15 強襲
王都から《ティヒドラ》へと続く街道を途中で外れたシュレンは、うららかな日差しが注ぎ穏やかな陽気に包まれる空気の中を歩いていた。王都での様々な出来事に思いを馳せるシュレンは、街道に行き交う人々の存在に煩わしさを覚え、遠回りの道を選んだ。このあたりは周囲を複数の所領に囲まれ、境界をめぐっての諍いを避けるために、どの領主も干渉を控える入会地となっている。道幅は狭く、時折周辺の集落にすむ村人や狩人たちが利用する以外に用途がないらしく、手入れは行き届いていない。伸び放題の雑草が時折道を覆いつくしているものの、旅人を誤った方角へと導くほどのものではない。
シュレンの歩く道の左手に広がる下り斜面の向こうには、若木がまばらに生い茂る林が広がり、さらにその向こうには黒々とした森が濃い緑に覆われた山々の方へと連なっていた。このまま野宿しながら歩き続ければ、おそらく二日遅れで根城に到着できるだろう。風にそよぐ木々のざわめきと鳥や獣の鳴き声以外は一切聞こえぬ静けさに浸りながら、シュレンは緩やかな足取りで歩んでいた。
ふと、遥か後方で馬の嘶きを聞いたように感じられた。何気なく振り返ったシュレンは目に入る光景に眉を潜めた。
彼の歩いて来た方角から、数騎の騎馬に乗った騎士らしき者達が近づいていた。さらに後方に十数騎。その様子にただならぬ予感を覚えた。隣国同士が争っているとはいえ、この道は戦場へとつながっているわけではない。仮にどこかの所領で異変が起きたとしても、整備された街道を進むのが最も近道であり、馬にも負担は少ない。存在そのものが不自然な彼らに違和感が募る。
遥か前方を歩くシュレンの姿を見咎めるや否や、集団の動きに変化が生じた。何かを言い争うような声がかすかに聞こえ、先頭の集団が速度を上げる。さらにそのうちの二騎が大きく加速する。甲冑に身を包み完全装備で騎乗する騎士たちは馬上槍をしっかりと小脇に抱え、突撃の姿勢で一直線にシュレンとの距離を詰める。彼らの目的がシュレンである事は、もはや疑いようもなかった。
突然の強襲を受けたシュレンは、表情険しく背の剣をすらりと抜き放ち、道の中央に立ちはだかる。迫りくる馬上槍の穂先に明確な殺意が感じ取れた。抜き放った剣を両手持ちで左肩に担ぎ上げ、剣先を後方へと下げる。
猛然と突進する騎馬の前に立ちはだかり、タイミングを計る。長大な馬上槍はその威力こそ絶大であるものの、小回りは利かない。騎馬兵には長槍や斧槍で対処するのが常道である。生憎、今のシュレンの手持ちの武器は老師より譲られた剣と二振の短剣のみだった。
剣を担ぎ上げたまま僅かに腰を落とす。騎乗した騎士の右腕のほんの一瞬の動きを見切って、そのまま右手にかがみこむ。
目標を見失った馬上槍の穂先が空を切り、突然足元にとび込んできた障害物に驚いた騎馬が、僅かに速度を緩めた。
交差する瞬間、閃光が走る。
後ろ脚を踏ん張って剣を振り切ったシュレンに、さらに後続の騎兵の馬上槍が迫った。身体のバランスをわざと崩し、その場にごろりと転がって穂先をかわしたシュレンを置いて、二騎の騎馬が走り抜けて行く。
と、先頭の騎兵の身体に異変が生じた。
馬上槍を取り落としたその身体は半ばから割れ、上半身が崩れ落ちる。血と汚物をふりまいて崩れた上半身に引きずられるように下半身が落下し、ドウと音を立てた。すれ違いざまのシュレンの一撃は、左下方から頑丈な甲冑を易々と切り裂いていた。
己の背に異変を感じたのか、主を失った騎馬が立ち止まって暴れまわる。凄惨なその光景に後続の騎兵は慌てて馬を止め、引き返そうと振り向いた。瞬間、その視界に一筋の閃光が走る。それが、彼がこの世で見た最後の光だった。
後続の騎兵の馬上槍を転がってかわしたシュレンはすぐさま起き上がると、そのまま二騎の騎兵の後を追いかけていた。先頭の騎兵の壮絶な最期を目の当たりにして、動揺する騎兵の隙をついて一気に飛びかかる。振り返った騎兵の首を飛び上がりざまに一瞬にして薙ぎ払った。鉄兜が中の首ごとごろりと地に転がる。
文字通りの『首なし騎士』を背に乗せた騎馬は、おびただしい血に全身を濡らして、駆けて行く。その光景に後続の三騎が慌てて、馬を止めた。
僅かに生まれた空白の時間を利用して、シュレンは肩掛けカバンの中からガントレットを取り出して装着した。籠手を縛る革ひもを口で引きつつ後続の騎士たちの動きから目を離さない。多人数を相手にする以上、頭を守る防具が欲しい所だったが、贅沢は言えない。
馬を止めた三人の騎士たちは馬上槍を捨てて馬を下り、腰の剣を抜いた。さらに彼らに習うかのように後続の騎士達が馬を下りる姿が見える。
小さく舌打ちしたシュレンは、肩掛けカバンを放り捨て、脇道の斜面をゆっくりと歩み降りる。そこそこの金額が入っているそれを手放す事に僅かな躊躇いを覚えたが、背に腹は代えられない。カネは生きていてこそ使えるのである。
剣を抜いた三人は、斜面を歩み降りるシュレンに向かって一直線に距離を詰める。剣の刃と身にまとった甲冑が、陽光に鈍く輝いた。彼らから逃げ出すかのように、シュレンは駆け出す。三人がさらにその後を追った。重量のある甲冑を着込んだその統率が僅かに乱れ、シュレンはその隙を見逃さなかった。
真後ろに迫った先頭の騎士のひざ下を振り向きざまに薙ぎ払う。右足を失ってバランスを崩した騎士は、そのまま斜面を転がった。後続の二人が慌てて立ち止まろうとするが、時すでに遅い。甲冑の重量と斜面を下る勢いが災いして、機敏な対応ができない二人の騎士はシュレンの刃の前に身をさらし、易々と斬り裂かれた。二人目の胴を、三人目の首を、シュレンの剣は鉄の甲冑など存在しないかのように容赦なく絶命させる。その光景に丘の上の後続の騎士たちの歩みが一瞬、止まった。
周囲を見回し、斬り捨てた二人の騎士の絶命を確認すると、落ちていた剣を拾い上げ、さらに斜面を下る。右足をひざ下から失って転げ回る騎士の喉元に、拾い上げた剣を容赦なく突き立てた。僅かな断末魔の後、痙攣して動かなくなる仲間の姿に怒りを覚えたのだろうか。シュレンを追う後続の騎士達の足が早まった。彼らの姿を睨みつけて挑発するシュレンに向かって数本の矢が放たれる。正確さも威力もないそれをあっさりとかわし、彼らに背を向けると再び斜面を駆け下りる。斜面を下りきったシュレンは、そのまま林の中へと逃げ込んだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
まだ幹の細い木々がまばらに立ち並ぶ林の入口で、追手の騎士達は足を止めた。
ひょろひょろと立ち並ぶ木々の間からそこそこに光が差し込む林の中は、灌木や背丈のある雑草がところどころに生い茂り、意外な盲点を作り出していた。弓や長物をその場に捨てて剣を抜くと、視線を合わせた彼らは林へと踏み込んだ。適度な距離を保ちつつ、注意深く歩を進める。
外から見た印象とは異なり、林の中は予想以上に暗い。数人が視界の妨げになる鉄兜を外してその場に放り捨てた。
しんと静まり返った林の中に時折、鳥の鳴き声と羽音が響く。ガサゴソと茂みが音を立てる度に、誰もがはっと立ち止まるが、飛び出してくるのはこの場の主である小動物達だった。
初めのうちこそ、警戒感も露わに茂みや藪に剣を突き刺していた彼らだったが、一向に獲物の気配がない事に業を煮やし、その振る舞いは少しずつ緩慢なものとなっていく。
――奴はとっくに森の奥へと逃げたのではないか?
圧倒的な人数差を誇る完全装備の騎士団に、たかが傭兵風情が単独で正面切って挑む事などありえない。そのような憶測が彼らの戦意を鈍くする。とはいえ、手ぶらで帰るわけにはいかない。心の中に生じる焦りが彼らの視界をさらに狭めていく。
彼らの挙動を注意深く監視する視線に気づくことすらできぬほどに……。
殺気も露わに林に侵入してきた騎士たちの姿を、シュレンは生い茂る背丈の低い灌木の裏に身を潜めながら探っていた。
逃げ込んだ林は思ったよりも暗く、そこそこに身を隠す場所がある事は幸運だった。
派手な金属音を立てて前進する彼らのお陰で、漆黒の甲皮の鎧に身を包んだシュレンはその気配を悟られることなく移動し、彼らの死角に回り込んでいた。足元だけでなく頭上にも気を配らねばならぬ騎士たちは、小動物や大きな巣を作る蜘蛛の巣に集中力を徐々にかき乱され、その動きが緩慢になりつつあった。
暗い林の中で躊躇いがちに前進する彼らの周囲を大きく回り込みその背後をとる。奇襲をかけるべく手ごろな獲物を物色する。
最後尾であることに安心して注意力が散漫になっている者に目を付け、そっと近づき声をかけた。
「おい!」
突然後ろからかけられた声に反射的に振り向いた騎士の喉元に迷わず剣を突き出した。声を出す事もなく痙攣して絶命したその姿とその傍らで剣を握るシュレンを、少し離れた場所に立っていた者が目にして悲鳴を上げた。周囲の者達が一斉に振り向き、予想外の場所でのシュレンの出現に驚愕した。
彼らの動揺とは裏腹に、身を隠しつつ同じようなやり方でもう二、三人ばかり数を減らすつもりだったシュレンは、宛てが外れて舌打ちする。盗賊相手に磨いた技は騎士相手に通用しないという訳ではなく、単に彼らの運が良かったというところだろう。
直ぐ傍らで同僚を斬り捨てられ冷静さを失った騎士の一人が斬りかかる。それを視線を合わせる事もなく一刀のもとに斬り伏せた。
暗がりの林の中に走る不可視の剣閃と、音を立てて二つに崩れる騎士の姿に追手達の眼の色が変わった。
その数全部で十人――。
用心深く徐々に後退しながら彼らの一挙手一投足に注意を払う。地の利を味方につけ、その出鼻を挫く事で、やり過ごしてきたシュレンだったが、甲冑に身を固めた彼らは正規の騎士である。決して侮る事は出来ない。多人数との危険な正面切っての戦闘にシュレンの緊張感が高まってゆく。
太い幹の木を背にして立ち止まる。剣先をだらりと下げる彼の周囲を、長剣を構えた三人が囲んだ。斬りかからんと三人がその視線を合わせた一瞬、シュレンが先に動いた。意表をついたその行動に三人の動きが大きく乱れた。あろうことか、シュレンは己の剣を正面の敵の足元に投げ付ける。柔らかな地面に刃が突き立ち、ブンと気味の悪い音を立てて剣がたわんだ。慌てて視線を戻したその先にシュレンの姿はない。
腰の短剣を引き抜いたシュレンは、己の右側に位置する騎士に襲いかかかっていた。慌てて突き出される剣の刃を短剣で受け止め、巧みにずらして距離を詰める。勢いを失った剣の刃を籠手を嵌めた左手でつかみ、そのまま短剣を面の隙間に突き込んだ。そのまま態勢をくるりと入れ替えて、後方からの攻撃の盾にしつつ、長剣をもぎ取る。痙攣をおこしながら倒れかける仲間の身体を反射的に庇った騎士の頭部に、もぎ取った長剣の刃を両手で握りしめてその柄を叩きつけ、首筋に引っ掛けて引き倒した。鎧の重量で思うように身動きのとれぬ二つの身体に刃を突き刺し串刺しにする。
さらに襲いかかってきた三人目の斬り下ろしを、落ちていた長剣を拾い上げて受け止める。着込んだ鎧の重量もろとも圧し掛からんとするその圧力を、地に片膝をついて一瞬ずらすと、巧みにその身体を転ばせた。前のめりに転んだところに、鎧の隙間から長剣の刃を一息に付きこむ。心臓を捉えたらしく、騎士の身体は痙攣して動かなくなった。
素早く立ちあがったシュレンは、地に突き刺していた己の剣を引き抜いて周囲を見回す。予想よりも包囲の輪は縮まっているものの、足場の悪さと鎧の重量が災いして、追手達は思うように攻撃へと移れぬようだった。
右手で剣の柄を左手で刃の半ばを握りつつ、包囲の輪の最も脆い部分を瞬時に見抜き、シュレンは駆け出した。向かってきたシュレンに慌てて剣を振りかぶる相手に対して、その足元に滑り込みながら下から刃を突きあげる。固いはずの鎧を《ルーツ鋼》の刃が難なく刺し貫く。立ちあがり足を使って剣を引き抜くと、さらに包囲の輪の外へと身を移した。
思うようにシュレンとの距離が詰められず、やられたい放題の現状にいら立ち、互いをののしり合う声が林の中に響き渡る。その声を背で受け止めながら、シュレンは次の戦場へと場所を移した。
背後から迫る金属音で彼我の距離を測りつつ、シュレンは追手を巧みに誘導する。入口近くの幹の細い若木がまばらに生い茂る場所に来たところで、シュレンは初めて振り返った。
一人の騎士が直ぐ背後まで迫っていた。振り向きざまのシュレンの横なぎの一閃に反応できずにあっさりと胴を割られて崩れ落ちる。相変わらず金属製の鎧をものともしないその圧倒的な斬れ味に、恍惚感を覚えた。これならばもしかして、と一つの可能性に思い至る。
さらに追手の一人が迫った。
用心深い性格なのか立木を挟んでシュレンと向かい合う。後方から近づく仲間達と連携を取るつもりなのか、積極的に仕掛けようとはしない。誘いをかけるかのようにだらりと剣先を下ろしたシュレンは無造作にその間合いを詰めた。その誘いにほんの一瞬躊躇したものの、手柄を立てたいという本能の誘惑には抗えなかったらしい。腕の太さ程度の幹を盾にして長剣を突き出した。突き出された長剣の刃をかわすと同時に、シュレンの剣が再び疾風と化す。
全てを叩きつけるかのようなシュレンの《憤撃》が、若木の幹ごと追手の胴を斜めに斬り裂いた。ほとんど手ごたえなしに剣を振り抜いたシュレンの眼前で、幹を立ち割られた若木が音を立てて倒れた。生白い切断面が露わな立木の向こうで、驚愕の表情を浮かべた追手はそのままその場に崩れ落ちる。予想通りとはいえ、常軌を逸した己が技の威力に、当の本人までもが言葉を失った。
立木ごと斬り捨てられた仲間の姿に、迫っていた残る五人の足が止まった。こちらからは良く見えないが、鉄兜の奥には先ほど斬られた者と同様の驚愕の表情があるのだろう。
対してシュレンは軽い興奮状態にあった。
普段ならば冷静に対処する所であるが、己が剣と技の威力の凄まじさに酔いしれ、湧きあがる高揚感に支配されていた。足を止めて攻めあぐねる者達をあざ笑うかのように挑発する。
「王国騎士ってのは、どいつもこいつも大した事ねえな。この程度の腕で大きな顔ができるんだから、楽な商売だ。飼い主の陛下もお気の毒に……」
その言葉に彼らの怒りのボルテージが跳ね上がる。
「黙れ、反逆者め! 貴様ごとき卑劣な輩、今すぐ、剣の錆にしてくれる!」
シュレンは一瞬眉を潜めた。
帰還前ならばいざ知らず、今のシュレンはかつての汚名を晴らし、非公式とはいえ国王自らに謝意をしめされた身である。三年前ならいざ知らず、『反逆者』などという不名誉な称号を今更ながらに押し付けられるいわれはない。
では、何故、彼らはシュレンを襲ったのか――?
その動機を確かめたかったが、眼前の敵を相手にそのような余裕はない。シュレンの挑発に答えるかのように彼らは一斉に襲いかかった。その身のこなしから誰もがそこそこの使い手と見受けられるものの、今のシュレンの敵ではなかった。
長剣を大きく振りかぶり《憤撃》で斬りかかる騎士達。まばらに生い茂る若木の存在が、彼らの剣技の幅を狭めていた。突くか斬り下ろすかしか出来ぬ彼らに対して、シュレンの圧倒的な剣閃が縦横無尽に襲いかかる。油脂に熱したナイフを差し込むかの如く、鉄の鎧をなんなく斬り裂かれ、瞬く間に四人が地に倒れた。剣閃に巻き込まれ、幹を断ち割られた二本の若木がその躯の上に倒れていく。
残る最後の一人と向かい合う。
鉄兜の奥の表情は見えぬものの、全身から怯えの色が湧きあがっている。斬りかかれば確実に反撃され、斬り捨てられる――彼我の圧倒的な実力差を肌で感じ取るだけの力量はあるらしい。
傭兵やならず者たちならば、逃げる事を考える場面である。だが、王国騎士の誇りがその選択を拒んだ。おめおめとたった一人で逃げかえれば、彼のその後は暗澹とする。そのような世界で生きる彼に残された道は、前進しての死だった。
絶望的な未来のみを前にして、彼は何を考えているのだろうか? 明日の暮らしもままならぬ下々が羨む華やかな特権階級にも、彼らなりの理不尽さが付きまとう。決して逃げられぬそれと向き合うために、眼前に立つ騎士には覚悟が必要だった。
ようやくそれが決まったのだろう。裂帛の気合とともに、最後の騎士はシュレンに斬りかかった。
振り下ろされる剣の刃が弾き飛び、次いで鉄兜が宙を舞う。血の匂いが再び当たり一面に広がった。
首を失った騎士の身体は、斬りかかった勢いのまま数歩歩むと音を立てて倒れ伏す。それを最後に林の中に静寂が戻った。
周囲に己以外の気配がない事を確認すると、シュレンは大きく息をつき、そのまますぐ傍らの木の幹に背を預けた。幾人もの血に染まった剣を手にしたまま、周囲を見回す。横たわる鎧姿のいくつもの躯が目に映る。
一時の熱気に染まった後のその光景は、どこか祭りの後のそれを思い起こさせる。三年前に見慣れたその光景の中で得られたのは、勝利の喜びなどではなく、ただ生き延びたという安堵のみである。
乱れた呼吸を整え、身体の熱が引いていくとシュレンは小さな渇きを覚えた。途中、放り捨てたカバンの中にあった水筒の存在を思い出し、背を起こす。数歩歩いて、少なくない金額が入っていた事をも思い出して苦笑した。眩しい光が差し込む入口に向かって、再び歩み出す。
彼の足音が消え、無人となった林はようやく静けさを取り戻した。突然の侵入者達に追い立てられた主である小さな生き物達は、おそるおそる顔を出して身の安全を確かめると、その生活の場へと戻っていった。
2013/04/29 初稿




