表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

141/511

最初の……――3

「単刀直入に伺わせて貰います。今回の一件、『RSS騎士団』は――『RSS』の母体は、無関係なんですよね?」

 率直な俺の質問に、副団長はあんぐりと口を開けてしまっている。

 団長の方は困ったような、笑いを堪えているような……なんとも名付け難い表情になっていた。


 こんな考えはパラノイアじみている……とは言い切れない。

 『RSS騎士団』には母体組織――そう、文字通りに『組織』だ! ――があるのは間違いないし、ある意味で『行動派』な集団なはずだ。

 直近では『S谷センター街・カップル笹盗難事件』が疑わしいし……そもそも『RSS騎士団』成立の段階で疑問がある。

 βテストでギルド移住を成功させた集団は二つしか存在しない。一つは廃人集団である『ヴァルハラ』。もう一つが『RSS騎士団』だ。

 応募倍率数千倍の下馬評もあったβテストで、難なくギルド移住を成し遂げてしまう。

 ……底知れない組織力があるはずだった。

 おそらく違法行為を躊躇しなかった『ヴァルハラ』の奴らですら、一部のメンバーを送り込むのが精一杯。それでも何人かは、β潜入に失敗したとも言っていた。

 実際にはそんな難関だったのに、望むだけのメンバーをβテストに送り込んだ『母体組織』。

 しかも、最初から首脳部だった団長のジェネラル、その副官のサトウさん、副団長のヤマモトさん……この三人はあまりゲームに詳しくない。

 ……本当に『RSS騎士団』は、別のゲームからのギルド移住だったのだろうか?


 場所はギルドホールの団長の執務室に移している。

 カイの提案に甘え、重要な調査を放り投げ……わざわざ人払いもお願いして……まず確認させてもらっている最中だ。

「あー……うん。どうしてその結論に至ったのか……それに興味は尽きないが……タケル少佐の心配は見当はずれだ」

 誤魔化したり、笑い飛ばしたりせず、ジェネラルは真っ直ぐに返答する。

 それで十分に思えた。俺だって確信していた訳じゃない。可能性はある程度の疑念があっただけだ。ただ――

「タ、タケル君? いや……そんな『秘密結社』なんて存在しないんだよ? ま、漫画やアニメじゃないんだから」

 と、ヤマモトさんにも窘められるが……珍しく動揺している。

 ……やっぱり、あるな。何らかのガチな組織として、『母体組織』が。

「いえ、別に俺はどちらでも……今回の件に無関係と判れば。いや、存在しないのだから、無関係に決まってますね」

 そう答えておく。

 現状が『デスゲーム』だったと仮定する。……かなり意味不明な前提だが、とにかく仮定の話だ。

 その場合、必ず主催者が――犯人が存在する。

 『デスゲーム』は色々な評価があるだろうが、何者かの悪意による産物であることだけは疑いようも無い。それも全く理解しあえない、狂人レベルの悪意だ。

 場合によって、俺は……これから『RSS騎士団』の為に奔走するだろう。

 それは構わなかった。ある意味、責任ともいえる。

 だが、その最中に……背中から撃たれるのは避けたい。

 ジェネラルは信用している。ヤマモトさん、サトウさんもだ。でも、その先の……『母体組織』とかいうのは信用できない。


「ま、まあ! そ、それでその話は終わりということで良いね? ……それはそれとして何が起きているんだい、タケル君?」

 話題を変えつつ、ヤマモトさんが質問してくる。

 しかし、聞かれても困ってしまう。

「……判りません。現状、大きな問題点は二つ。ログアウトができないこと。強制終了ができないことです。いま、カイに重要な調査を頼んでますが……そちらもおっつけ、結果がでるでしょう」

「ログアウトできないことと、強制終了?ができないことは……同じじゃないのかね?」

 ジェネラルは不思議そうにしていた。

「同じじゃありません。ソフト操作とハード操作の技術的な違いはありますが……こんな時のための安全装置です。強制終了に影響を与えただけじゃなく、実際にログアウト方法が無い状況になってしまった。もう何日かの営業停止は免れませんし、場合によってはサービス終了もあります」

 ……他人に説明して改めて理解できた。これは大事だ。運営の倒産すら視野に入る。少なくとも、何らかの行政処分は免れられないだろう。

「ふむ。なるほどね。かなりの大事なんだね。まあ、それもそうだよね。ログアウトできない……できないんだよね? それだけでかなり困るものね」

「そうですね。俺なんかは学生ですし、ちょうど夏休みですから多少はアレですけど……あとで強制終了できるか確認した方が良いですよ」

 ヤマモトさんは納得したかのように、軽く肯き返してきた。

「他に判明しているのは、各種メッセージ系統が使用不能なことです。全体メッセージ、ギルドメッセージ……まだ確認していませんが、個人メッセージとパーティメッセージも同じでしょう。それは手が空き次第、すぐに確認します」

 ここまでが既に判明した不具合か。

 しかし、逆を言えばそれだけともいえた。

 突き詰めてしまえば、プレイヤーにとってはログアウトさえできれば問題解決だ。サービスが終了だとか、運営が倒産だとかは……結局はどうにもならない他人事でしかない。

 それにログアウトできないのも、いずれGMから何らかのアナウンスがあるはずだ。このまま放置するのはサービス業として、VR事業者として酷すぎる。

 ただ、未だにGMからのリアクションが無いのは気になった。

 必ず一人や二人は居るはずだ。何をしているのだろう? いや、何かしているが、単に俺には見えない位置にいるだけなんだろうか?

 それどころか現実でも大騒ぎになっているはずだ。そちら方向の様子も、VRにいる俺には判らないが。

 どちらにせよ、何か動きはあるはずだ。

 ……やはり、『デスゲーム』という予想は奇抜すぎるのか?

「それでタケル少佐は、どうするべきだと考えているのかね?」

 考え込んでしまった俺を促すように、ジェネラルが問い質してきた。

「まずは幹部会議……余計な話で貴重な時間を潰してしまいましたが、まずは幹部会議でいくつかの方針を決めるべきです」

「方針? どういうこと? そこまで大袈裟な出来事なのかい?」

「……大袈裟でもないんです。いま思い付くだけで二つの方針が――それぞれが間逆を向いたやり方があります。それになんと言うのか……体制に関する……コンセンサス? そういったものが必要です」

 これが日常の延長線上だったら何もしないで良い。むしろ何かする方が、良くない結果をもたらすだろう。

 だが、万が一……何かとんでもない事件に巻き込まれていたら?

「事後承諾になりますが、情報部のメンバーに集合を掛けて貰ってます。すぐに団員が本部に集まると思いますよ。それが終わる前に……先に幹部会議をしてしまいましょう。そろそろカイの奴も、結果を持って帰ってくるはずです」

 ジェネラルは賛同の意味で肯いてくれたが……ヤマモトさんは不思議そうな顔で俺を見ていた。

 ヤマモトさんにも不審に思われた。俺の態度はおかしいのだろうか? 考え方がずれている?

 ……それでも何とかするしかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ