしながらも、アリサを俺のパーティへ入れたら……俺がブレているようにも思えるだろう。

 しかし、単純に方針を――『最大戦力で事に当たる』を守っただけだ。


 一応、MMOではレベルや装備なども大事ではある。

 ただ、それらで得られる強さには、すぐに限界が来てしまう。無駄ではないが、そこで彼我の差を開くのは難しい。

 まず指折りで数えられるほどレアな武具でもなければ、熟練プレイヤーなら一級品を揃えられる。さらに超希少アイテムと一級品との差は、それほど無いのが通例だ。

 ……まあ、当たり前ではある。

 世界に数個しかない必須アイテムなんて設定したら……そのゲームは数人、もしくは数グループしか楽しめない。

 レベルの方も似たようなものだ。

 世界最高峰を目指すのならともかく、一定のレベルを超えると大差は無くなる。これが言い過ぎだとしても……廃人の世界では一、二レベルの差など無きに等しい。五レベル違ってようやく差が判る程度か。

 つまり、熟練プレイヤーは似たような一級品の装備で、一定以上の強さは持っているのが当たり前となる。

 まだ開始直後――考えてみれば、正式サービス開始されたばかりだ――だから、そこまでの成熟はしてはいない。だが、詰められる部分を多く残しつつも、トップグループでは近い状況だ。

 そんな似たような条件でも、強い弱いの違いは現れる。

 ベタな表現になるが、やはりチームワークだ。

 一足す一で、三にも四にもなる。そんな摩訶不思議なことはいわない。一足す一はどこまでいっても二でしかない。だが――

 俺が個人の資質として持っているであろうマイナス分を、パーティの誰かが補ってくれれば……俺は一以上の戦力になる。

 逆にマイナス分を増加させるようなパーティだったら、俺は一以下の戦力に……下手したら足を引っ張ることになるだろう。

 それには仲間が俺の欠点や苦手を理解してくれてる方が良いし、俺の方でも助けられるのがベストだ。

 つまり、よほどセオリーや基本が固まった後でもなければ、一朝一夕にはなんともならない。パーティとしての経験値が――見えないレベル上げが必須となる。

 それで俺が、誰とそれをしていたかといえば……ペアではアリサとが一番多く、パーティではカエデとアリサ、リルフィー、ネリウムなんかとだ。

 いま挙げたメンバーが一番信頼できる。それはレベルがどうのとか、装備がどうのとかを超えた部分でのことだ。


「でも、隊長……そうすると隊長のパーティが、人数足りなくなりますよ? やっぱりグーカかリンクスのチームから少しずつ回すか、待機部隊を減らすかしないと――」

「んあ? そうなるか? でもフルパーティは譲りたくないし、待機部隊も必要だろうな。ちょっと待っててくれ」

 カイの指摘に肯いておいて、話し相手を変える。

「おい、ウリクセス! こんなところで何してんだ? こんなところで油を売っていても、経験点は入らないぞ!」

「お、おう! って、経験稼ぎって流れでも無いだろうよ。なんでもここへ来ればタケルとか――色々な大物が居るって聞いてな。ギルドメンバーに勧められて出張ってきた」

 なるほど。ウリクセスがここに居る理由は理解できた。

 しかし、となると……奴は俺に用があるのだろうか?

「まあ、そんなのはどうでも良いや。暇だったら狩場の捜索を手伝えよ」

「なんや、タケル『君』のところは、誰ぞいないんでっか? うちとこも何人かそういうのおるで……場所によっては情報を――」

 ジンの野郎が絡んでくる。暇つぶしというか……この空気に耐え切れなかったのだろう。

「お前が俺達の席を確保してくれてなければ、今頃は狩場なんだよ! ありがとうな! なんなんだよ、この重苦しい空気は!」

「わ、わいに言われても……なんでかこうなっとんたんや。昨日と同じで、わいはここで仕事してただけやし。ほらタケル、昨日の『転移石』拾うといたで。これで機嫌なおしいや」

「てめえ、道連れにしやがったな! これで昨日の借りはチャラだからな!」

 そう怒鳴りつけても、ジンの奴はヘラヘラと笑うばかりだ。

 まあ、空気を読まずに自分のやりたいことを始めた俺も、割と大概かもしれない。

「そう熱くなるなよ。ここで何だ……会議?が行われているのは、けっこう噂になっているんだぜ?」

 その発言は……大きなざわめきを引き起こした。

 全員が戸惑っている。例えるのであれば……浦安にいるネズミの中の人が、一服している最中に出くわしてしまった感じ。

 さらに全員が、同じ疑問を抱いてしまった。

 仕方がないので、俺が代表して質問するしかない。

「……おい、なんで『ヒャッハー』を付けないんだよ」

「付ける訳ないだろ! 俺だって普通のトーンで話ぐらいするわ!」

 あのモヒカンの甲高い声は、地声ではなかったらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ