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4話

この回でしばらく清奈のターンは終了です。次回は皇太子のターン

コンサイス王との出会った次の日から私の部屋に護衛と言う名の監視が付けられるようになった。どうやらあの場に私が居合わせる事になったのもコンサイス王の強い希望があった為、しぶしぶ了解のもと連れて来られたらしい。

この王宮に来てから初めて人間味のある優しい言葉を聞いたと思った。コンサイス王が本当に自分の事を案じてくれているのがあの短いやり取りからでも感じられたのだ。嬉しかった。こちらに来てからみじかに居てくれた神殿の神官や侍女をしてくれていたソフィアさん以外に自分の事を気にしてくれる人がいた。その事実はほんの少し自分の心を軽くしてくれた。


護衛が付いたといっても王宮の隅の一角をわざわざ訪れる者もなし、明らかに残飯よりはマシというレベルの食事を1日2回お喋りな侍女が持ってくるだけ。護衛と言う名の監視の元、行動にも制限がつき、部屋に閉じこもる事が多くなって来た頃、王宮で噂される二つの事柄が耳に入って来た。


一つは最近特に具合の良くない王に代わり、皇太子ルキウスがフィンランディールの新王として近く立つと言う事、そして即位と共に寵姫であられる今宰相の娘ナタリア様が正妃として同時即位する事になるだろう事・・そしてその大きな理由の一つとして彼女がどうやらルキウスのお子を授かったらしいという噂の為だ。それはまだ国民には知らされておらず、王宮内だけの公然の秘密らしいが、またしてもお喋りな侍女が教えてくれた情報だった。


もう本当に潮時だと思った。自分は此処に必要とされていない。馬鹿馬鹿しい道化に過ぎないと。思い返せばあの日、決心して本家から出た日、呼び出しを受け久しぶりに会った実父から言い渡されたのは、30歳も歳の離れたある資産家の後添いになれという命令だった。

「どうせお前なぞ、この結婚でうちの利益になるぐらいしか使い道が無い」

存在価値を全て否定するようなぞんざいな物言いで視線すら合わす事のない父に解っていたとはいえ、少しでも期待した自分が馬鹿みたいで・・・決心して家を出たと言うのに、此処でも自分は必要とされないばかりか、相容れない結婚を受け入れ、そして捨てられるのだ、母の様に・・・。


監視が入る様になってから以前の様に出回る事が難しくなってきたが1日に1回の兵士の交代の時を狙えば王宮を抜け出せるかもしれない。

そう考えていた矢先にチャンスが訪れた。最近はずっと部屋にこもりきりだった為か退屈をした兵士が部屋の外で眠りこけていたのだ。

清奈は町娘が着るような地味で目立たない色のワンピースに着替えるとそろりと部屋から抜け出す。護衛が付く以前に調べてあった脱出用ルートに添って進んでいた矢先、後ろから近づいて来た誰かに睡眠薬の様な物をかがされ、清奈は気を失った。


背中が痛い・・・次に清奈が目覚めた時、其処は牢獄の中だった。元々着ていた洋服は町娘の着るようなそれからの出来事は出来る事なら思い出したくはない。小さく固いパンが一杯の水と一緒に差し入れられていたが、それから2〜3日の間、食事は出されず、焦燥していた時、上の方で慌ただしい音が聞こえた。此処からでられるのかと淡い期待を抱きつつ疲れた体を持ち上げた際、鍵を開け、飛び込んで来た男に腹を蹴られた。


「よくも貴様、ナタリアを!」髪の毛を掴み顔を上げさせられた。

其処には憎しみの炎を燃やした己の夫が居た。

「何・・・・なんで、どうして・・・?」

訳の解らない憎しみをぶつけられ、そして「お前にも同じ痛みを味わらせてやる!」と狂気を目に宿した夫に服を破かれそのまま濡らしてもいない其処に楔を貫かれた。

殴られた痛みと貫かれた痛みに悲鳴を上げ、何度懇願しても許される事の無い一方的な暴力に清奈が疲れ果て昏睡するまでそれは続けられた。


翌日、どうやら昼頃まで気を失っていたらしい・・・あちらこちらに擦り傷や打ち身、そして子宮に強い痛みを覚え昨晩あった出来事を思いだした。空腹で何も胃に入っていないが、こみ上げる胃液に嗚咽を漏らした。

何処か骨でも折れているのか息を吸って吐くだけで鮮烈な痛みに襲われる。そんな中清奈が目覚めたと知って、にやにやと下ひた笑みを浮かべた看守が寄って来て清奈に告げた。

「お前の処罰が決まったぞ。御子などと偽って王や国民を騙した上に、神殿を唆して王宮に反逆させ、挙げ句の果てに事故を装ってナタリア様のお子を殺害した罪で明日の朝一に処刑だ。」


「っ・・どう言う事ですか・・・?ナタリア様の子供を殺害した容疑・・?それに神殿の反逆って・・一体何を言って・・・」


「はっ!今更そんなしおらしい振りをしたところでお前の処分は変わらん。それともその貧相な体を使って殿下に命乞いでもしたのか?まあどちらにしろ明日迄の命だ。せいぜい最後迄御子らしく女神様にでも祈るんだな。」


笑いながら出て行った看守はその後、突如として牢から消えた御子の監視を怠ったとして刑を受ける事になる。



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