表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の彼女は猫系女子 《猫系女子シリーズ》  作者: 南条仁
第3シリーズ 『猫系女子のしつけ方』
70/120

第9話:モーニング戦争


「ふわぁ……」


 朝の教室で優那は大きな欠伸を周囲を気にせずしていた。

 眠い目をこすりながら、自分の席に着くと彩華が笑いながら、


「おはよう、優那ちゃん。11度目の遅刻は回避?」

「何とかなった。というか、昨日はお姉ちゃんと姪っ子がわが家に泊まったんだ」


 ちょうど旦那が出張でいなかったのもあり、姉たちが泊まりに来た。

 昨夜は優那にとても懐いている姪っ子を可愛がったりして、楽しい夜を過ごせた。


「さすがに昨日の今日で遅刻なら問題だと思うの」

「心配してくれた姉が泊まってくれて、朝を起こしてくれたのは良いんだが」

「何かあったの? 顔色が悪いよ?」


 優那は頭を抱えながら今朝の辛い出来事を思い出す。

 

「いきなりベッドから引きずりおろされて、服を脱がされた」

「なぬ?」

「この私でも羞恥心くらいある。姉とはいえ、その行動には抗議したい」

「姉から羞恥プレイとか可哀想すぎ」


 姉曰く「それでも起きなかったからしょうがない」らしい。

 まるで自分の娘にするように、朝から姉に身ぐるみはがされて下着姿にされた。

 さらに脱がせかけられたので優那は逃亡したのだ。


「……あの朝の光景は思い出すだけでも悲しい。ぐすっ」

「そりゃ、嫌だね。私もお姉ちゃんに身ぐるみはがされるのは嫌だなぁ」


 起こしてくれた“好意”には感謝するのが、その“行為”には抗議する。

 今朝の事である。

 何度も呼び起こされても返事をしない優那に対して、


『起きなさい、優那ぁ!』


 布団をひっくり返すのような勢いでめくりあげる。

 優那は『ぬわぁ?』と驚いてベッドから転げ落ちる。

 その妹に追い打ちをかけるように、


『ほら、さっさと服を脱いで制服に着替えるの』

『ひっ!?』


 パジャマを強引に脱がされて下着姿にされてしまう。

 あらわになった胸元に視線を向けられる。


『優那、思ったよりも胸が大きくなってきたわね』

『ま、マジマジと見ないでくれ』

『妹の身体の成長っぷりを再確認。ふむ、いい体つきだわ』

『やめてぇ!?』


 姉妹とはいえ、下着をさらすのは恥ずかしく、


『お、起きます。起きるからもうやめて。脱がせないでぇー』

『ホントに?』

『うぅ、朝からひどいめに……』


 否が応でも目が覚める。

 彼女は制服に着替えながら強引な手段を取る姉に文句を言う。


『お姉ちゃん、もっと優しい起こし方って言うのがあるはずだ』

『ないわよ。貴方を起こすのにどれだけ時間がかかったと思うの?』

『……くっ。だ、だけど、こんなのひどすぎる』

『はぁ、千秋君はすごいわね。この状態の優那をよく起こしてあげれるものだわ』


 と、変な意味で感心されてしまった。

 

――千秋も似たような真似をするが、お姉ちゃんほどではなかった。


 その辺は男女の恥じらいを考えてくれている。

 姉の遠慮容赦のなさを思えば、千秋に起こされるのが一番優那にとっては心地の良い朝なのだと思い知るのだった。


「本当に朝から辱めにあってしまった」

「なんだかんだで、優那ちゃんの自業自得です。お姉さんの正義の勝利」

「うるさいなぁ。でも、明日からはプライドを捨て、千秋に朝だけ起こしてもらえるように頼んでみようかと思ってるんだ。恋人との時間を邪魔する気はないが……」

「最初から素直にそうすればよかったのに」

「彼らのプライベートを邪魔する気はないさ」


 だが、これ以上の遅刻が続くのはよろしくない。


――朝だけじゃないんだけどな。


 千秋という存在を欠いて以来、自分の調子が悪い。

 やはり、彼は優那にとって必要な相手だということだ。


――千秋は傍にいるのが当たり前で、居心地のいい存在なんだよ。


 彼がいなければ、優那も心が落ち着かないのをこの数日間で理解した。

 ちょうど千秋が教室にいたので、詳細を話すと、


「最初から俺を頼りにしてくれたらいいんだぞ?」

「……お前を頼ると言うのは私のプライドが許さなかった」

「散々、これまで頼っておいてそう言うかね」


 と、呆れ気味ながらも「最後は俺を頼りにしてくれて嬉しい」と微笑んだ。

 こいつはバカだが優しいからな。

 

「だが、例の恋人はどうする。また抗議されても面倒だ」


 千秋離れをするきっかけにもなった恋人の存在。

 あの嫉妬深そうな恋人にまた口うるさく言われるのは優那としても苦痛だ。

 あの子の純粋さには触れたくないのが本音でもある。

 忘れかけている何かを思い出しそうな、そんな複雑な心境にされるから。


「そっちは……あー、うん。ちょっといろいろとあるから。大丈夫じゃないか」


 言葉を濁しながら、彼は「明日からは任せろ」と優那の肩を叩いた。


「例の彼女と何かあったのだろうか?」


 千秋を頼りにすると言う事。

 優那は結局、彼に対して他の誰よりも信頼しているのだろう。

 かけがえのない幼馴染としてだけではなく、それ以上に――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ