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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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いろんな人がいろんなところで

首になった聖女

掲載日:2026/02/24

「ハニー王子様が呼んでます」


 珍しくわたしに声がかかった。普段は無視してるのに。


 まぁこれでも婚約者だから、たまには顔でも見る気になったのかな?


 部屋に入ると、新人聖女のエリザさんも一緒だった。


 この人はたいして役に立っていないけど、実家の侯爵家が寄付してくれるとかで、わたしに次ぐ地位についた。


 そこに神殿長が入って来た。


「本日をもって、聖女ミリアムの任を解く」


 へ? 解く?え?いいの?それなら、もしかして?


 はい、もしかしてました。


「婚約も破棄する。わたしはこのエリザをあたらしい婚約者にする。おまえのように役立たずの女は出ていけ」


 その言葉と同時に神殿長の後ろに控えていた祭司たちが動き、わたしの聖衣を脱がした。


 下に着ているのは、粗末な普段着。婚約者にこんな格好しかさせられない甲斐性なし。


 筆頭聖女にこんな格好をさせている、どけち神殿。


「かしこまりました。それでは失礼します」


「あぁ、待て。これは慈悲だ」


 と言うと、ハニー王子は後ろの護衛に顎で合図をした。


 護衛は、わたしに金貨を三枚差し出した。


 十歳の時から七年。朝から晩まで、ときには晩から朝まで働いて金貨三枚。


 甲斐性なしに、どけちがプラスされた。


 でも、お金はお金。ありがたく受け取ると、そのまま神殿を出た。


 おいしそうな串焼きを売ってるおじさんに奴隷を売っている場所を教えて貰った。


 田舎で育ってそのまま神殿に入ったわたしは、護衛が必要だ。


 奴隷なら、絶対服従だと聞いているから、安心だ。


 向かった先は、王都の裏通り。道に迷ったが通りがかりの人が案内してくれた。


 赤の他人でもこんなに親切なのに、神殿のやつらは……



「予算はいくらだ?」


 奴隷商人はわたしをじろじろ見ながら聞いた。


 案内してくれた人は、中までついて来てくれて


「お金を見せて相談すればいいよ」


 と教えてくれた。


 それで金貨三枚を見せると


「この金額で買えるのは、あそこだ」


 行ってみると、男が一人捨てられていた。


「捨てたの?」と聞くと


「……いや、安いから」


 確かに安いと思う。


 だって、手は左しかないし、両足も潰れているし、目は見えてるかな?


「そしたらこれを下さい」


「手続き費用はおまけするよ」


「良かったね」と案内してくれたおじさんが言った。


 ほっとした。奴隷が手に入った。


 手続きが済んだ。


「この奴隷はお嬢ちゃんのものだよ。名前は適当につけたらいい」


「ありがとう」


 わたしは奴隷の胸に手を当てて、ゆっくりと魔力を流した。


 奴隷の意識が戻った。安心させるために話しかける。


「わたしがあたらしい主人よ。護衛用にあなたを買いました。わたしは、優しいから安心してね」


「は?」


 なおも魔力を流す。先に足から治す。歩いて貰わないと困るからね。


「どう? 痛くない? 痛かったらごめんね。でも大丈夫だから」


「あぁ、どうも」


 足は治った。魔力はまだある。思ってたより魔力が増えてるな。あれだけやってればね。


「あら、あなた獣人なのね。耳が出て来た」


「あ?」


「とりあえず、こんな所か……ア――?」


 いきなり男は、わたしを担ぐと商人の後ろにいた護衛から剣を奪った。


 それを振るって親切なおじさん、商人、護衛をなぎ倒した。


「なに」


「口を閉じろ、舌を噛むぞ。ご主人」


「むーーー」


 彼はあっと言う間に奴隷商の建物から外に出るとわたしを担いだまま走った。



 しばらく走ると奴隷はわたしを降ろした。


「なんてことを、みんな親切に」


「黙れ、先に説明する。いいか、お前は騙されて奴隷になる所だった。その上凄い力を見せた。いくらでも高く売れる。だから逃げ出した。この王都からも、逃げたほうがいい。金は持ってるか?」


「ううん、全部使ったから」


「ちっ」


「値切れば良かったかな」


「……」


「ご主人様、しばらく俺の判断で動いていいか?」


「護衛としての判断?」


「そうだ」


「まず、髪を売って金を作ろう。ご主人様は冒険者ギルドで登録してくれ、テイマーと書け。余分な事は書くな。いや、受け付けに書いて貰ったほうがいい。ご主人様、名前は」


「ミリアム」


「リアムで登録だ」


「あなたの名前は?」


「ジーク」


 ジークは答えにくそうに答えた。


 それから


「まず、髪を売ろうか」


 わたしの手を引いて歩き出した。



 髪が短くなると頭が軽い。ずっとこのままでいいみたい。


 それから、古着屋でわたしのローブとカバンを買った。


 ジークは服、いらないって。


 干し肉を買ってカバンに入れた。



 それから、ジークはこう言った。


「黙って聞け、声を出すな。ここから別行動だ。一緒だと追っ手に見つかる。だから別々に町を出る。俺は今から外に出る。登録が終わったら外に出て来い。南門がそこだ。この門を出たら右に行け。右手はどっちだ?」


 わたしは素直に右手を上げた。


「よし」


 と偉そうに言うとわたしの奴隷はさっさと歩いて行った。


 わたしは、冒険者ギルドで登録した。


「登録ですか? 字が書けますか?」


 黙って首を横に振った。


「リアム。テイマーですね? どこにいますか?」


「門の外で待ってる」


「名前は?」


「ジーク」


 わかりました。次の町でジークを登録して下さい」


 黙って首を縦に振った。


 ギルドカードを貰ってギルドを出た。



 南門を出て右に歩いた。しばらく歩くと


「ご主人様」


 ジークが待っていた。


 街道を外れてしばらく歩くとジークは立ち止まった。


「これから獣化する。声を出すな。俺に乗ってくれ。俺の足なら夕方、サウスタウンに着く」


 ジークの姿が歪むと、そこには茶色の大きな犬がいた。


「オォ――」


 夢中で撫でてしまった。


「ウォン」と言われてジークに乗った。


 わたしが走るより少し速いくらいの速度でジークは走る。けっこう大丈夫だ。


 むしろ、揺れが心地いい。うとうとしたようだ。気が付いたら、門の前で人に囲まれていた。



「大きいね」「寝てるわ」「ほんと、契約獣のほうが賢そう」


 はっと起きると、ジークから降りた。


 門を入る列に並んだ。


「これは契約獣だな」


 首縦。


「登録は?」


 首横。


「ギルドに行って登録をして」


 首縦。


「この子の登録をお願いします」


 ギルドに入ると、ギョっとした顔で見られたので、慌てて大声でそう言った。


 窓口でギルドカードを出した。


「はい、名前は?」


「リアム」


「違う、違う、契約獣の名前だ」


「ジーク」


「種類は?」


 首を横に振った。


「プレーリーウルフじゃないか?」

と周りの人が言った。


「そうかな、普通より大きいが、そうかな?」

と話をしてる。


「それでは、プレーリーウルフで、登録します」

 と窓口の人は登録をすませたギルドカードを返してくれた。


「坊主、これがいたんじゃ、宿は断られる。ギルドの前に広場で寝たらいいぞ」


「ありがとう」


 その晩は、広場で過ごした。けっこうここで寝てる人がいた。


 わたしは、ジークのお腹に寄りかかって、尻尾で包まれて眠りについた。


 これが、わたしとジークの旅の始まりだ。























いつも読んでいただきありがとうございます!


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