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襲うもの、襲われるもの  作者: あおぞら えす


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リズの思惑


 呼吸が乱れ、闇に紛れているのに、不安と恐怖が次々と襲ってくる。


 ーこの星はどうなっている?!


 宇宙船に戻ることはもう出来ない。あの生き物は、仲間の大半の息の根を止められた。逃げた仲間と連絡を取ろうとしたが、この星は広大な砂漠が多い。枯れた水、建物は見当たらず、植物もない。生物が枯れ果てた星に、隠れ住む場所は数少ない。

 生きている者がいれば、隠れ住める場所にやってくるはずなのだ。


 闇が深まってきた。人が、誰か人が、いてくれたら。彼は、震える足でゆっくりと立ち上がった。食事はもうずいぶん前に、宇宙船で食べたもの。足はもうふらふらだった。お腹が空いている。

 夜は寒さが酷くて、歩いて移動したとして、寒さで死ぬだろう。化け物に見つかるか、空腹で餓死して死ぬだろう。宇宙船に戻ったとして、果たしてこの星から逃げ出せるのか。


 ー宇宙船への道も果てしなく、それまでに死ぬ。宇宙船は、動かせる可能性だって・・・


 エネルギー切れが起きている宇宙船に、エネルギーを供給するには人間を使わなければならない。つまり、人が必要。生きている人間が必要だ。


 ー仲間を見つけて、エネルギーを・・・


 思考が働かなくなった人間。彼は猛烈にお腹を空かせている。そして、自分が帰還するために必要な仲間を求めていた。

 肉体を引きずるように歩を進めている。化け物から恐怖は徐々に薄れていった。


 ー捕食・・・、食べるもの、仲間・・・


 彼が持っていた最後の理性も消えていく。彼は、今、食事と仲間を求めている。頭にはもう、人間的思考はない。

 ふらふらと闇夜の砂漠を歩いた。吹く風が突然静まりかえる。彼は、それすら気づくこともない。獣はそんな彼を襲わない。遠くから、ゆっくりと追いかけていた。獣は彼が辿り着く末路を、静かに見つめていた。





 ーリズ・・・


 獣の中で生きる飼い主の声。獣、リズが知性を取り戻し、他の獣と別の思考を持った。自らの出自を脳裏に浮かべる。


 生まれはこの星がまだ人間が大勢いた頃。カプセルから目覚めた。人間達が、痛いことをするのはよくあること。痛みのある鞭で酷く打たれ、気づけば、人間を殺していた。何が原因だったのか。あのとき、白衣を着た男が呟いていた。『化け物』と。そしてついで『視線が武器だ』と叫んでいた。その時にはすでに幾人もの人間の遺体が転がっていた。

 そのあとは、身体が勝手に動いて、逃げていた。自分と同じような生物がいるなんて、知らなかった。だが、それと同時に、自分にはさらに過去があった。あのカプセルに入る前の、過去が。


 この星に近い、数光年先にある水と森が多くある、星。実験前の星。まだ人間がいない星。実験のために砂漠が広がる星から数人の科学者がやってきた。科学者達が欲しているサンプル体を採っていた。一人の学者が獣を捕獲した。手足が長く、耳が垂れ下がっている。頭は小さく、胴体は手足に比べて小さい。猿のように知恵もあった。だが、目は四つあり、頭に角のようなものがあるために、学者は気味の悪い生物として『猿四眼』と命名していた。彼らを研究対象として、自分たちの星に送った。

 リズは、その一体だ。一時的に故郷の記憶を失い、人間を恐れていた。記憶が戻ったリズは、仲間である猿四眼とは距離をとるようになった。


 リズは自らの持っている『瞳』が、飼い主を殺したことに気がついた。この『瞳』はこの星だと、違う力を持ってしまう。人間を殺めるのだ。理由は分からない。けれど、飼い主は何度かリズを見たし、リズも飼い主を見た。しかし、殺めるような事が起きなかった。

 リズは死が迫っている人間を追うことで、自分がどのような生き物なのか探ろうとしていた。それをよく思わない猿四眼がリズを監視している。リズもそれを承知した上で、生き残りをかけて、人間を追っていた。



 男はふらふらと歩いた。目の前に崖があることに、気がついていない。彼の目の前には娘が立っていた。微笑んでいる。彼は娘をみて発狂した。

「うあぁぁぁぁあああぁあ・・・」

誰もいない空中を歩く娘に向かって、駆けだしていた。頭の中に、できたての食事が並んでいた。妻が娘と一緒に彼を呼んでいる。

 男は数千メートル崖下に落ちていった。


 ーリズ・・・

 リズは落ちていった男の先をゆっくりと見下ろした。赤いトマトが、落ちた先にみえた。死臭が漂う。リズは考えた。彼らが乗っていた船で、故郷に帰れないか、と。


 風が吹き始めた。砂嵐がもうすぐ起きる。この星に人間はまだ、いる。彼らを使い、船を動かそう。リズの瞳は、人間の放つ僅かな明滅を、探し、四肢をを動かした。



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