優しい前川さん
僕の彼女、前川さんは優しい人である。
僕の彼女、前川さんは良く人に頼られる。
身長も高く、強く怒ると言う事が無い彼女は良く人に頼られている。
教室ではプリント運びを係でもないのに、手伝っている。
図書室では背の低い生徒の代わりに、高い場所の本を取ってあげている。
他の場所でも彼女は他人に頼られている。
クラスメイトも。
先輩も。
後輩も。
部活の人も。
委員会の人も。
生徒会の人も。
職員も。
教頭も。
校長も。
彼女はありとあらゆる人に頼られていた。
今日も彼女が他人に頼られている姿を見て、僕はある疑念を持つ。
僕は彼女にちゃんと告白して、前川さんに返答を貰って彼女と付き合っている。
けれど、彼女を見ていると僕は不安になってしまう。
何も断らない彼女を見ていると、僕の事を好きでもないのに、彼女が断らない性格だから、僕の告白を断らないでくれた。そして嫌だけれども付き合って貰ってるんじゃないかと。
確かに前川さんに告白しても優しい性格の彼女だからフラれると言う事を想像をしてなかったけれども、なんだか前川さんに悪い事をしていると思ってしまう。
僕は落ち込んでいると、前川さんは気付いてくれたようでこっちに近寄って来る。そして前川さんは僕の耳元に顔を近付けて、小さな声で囁くようにして僕にこっそり耳打ちする。
「……明日、デートしましょ? 私の好きな田中君」
そう言って、僕、田中はそうやって言う前川さんにドギマギするのであった。
新緑会用の作品です。
こう言う彼女、可愛いと思いません?