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帰郷

 雪国特有の、あの体の芯に抜けるような寂しさが、私の胸を堪らなく切なく締めつける、そんな土地ならではの何とも物悲しい風が吹いている。

 あの時感じていたあの風が、今この場所に吹いているその風が、あの場所に帰って来たという実感として、私を瞬時にあの時に連れて行く――。


「・・・」

 私は、あの町に立っていた。もう二度と、もう二度と帰らないと誓ったはずの場所――。もう二度と、絶対に戻らないと誓った場所――。私が憎み、そして、憎み切った町――。ありとあらゆる耐えきれない極限までの屈辱と恥辱を受けた場所――。憎しみと悲しみしかない場所――。


 もう何年になるのかはっきり分からないほどに時間の過ぎてしまった故郷との決別の間に失った感覚に戸惑いながら、私はその故郷の昔通い慣れた変わり果てた駅に降り立っていた。

 電車から降り立つと同時に私の心臓は自然と鼓動を早め、痺れたような恐怖と共に、硬直に似た緊張が全身を覆った。

 私は何に怯えているのだろうか。すべてを失った現実に対面することなのか、それとも、過去に私を傷つけた人間たちに出会ってしまうことだろうか。恐怖なのか。後ろめたさなのか。不安なのか。自責の念なのか、私の頭は混乱し、自然と震える膝をどうする事もできなかった。


「・・・」

 埋められない時間と、壊れてしまった故郷の町の今に、私はただ立ち尽くす。何が奪われ、何を失ったのかさえこの時、混乱した私の頭には、何も浮かびはしなかった。


 変わり果てた町並み。私の記憶の中にある故郷とはまったく形の変わった廃墟のような別の町がそこにはあった。

「・・・」 

 私は記憶の中にある町を手探りで探しながら、現前と目の前にあるこの町の姿と照らし合わせ、すり合わせるように何度も何度も辺り一帯を見渡した。


「・・・」

 私の知っている町は、消えてなくなっていた。


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