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セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


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帰還――2

「ところで……あの『水曜同盟』ってのは何だ? 前々からあったか? 何人か知った顔も見たんだが……」

 沈黙を避けるように会話を続ける。

 ……油断したら深刻すぎる空気になりそうだったからだ。

 『詰め所』の隅にはチャーリーが座り、同じ隊の仲間に励まされるように肩を支えられている。その前でスケッチを広げているのは、似顔絵の特技を持った奴だったか。

 アレックス達は襲われた。

 それは犯人もいるということだ。アレックス達を襲い、そしておそらく……アレックスを殺害したリア充が。

 スクリーンショットやスクリーンムービーを撮り損ねても、誰かを的に掛けることはできる。……βテストで体験済みだ。しかし――

 探し出してどうする?

 似顔絵描きの手配をしたカイは、間違っていない。ボブは混乱に陥っての自決だったらしいが……アレックスは違う。アレックスは殺されたのだ。このまま捨て置けることじゃなかった。

 いや、そうじゃない。せめて自分自身を誤魔化すのは止めよう。

 私怨なのか、義憤なのか……なんと名前を付ければ良いのか判らないが、腸が煮えくり返りそうな思いがある。復讐を求める怒りの炎が。

 確かにアレックスとは、そんなに親しくなかった。

 変わった奴だな、面白そうな奴だな。そんな思いはありつつも、礼儀正しく適度な距離を保ってきた。でもそれは別に避けていたのではなくて、単にきっかけが無かっただけだ。

 ……こんな理由も、根本的には不要なのか。

 仲間が殺された。とても許せそうにない。犯人は必ず探し出す。

 そんな単純で素直な気持ちだろう。俺だってそうだし、この場に居るメンバーも全員が同じ気持ちのはずだ。だが――

 見つかったとして、どう処理する?

 何らかのペナルティを科す? ……俺達の怒りと釣り合う罰なんてあるのか? そんなものがあるとは思えない。となると――

 殺すしかないのか?

 ……これは単なる不具合に決まっている。PKされたアレックスだって、『決定的な結果』になっているとは限らない。

 だから殺すなんて、やり過ぎ?

 いや、PKが『決定的な結果』でないのなら……報復PKもやり過ぎではない。同じく『決定的な結果』ではないからだ。

 そして『決定的な結果』であったのなら……やはり正当な復讐の範疇だろう。同等の報いを与えるだけなのだから。

 だが、その決断は……俺達『RSS騎士団』が復讐者としての狩りを――それこそ文字通りの『人狩り』を始めることに他ならない。

 それは各自の倫理観などの……心の深い部分に関わる問題へとなるはずだ。

 俺からにして、復讐や報復は認められる。ただ、『決定的な結果』を与えるとなると……正直、腰が引けてしまう。

 しかし、そんな弱気なことを――甘えたことを言ってる段階ではないのか?

 それにどのように考えたにせよ……何らかの結論は出さなければ。おそらく、状況は待ってくれない。


「私も知っている奴が何人か……いま同じように伝のある奴が内偵へ。隊長のラインはどうです?」

「俺の方は顔を知っているだけだとか、何回か揉めたとか……その程度だな。あれだよな? あいつら別々のギルドで、つるんでいなかったよな?」

「記録ではそうなってますね。……名前が『水曜同盟』ですから、今日に結成されたのでは?」

 単純すぎる気もしたが……意外と正解かもしれない。

 何かのグループが合併すると、新しい名前が必要となる。例えば『不落の砦』と『聖喪女修道院』なら……『不落の喪女』などだろうか?

 この時、『聖喪』の姉さん方が――

「どうして『不落』が先なの? 納得いかない」

 なんて文句を言うかもしれない。

 べつに姉さん方なら言いそうだとか、名前の後先に優劣があるとかじゃないが……面子に拘るタイプなら言うだろう。

 怖い自由業の方々の結社が『曜日』プラス『組・会』などと、あっさりした名前にするのはそれが理由らしい。これなら揉めなくて済む。名前の理由も結成日の曜日だ。なんの意味も無いだけに、拗れることもない。

「それにしたって……なんで弱小ギルドの奴らばっかり集まってたんだ? あいつら今までのギルド抜けた――」

 そこまで言いかけて気付いた。

 順番が逆かもしれない。偶々、元弱小ギルドの奴らが集まっていたのではなくて……最初から弱小ギルドが集まったんじゃないだろうか?

 『水曜同盟』は質は褒められたものじゃなかったが、とにかく数だけは無視できるものじゃなかった。

 弱小ギルドが個別に……例えば俺達『RSS騎士団』に何か文句を言ったところで、「うるせえ、やんのか?」と脅せば口をつむぐ。

 だが、あれだけの集団にまで成長してしまえば、力ずくで黙らすのは難しい。誰が考えたのか知らないが、悪くないアイデアだ。あの代表者を名乗ったマルクの奴だろうか?

「あー……なるほどー……小さいところの知恵と言うか……そんな感じですかねぇ……」

「だなぁ……あー……あまり刺激しない感じで対処……かな?」

 俺とカイの口調がウンザリしたものとなっていたのは、事実として面倒臭く感じたからだ。

 奴らの意図はハッキリしている。

 『誰か』に文句を言ったりする為に、奴らは固まることにしたのだ。その『誰か』は俺達だけじゃなかろうが……当然に含まれるだろう。それも団体の名称で揉めるような、面倒臭いやつらがだ。

 思わず溜息がでてしまう。そんな奴ら停戦中じゃなければ――こんな不具合の最中でなければ、力で解らせてやるものを。

 いや、こんなことでもなければ、あんな『水曜同盟』なんて結成されないのか。

 しかし、あいつらの存在を無視もできない。何か手を打つべきだが……他にも沢山の厄介事が残っている。正直、どれから手をつけるべきか悩むぐらいだ。

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