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セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


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はじまり――4

 何と呼ぶべきか……この世には、非実在犯罪とでも言うべきものがある。

 犯罪の定義は専門家に任せるとして……誰もが知っているのに、一度として起きたことのない事件のことだ。

 いきなり荒唐無稽な例となるが『幼稚園バスジャック』などは、それに当たる。

 ほとんどの日本人は知っているだろう。悪の秘密結社が怪人に命じ、幼稚園の送迎用バスを乗っ取るあれだ。特撮ものでは定番中の定番といえる。

 誰もが子供の頃、こんな夢想をしなかっただろうか?

「いま幼稚園にバスが向かっているけど……突然、銃を持った怖いおじさんが乗り込んできたらどうしよう?」

 恥ずかしながら、俺にはある。顔から火の出る思いだが……幼稚園児の頃だから、もう時効だろう。

 「人間の犯罪者だったら銃を奪って――」「改造人間だったら敵わないな」など、色々と空想していたものだ。

 ……念のために言っておくが、習慣ではない。たまにだ。いかに幼稚園児の頃とはいえ、そこまで酷くはない。だいたい、俺が最も痛かったのは中学二年生の頃で――

 ……話を戻そう。

 実はこの犯罪、一度たりとも行われたことがない。

 世界は広いもので、似たような犯罪は起きたらしいが……少なくとも日本では確認されてないはずだ。

 そもそも悪の秘密結社の段階で、理性が理解を拒む。あれはフィクションの中だけの話。そう理解していると思う。

 しかし、それでも『幼稚園バスジャック』といえば、誰でも知っている犯罪だ。

 説明不要で泥棒だとか、殺人だとか……もっと他のありふれた犯罪と、同じように通じる。違う言葉でいえば、市民権を得てしまっていた。

 この非実在犯罪だが、『幼稚園バスジャック』に限った話ではない。

 似たような事例は数多く存在する。

 例えばコンピューター回線を経由し、軍事システムをクラッキング、そして核ミサイルを発射。……ハリウッド映画などでは、よくある話だ。

 これも一度たりとも実現していないから、非実在犯罪に分類できるだろう。

 現実的過ぎるし……『幼稚園バスジャック』とは色々な差異もあるが、それと話の趣旨は関係ないので割愛する。誰もが知っていて、一度も起きていないのは同じだ。

 逆に実態が全くない――誰にも不可能なのに、名前だけが一人歩きしている非実在犯罪もある。

 有名どころでいえば、サブミナルメッセージなどがそうだ。

 あれは科学的に考えると、全くのデマらしい。論理的に可能どころか、現象すら未確認だ。誰かの空想と、尤もらしい理屈だけの飾りつけ。少なくとも、現在の人類の科学力では実現できない。……その現象が実在するとしてならだが。

 それなのに名前は有名だし、専用の法律すらある。

 形は違うが、やはり非実在犯罪の一種だろう。

 そしてVRMMOに関連した、有名な非実在犯罪がある。

 『デスゲーム』だ。


 『デスゲーム』は、創作でメジャーなジャンルの一つといえる。

 実際はVR技術と全く関係ないし、実現する前から――いや、考案される前から存在していた。

 細かな定義は置くとして、簡単に説明すると以下の三要素か?


・『主催者』によって、『プレイヤー』は集められる

・『プレイヤー』はクリア条件を満たすと、『デスゲーム』から開放される

・ゲームオーバー条件を満たした『プレイヤー』は死ぬ


 『主催者』は誰でもいい。人間でなくても成立する。

 気の狂った人間が、集めたパターンもあるだろう。神さまだとか、悪魔だとかの……不可思議な存在のこともあるかもしれない。飛行機が墜落して、絶海の孤島へ不時着したなどという……意思すら持っていないこともある。

 数え切れないほど多くの『主催者』が考案された。

 とにかく、第三の条件を見たせる存在なら、『主催者』と言えるだろう。

 『プレイヤー』も誰でもいい。

 一人でもいいし、数え切れないほどでも成立する。特殊な条件は何一つ必要ない。ルールを理解できる必要すらないだろう。

 最後の要素が『デスゲーム』を『デスゲーム』たらしめる、最大の要因だ。

 失敗したら――もしくは失敗を繰り返したら、『プレイヤー』は死ぬ。その条件があるので、『プレイヤー』は命懸けでゲームに取り組む。

 小難しい説明では把握しにくいだろうか?

 もっと具体的な例でいうと……テンプレートな『デスゲーム』はこんな感じとなる。


 ある日、貴方は見知らぬ部屋で目が覚める。

 ついさっきまで、平和な日常を過ごしていたはずだ。その記憶はある。しかし、いつ自分が寝たのか、なぜこの場に居るのか、全く記憶にない。

 何もない白い部屋にはポツンと一つだけ、シンプルなテレビが置いてあった。

 ドアは一つだけだったが、鍵が掛かっているようで開かない。

 貴方は監視されていたのか、目覚めたのを見計らったように、モニターへ仮面の男が映し出される。

「『デスゲーム』へようこそ! いま、この建物には貴方を含めて十人の『プレイヤー』がいます。しかし、ここから脱出できるのは、ただ一人だけ! 生き延びたければ、他の『プレイヤー』を抹殺するのです!」

 とんでもない発言に貴方は一瞬、呆然としてしまう。

 なんとか立ち直って画面の男へ質問をするが……何一つ答えられることもなく、テレビのスイッチは切られてしまう。

 どういうことだ?

 何が起きているんだ?

 それに……抹殺?

 貴方が何一つ理解せぬまま、『デスゲーム』の幕は上がった。


 こんな骨子の物語を読んだことはないだろうか?

 細かな違いはこの際、無視して構わない。いま示した例が主流というつもりはないし、唯一の『デスゲーム』でもないだろう。

 ただ、最初に言ったように――

 この『主催者』は人間のようだが、それがファンタジックな存在でも成立する。

 色々と要素の追加は必要となるが……登場人物が目覚めたのは、絶海の孤島でも成立可能だ。

 『プレイヤー』は十人だったが……それが不明なままでも良いだろうし、百人だって構わないだろう。それどころか一人でも良い。その場合は、正体不明の建物からの脱出となるだろうが。

 そして例ではバトルロイヤルの形式だ。

 誰か一人でも『デスゲーム』を始めれば、必然的に命懸けとなる。最後の要素を満たす。

 絶海の孤島に独りぼっち、いや、数人だけでも命懸けだ。もう、生き延びるだけで死と隣りあわせとなるだろう。……こちらは脱出ものと分類されるかもしれない。

 『主催者』に意思があれば、もっと具体的なクリア条件を示されるパターンだってある。

 誰でも似たような物語を聞いたことがあると思う。『デスゲーム』という言葉は知らなくとも、概念だけは認知していたはずだ。

 しかし、この『デスゲーム』……実際に起きたことはない。

 実質的に『デスゲーム』になってしまった事例は、無くもないだろうが……誰かが意図的に『デスゲーム』を計画・実施したことはないはずだ。少なくとも、俺は聞いたことがない。

 これも非実在犯罪といえる。


 その『デスゲーム』なのだが……VRMMOと異常な親和性を持っていた。

 恐ろしく簡単に説明すると――

「ログアウト不可能! ゲームで死ぬと、現実でも死ぬ!」

 これがVRMMOに追加される『物語』だ。

 いまでも根強く人気のある物語だが……なんとVR技術が実用化される前に考案されたらしい。原種をたどると、二十世紀にはあったそうだ。コンピューターRPGより先というから驚く。

 もう、確立した一つのジャンルと言える。

 推理小説を読まないものでも、推理小説は知っているように……興味が無くとも『VRMMOでデスゲーム』の名前を聞いたことぐらいはあるだろう。

 しかし、この『VRMMOでデスゲーム』……いままで一度も発生したことがない。

 誰もが知ってはいるが、一度も起きてない事件。……完全に非実在犯罪だ。


「……な、何が起きているんでしょう? そ、それに……ど、どうします?」

 そう訊ねてくるカイは……引きつった半笑いになっていた。

 珍しく動揺しているようだし、半笑いになるのも理解できる。

 実際に『幼稚園バス』へ見知らぬ男が乗り込んできたら……幼稚園児ですら、カイのような半笑いになるんじゃないだろうか?

 「まさかな……」そんな考えしか思い浮かばない。

 笑い飛ばしたい気持ちと、まるで心臓を握り締められたかのような不安感。それが半分半分になっている。

 確かに妄想したことはあった。

 VRMMOで遊んでいる最中に……謎の『主催者』から、「いまからデスゲームだ」と宣言される。中学生ぐらいの年頃なら、誰だって考えるはずだ。俺だって想像した。

 しかし、そんなのは荒唐無稽だったし……安全な場所で夢想するから楽しいのだ。

 これは……本当に『デスゲーム』なのか? マジものの?

 だとしたら……どうするべきなんだ?

 想像の中で面白がって考えた対策なんて、何の役にも立ちそうもない。全てズレている。『デスゲーム』だったら何て想定は、本物には通じそうもない。

 いや、違う!

 もう、この時点で間違えている。すでに『デスゲーム』として考え始めていた。最初にするべきは、これが本当に『デスゲーム』なのか調べることだ。

 ……それすら間違いか?

 調べる前にやるべきことがある。『デスゲーム』だったにしろ、そうでなかったにしろ……今後の全てに影響することがあった。まずはその確認からだ。

「本部へ戻る。良かったら、ついてきて欲しい」

 カイも真剣な顔で肯き返してくる。

 そして俺達二人は、本部へと向かった。

 もう、完全に夏ですね。

 暑さに弱い作者はヘロヘロです。皆さんはいかがお過ごしでしょうか?

 これが理由ではありませんが、恒例の書き溜め休み一ヶ月を取らさせていただきます。

 ……なんとかモヤっとしない辺りまで進めたかな? 一応、この時点で休みを取るのは予定通りではあります。


 やはり、書き溜めゼロ……どころか、日付変更線と戦う状態は良くなかった!

 プロットからエピソード入れ忘れたりと、相当にやばかったです。今作で二回目なんですよね、落としそうになったの(拾い直しはできるようにしたので、大丈夫だと思います)


 休み中、一つ二つ更新するかもしれませんが、本編というより、こぼれ話になると思います。

 『GMが少ない事情』だとか『パーティ人数が十二人だった理由』など、その辺の裏設定的なことになる……かな? 本編からバッサリ切った内容なので、エッセイみたいになるかもです。

 というわけで、一ヶ月ほど書き溜め休みを頂きます(2014/7/11)

 再開予定は8/11の予定です。

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