3話
う〜ん。。。これも入れといた方がいいとか、この説明も必要などとやってるうちに5話じゃ終わらなさそう・・・・ぶ、文章力が・・・orz
余りの息苦しさに気分転換に王宮の中庭の一角で休んでいた時、ふと人の話し声が聞こえ咄嗟に身を隠した。下手に貴族らに見つかって嫌みを言われるのを避ける為だ。
2人の文官らしき男達が茂みに隠れた清奈に気づく事なく庭園内の石で作られた長椅子へ腰をかけた。盗み聞きするつもりではなかったが、今出て行けば嫌でも彼らの目に留まってしまう。息を押し殺してうずくまる清奈の耳に入ってきたのは彼女を更に追いつめる事実だった。
「なあ、おい、お前あの賭けに乗ったのか?」
「賭けってあれか、今の皇太子妃がいつまで正妃の座に居られるかってやつ?あいつらもつまんねー事やってるよな。どうせ1年経ってあの女が何の力も示せなかったらそれを理由に追い出す予定なんだから賭ける意味なんかないだろうに。」
「え、そうなの?てかさ、俺最近入ったばっかで良く知らねーんだけど、なんであの麗しのナタリア様を差し置いてあんな地味女が正妃の座に居座ってんだか・・・神殿の方は今でもうるさく言って来てるみたいだけど、結局の所本当にあの女が御子かどうかかなり怪しいんだろ?」
「おいおい、めったな事言うなよ。まあ、あれだ。神殿が御子らしき人物の存在を王宮に報告してきた際にどうやら情報が外の国にも漏れたらしくてよ。まったくうちの諜報部門もどうなってんのやら・・・ま、ともかく幾つかの国からうちに打診があったのさ。御子を自国の正妃として譲ってもらいたいってな。まあ、御子の真偽はともかく中にはかなり大国からの申し入れもあって王としても政治的に無視のできない状況だったのさ。」
「そうなのか。だがそれだったら何も皇太子の正妃でなくても良かったんじゃないのか?例えば第二王子はまだ正式な婚約者も居ないだろう?」
「ああ、それがな、さっきも言った通り、打診してきた大国の一つが隣国のスフィルトでしかも、最近王に成ったばかりの火の加護持ちとして有名なコンサイス王の正妃としてかなり本気で押してきたらしい。考えてもみろよ。万が一でも本当にあの女が御子だったとしたら我が国としては貴重な駒を失う事になるからな。うちの国は諸国に比べて女神の加護と我が国が誇る始祖返りと呼ばれる皇太子のおかげで随分魔鬼にやられた土地は少ないが他はかなり戦々恐々としているからな。スフィルトに断りを居れるためにも同等の皇太子の正妃という立場じゃねーと断りきれなかったんだよ。」
「へえ、皇太子もお可哀想に・・。まあでも1年我慢してあのナタリア様が正妃になるんだったら悪い話じゃねえなー。あー羨ましい・・・俺もあんな嫁さん欲しいぜ〜」
「あんな高値の花お前には無理無理。せいぜいあの御子さまもどきがお似合いだって。」軽口を叩きながら去って行く2人の文官を見送った後、清奈はほとんど放心の状態で自室へ戻った。正妃の部屋といっても客間に毛が生えたぐらいの王宮の中心から離れた一角の部屋が清奈に与えられた部屋だった。正妃でありながら護衛の一人も付かず、王宮の角に追いやられている自分が惨めだった。方や話にでてきたナタリア様は行儀見習いという理由ですでに王宮入りをしており、皇太子が厳選した筆頭騎士を初めとした護衛が何人も付き添い、毎日仕事の傍ら訪れる皇太子の寵愛は隠すことも無く、一度窓の外から大勢の付き人に囲まれた二人の様子を見た事があった清奈は嫌でも知っていた。
どうせ捨てられるのならその前に自分が居なくなったとしても誰も気にする事は無い・・そう思い王宮からの脱出を考えて居た時、慌ただしくノックの一つもなく、自分に当てられたお喋りな侍女が入ってきた。
その後数人の侍女が続けて部屋に入ってくると、問答無用で王宮の風呂場へ連れて行かれ、もったいないと愚痴をこぼしながら高価な香油で体を磨かれ、簡略だったが己の結婚式で着たような豪華な衣装を取り付けられる。
何事かと問いただす暇もなく、連れて来られた一室には久しぶりに見る苦い顔をした自分の夫と見た事のない美丈夫が立っていた。連れて来られる際に余計な事はいっさい喋るなと言われてはいたが、一体何故自分が連れて来られたのかとおどおどと名目上の夫の顔色を伺う矢先、目と鼻の先にいた男が突然自分のあごを持ち上げた。
「ふむ、血色が悪いな。しかもなんだ、この細さは。おい、ルキウスお前しっかりこの娘に食べさせているのか?」
「コンサイス王・・、人聞きの悪いことを言わないで下さい。彼女はこの国の正妃として何不自由ない暮らしをさせています。」
「フウン・・そうかぁ?」自分のあごを掴んだままじろじろと眺める男はかなり大きな体躯の持ち主だった。普通ではあり得ないほどの燃えるような赤い髪の毛を短く切りそろえ多少つり上がり気味の褐色の瞳はいたずらげに細められている。
「それよりも、先日貴方へ嫁いだ私の妹はどうですか?」
「うん?それなりにうまくやってるぜ。お前が心配するような事じゃねーよな、夫婦間の事はよ、なあ嬢ちゃん?」にやりと笑って次の瞬間男の逞しい胸の中にすっぽりと囲われる。
「コンサイス王!」
「けちけちすんなや、ルキウス。もともとこの女を欲していたのは俺だぞ?いつの間にかお前の正妃になる予定だったと言う事で断られたが・・・」清奈を胸に抱いたまま宣うコンサイスにルキウスは驚いたように聞き返した。
「貴方がこの娘を?」
「何だ、知らなかったのか?ようルキウス、同じ加護持ちの仲として忠告しといてやるが、お前さん、もっと自分の足下に目を向けた方がいいぜ?そうでないといつか足下を掬われる事になるかもしれん・・」そう言いながら抱きすくめた清奈の腰へと流れる黒髪を梳きつつつと顔を近づけた。
今迄とはうって違った真摯な表情で小さく清奈に囁いた。「何か困った事があれば俺を頼れ」驚いたように顔を上げた清奈を軽くルキウスの方へ押しやるとまたにやりと不敵に笑う。
「まあ、生真面目なルキウスに飽きたらいつでもうちの国に来な。歓迎するぜ」
何を勘違いしたのか自分を睨みつける皇太子ルキウスの視線にいたたまれずに居たが会食の用意が出来たとの事で、コンサイス王が退出し、次いで部屋から退出するように促された清奈の背中に、清奈の後から来たルキウスの容赦ない言葉が突き刺さった。
「何を企んでいるのか知らんが、もしこの国にとって不利な事を仕出かすなら俺は全力をもってお前を潰す。覚えておけ!」
ハイ、皇太子の名前がやっとでてきました。なにやら激しく誤解をしていらっしゃるようですが、隣の国の王様はここの王子様よりもよっぽど色んな事を知ってそうです。次もまだ清奈ターンです。