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セクロスのできるVRMMO ~正式サービス開始編  作者: curuss


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122/511

イベント――26

「戦場で孤立した団員へ、本陣より通達。戦場で孤立または死亡待機中の者は、街で再編中の部隊へ合流せよ。戦場からの一時撤退も許可する。繰り返す、街で再編部隊へ合流せよ。以後、そこで指揮に従うこと」

 ギルドメッセージからカイの声が聞こえる。

 俺は外交上の配慮から、個別メッセージを全く制限してなかったが……ほとんどパンク状態だし、いちいち相手もしてられない。無いものと思うしかなかった。

 もはや連絡には、ギルドメッセージぐらいしか役に立たない。ギルドメンバーですら唯一の通信方法に配慮して、気軽には使えない状態だ。

 これは戦時用に、なにか上手い対応が必要に思える。女性プレイヤーがやるような……通信遮断リストではなく、通信許可リストの方が上手くいくか?

 普通に話すのですら、もう一苦労だ。下手したら、近くにいても大きな声でないと通じない。というのも、そこいら中で『大声』だらけになっているからだ。


「臨時パーティを組みます! 現在『戦士』二、『盗賊』三、『僧侶』一、『魔法使い』三です! 『僧侶』が足りません! 『僧侶』急募です!」

「うるせえ! メンバー募集なんかに『大声』使うな! 亜梨子ちゃんの声が聞こえねえだろうが!」

「我々、戦争チーム『鷹の団』では新規メンバーを募集――」

「ちょっと待て! その名前は俺らが使ってんだよ!」


 なんて感じだ。文句を言っている方も『大声』を使っているんだから、どっちもどっちではある。

 もちろん、『大声』だけでなく、普通の意味での大声――怒声だとか、悲鳴、どこかの司令官の必死の号令なんかも盛りだくさんだ。それだけじゃなく魔法の爆発音やらなんやらも、引っ切り無しに続いている。

 ……先ほどから散発的に上がりだした花火は、なにを勘違いしてんだ?

 この辺りのマナーやハウスルール――自然発生的にプレイヤー間で決めるルールのことだ。不文律にも近い――は、まだ存在しない。そこも含めて……プレイヤーと一緒に世界も育っていくんだろう。

 ……お祭り好きな世界になる予感がするが。


「……もう無茶苦茶だな。副団長のところどうなってた? シドウさんから連絡は?」

「副団長はいま、撤退戦の最中……と思われます。そのような報告が。シドウさんとは連絡が取れませんから……まだ乱戦の中かと」

 カイのところへ近寄って、状況確認をする。顔を寄せるようにしなければ、話すのも大変だ。

 そのカイは答えながらも、必死に戦場を観察しては……何かを書き取っていた。

「……何やってんだ?」

「何って……参加している団体の名前を控えているんですよ。要るでしょう?」

 有用か無用かで言えば、意味はあるかもしれない。

「止めとけ、止めとけ……いや、記録したけりゃ止めやしないけど……書ききれるのか? それに……そいつら全員とは喧嘩を始められないぜ?」

 これが少数だったのなら敵と認定して、それこそ集団ごとでも『的に掛ける』ところだ。

 だが、そんなことを始めたら……遅かれ早かれ全世界を敵に回すことになる。とてもそんな無謀な戦いは始められなかった。

「でも……しかし、あれは……」

 そう言いながらカイが指し示す陣形の壁沿いには――

「孤高の戦士『闇の剣・シャイニングダーク』……仲間を伴って見参! 今日が年貢の納め時だ! 覚悟しろ、『RSS騎士団』め!」

「お前らのせいで……お前らのせいで俺はミキちゃんとぉ!」

「ちょっ! 待てよ! 二人とも、パーティリーダーの指示に従え!」

 などと大騒ぎしながら攻めてくる奴らの姿があった。

 うん、そうね……こうなると思ってたよ。

 俺達には固有の敵が沢山いるし、またとない機会だ。参戦してくるに決まっていた。

「てめぇこのやろう、シャイニングダークこのやろう!」

 そんなことを言いながら、グーカの奴も応戦している。手に持った槍は、誰かに借りたのだろうか?

「うお、またあいつが来たぞ!」

 そんな壁役の叫びに注意を惹かれ、見てみれば――

「う、うがぁ! 死ね! 死ね! タケル死ね! お前らもみんな死ね!」

 などと涎を垂らさんばかりに――というか、実際に涎を垂らしながら叫んでいる奴がいた。叫びながら斧を滅茶苦茶に壁役に叩きつけているが……確か『モホーク』のデクと呼ばれていた奴か?

 あっちは俺の『熱烈なファン』になったらしい。……面倒臭そうな奴だなぁ。

 この馬鹿騒ぎは色々なファン達が、お目当てのプレイヤーに『思いの丈をぶちまける』いい機会だ。この手の参戦も多いことだろう。

 何の気なしに『不落』『聖喪』同盟の本陣を見てみれば、やはり俺達と同じように『熱烈なファン』の対応に追われている。

 その『熱烈なファン』は一様に特徴的な日焼けをしていた。

 あれは確か……ゼロゼロ年代ファッションと言ったか?

 俺の曾じいさんが若い頃に流行っていたレトロファッションで、『山姥』という妖怪をモチーフにしたもののはずだ。

 その『山姥』達が大挙して襲い掛かっている。

「てめえら乳臭えんだよ!」

「そうだよ、カマトトぶってんじゃねぇ!」

 聞くに堪えない罵詈雑言まで叫ぶが――

「はぁん? ヤリマンビッチが尤もらしいこと言うな!」

「貴女達が男に媚びるから、色々とおかしくなるのよ!」

 言い返す『不落』や『聖喪』も凄い鼻息だ。

 ……女同士のガチ喧嘩って、男同士とは違う意味で怖いな。

 まあ、女性プレイヤーだって人間だ。色々な行き違いや怨恨は生まれる。それを咎めるのは、片手落ちと言うものだろう。

 ただ、女性にはもう少しお淑やかというか、落ち着いた性格の方が――

()えた! いま、あの女の姿が()えたわ! ……わ、私達も出撃しない?」

「ちょっ、姉御? なにを言い出すんですか?」

「……判らせにいくの。最近、また新しいのが増えたから……少しでも減らしておかないと……」

「ま、まずい! 姉御がキレそうだ! みんな、押さえ付けて!」

「は、離して! 私は冷静だから! あの女……あの女だけは許せないの! それに……約束! 約束にも入ってないから!」

「あ、姉御? し、静まって下さい! そ、それに若旦那! 若旦那にも聞こえちゃいますよ?」

「私なら! 私なら倒せるから! タケルさんに教わったアレなら!」

 少し背後が騒がしい気もするが……気のせいに違いない!

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