4ー1 秦山電子機器製作所(株)の設立
2040年10月1日、待望の新会社を設立した。
会社名は、『秦山電子機器製作所(株)』とし、英語名では、『Hatayama Electronic Manufacturing Facility Co., Ltd.』にして、略称は『秦山電子』としたよ。
資本金は、運転資金を含めて4億5千万円で、借金が概ね2億円ほどあるけれど、そっちは俺個人の負債にしている。
主として、親族から会社創設のお祝いで花輪を送るよと言われたが、受付に置くランの花にしてもらったよ。
事業用地が目抜き通りじゃないし、オフィス街でもないから通行人やご近所さんに目立っても仕方が無いんだ。
従って、ランの花は、ロビーの受付に置くことにした。
起業時の社員は、経理担当は、俺の従妹の秦山芽衣22歳に頑張ってもらう。
将来的には上司に元銀行マンを役職(部長又は課長)に据える予定にしているよ。
事務員としては、児島香蓮23歳に頑張ってもらう。
こちらも将来的には元社団法人の部長職辺りを経験した者を役職(部長又は課長)に据えるつもりでいる。
守衛兼受付には、元陸上自衛隊隊員の経験もある元サラリーマンの中岡浩二65歳と、民間会社の課長職を経験している佐藤真一67歳の二人で、いずれもこの8月には執事学校でバトラーとしての短期講習を受けて貰った。
システムエンジニアは、一条欣也35歳で、T工業大学卒なんだが、勤務先がブラックでそこから抜け出したいとの希望を黄さんたちがキャッチして、俺が直当たりでゲットしてきたよ。
同じく、プログラマーでは、能代聡25歳で、この人はK大学卒業生なんで俺の先輩にあたるんだが、ゲームオタクであると同時にホワイトハッカーでもある。
ネクラと云うのか碌に仕事もしないでアパートに籠っていたのを俺が引っ張り出したんだ。
尤もここでも黄さんのお仲間が協力してくれて、ネクラを多少なりともネアカに改善してくれたので引き込めたという裏事情もある。
もう一人、S大学卒業生の三宅凛26歳もプルグラマーとして採用したんだが、彼女の場合は、とある外資系有名会社に勤務していたんだけれど、上司のパワハラに遭って、当該会社を辞めて都内でアルバイトをしていたところをキャッチした。
彼ら三人にはN駅前の2DKのアパートを宿舎として提供したよ。
今後の採用予定は、来年4月までに、受付女性2名、経理管理職1名、総務管理職1名、工房作業員4名程度、SE/プログラム部門2名乃至3名程度を予定しているけれど、業績如何では変更が有るかもしれないな。
今後、企業の活動で大事なのは、ウチと提携と言うか協力を惜しまない企業が必要なことなのかな?
うちが供給する製品を使って、売れる品を造れる会社が有れば共存できるわけだ。
一応、俺の縁故を頼って、大学の先輩等に新型MPUの検証実験をお願いしたので、起業前から国内ではF社、N-1社、E社、L社-Japanと、国外の企業ではA-2社とD社に大いに関りがあった。
因みに、C国もD国も異界から湧き出たモンスターによって壊滅していたから、それらに本社があったもののうち、わずかに外国に工場等が存在する支社がそのまま存続している状況であり、L社の本社もC国にあったが、日本国内に生産工場が有ったので支社が独立してL社-Japan として存続しているんだ。
起業と同時にインターネットで企業情報と製品のプレンテーションを実施したところ、国内外から多数の問い合わせが来たな。
国内では前述の関係先とは別に、H社、S社、P社などの家電メーカー、海外では米国のM社、A-3社、N-2社などを含む大手電子機器メーカーからの問い合わせが主なんだが、MPUの大手であるI社とA社からも問い合わせがあったよ。
一応、俺の会社と、I社、A社はライバル関係になるはずなんだけれど、ウチと提携したいってか?
今の段階で提携したら、絶対にウチの会社が乗っ取られるから、そんな話には乗らないよ。
俺の会社は上場していないから、株の買占めはできないようにしているんで、その点は大丈夫なんだが、別方面で色々と締め付けが有るかもしれないね。
製造にかかわる素材は心配しなくても何処にでもあるから大丈夫だし、提携銀行も一応大手のM―2銀行をメインバンクして、サブにM-3銀行と、スイスのU銀行にしているから、余程の事でなければ大丈夫だろうと思っているよ。
銀行融資なんかが何らかの形で抑えられてもすぐには困らない。
銀行の融資枠は俺個人になっているから、仮に行き詰まっても会社の不渡りにはならないんだ。
いずれにしろ、余程酷いやり方で来るようなら公正取引委員会等に提訴するのかな?
因みにめぼしい国には大抵公正取引委員会と同様の政府機関が存在するから、証拠さえ提示できれば提訴は簡単だ。
まぁ、各国のそうした機関がちゃんと機能してくれれば良いのだけれど、もしそうでなければネットに情報公開して関連する悪辣な企業のイメージ戦略を壊すことになるだろうな。
そうなれば全面戦争にもなりかねないけれどね。
そんな場合は、黄さんのお仲間たちが俺の活動を後援してくれることになっているから頼もしいよね。
既に黄さん達の仲間がライバルになりそうな会社の監視体制に入っているようだから、仮に秦山電子を敵視する企業が有っても大手ならばすぐに裏の情報を仕入れられるし証拠も朝得られるみたいだ。
まぁ、必要とあれば、俺も盗人宜しく当該会社の中枢に入って証拠を集めることも可能だよな。
黄さん曰く、要すれば担当者や幹部責任者の意識をそれとなく操れるんだそうだ。
ある意味でとっても危険なことなんだが、黄さんたちの動きが単なる阻止活動程度で済めばそれでもよいのだろうね。
但し、黄さん曰く、それでも対象とする会社が締め付けや嫌がらせを止めなければ自滅させるとまで言っているからちょっと危ないのかな?
正直なところを言えば、俺は黄さん達に意見は言えるし、お願いもできるけれど、彼らを統べる者じゃないからね。
彼らが自発的に動くことまでは止めることができないんだ。
いずれにしろ、会社は取り敢えず動き出したよ。
俺は営業マンに徹して、各社に売り込みを始めたよ。
因みに1年程前に提供した試作品とは性能が異なっているからな。
前回の試作品は、そもそも大学の研究室にあった試作装置で造ったものだから、俺の能力で作ったMPUの半分程度の性能だったけれど、製造ラインの度重なる改造によりほぼ85%にまで性能を引き上げられたから、従来のI社やA社の製品に比べると、64ビット仕様でも8倍から10倍程度の能力を発揮するはずなんだ。
因みに開発を始めているウチの256ビット仕様の独自OSを使えば、更なる高性能を引き出せることになるだろう。
OS自体の開発は、ウチのプログラマーの能力如何のところもあるけれど、半年から1年ほどはかかるかもしれないとみているよ。
取り敢えずは、64ビットの従来OSで作動可能な高性能MPU の『HE・Cube-1』として販売を開始することにしたよ。
お値段は一個当たりで4万5千円とした。
名称を『HE・Cube-1』としたのは、このMPUが従来品と比べると厚みが大きく、立方体に近い形状なのでCubeとしたんだ。
その高性能に比べたら随分と安い値段なので、価格破壊と言われそうだが、この価格で別にウチが困ることは無いよ。
勿論、独禁法に触れるようなことはしていないぜ。
限界価格で云うならば、1万円以下にでもできるんだが、流石にそれではハードウェア業界が困りそうなんで、敢えて高値を設定しているんだ。
実のところ、製品自体は、起業前に概ね3か月で20万個を生産して、既に工房内に設置した倉庫に収納してある。
1ロット(千個当たり)の定価で言えば4500万円(消費税抜き)になるわけだけれど、実際の製造費用は、初期投資やら減価償却分を除けば、20万個分で実質3000万円程だったからね。
これを千個あたりに換算すれば200分の一の15万円、一個当たりでは150円になるのかな?
でも実際には、さらに人件費やら送料なんかも加算されるから、流石に千円では無理なので1万円位が妥当だろうと思う。
それを四倍以上にまで膨らませているんだから、後でうちの収支決算を見たら税務署がびっくりするはずだ。
でも決して法外なぼろもうけじゃない。
相応に苦労して作った製品だからこそ、相応の価値が有る。
I社やA社の製品に比べたら絶対に顧客重視の値段設定なんだ。
こいつを使って、どんな製品をいくらで売るのかは知らないよ。
それは、ウチが製品を提供する各社にお任せだ。
それぞれに工夫して値段を決めれば良いと考えている。
後はそれぞれに付加価値をつけて、市場原理という奴が働くだろう。
因みに20万個のうち半分が売れたら、総額で45億円になるんだが、その売れ行き状態で製造設備を再稼働しなければならないんだが、現時点では休止状態だよ。
そのために俺の方はせっせと国内を主体にせっせと営業のために走り回っているんだが、H県自体が中央から離れているから地理的には余り良くは無いよね。
どうしても関東あたりへの出張が多くなり、米国等海外への出張はやめて、取り敢えず国内にある支社への売り込みに限っている。
将来的に必要が有れば、首都圏に事務所を構えることも考えるつもりだよ。
そうなれば、米国や欧州を含めて海外への営業も強化を図ることにするが、そのためには人を集めて育てなければならんよな。
取り敢えず起業したばかりなので、今は慌てずにじっくりと進めるのが肝要だ。
とは言いつつも、食いつきは結構凄まじいな。
僅かに二週間で国内の十数社から試し買いのように千個単位での発注が有り、2万4千個が売れちゃった。
おそらくは、実際に試行錯誤で各種機器に取り込んでみるつもりの先行投資かと思うんだが、台湾の数社からも受注があり、こっちは1万2千個が売れた。
合計すると3万6千個、16億2千万円の取引だぜ。
米国からのオファーも来ているんだが、こっちの方は取り敢えず試供品扱いの数十個買いだな。
企業からの試供品依頼にも応えており、一度限りで、10個単位での販売もしているんだ。
消費税込みならば約50万円だよね。
円安ドル高傾向だから、米国や欧州の企業は食いつきやすいと思うよ。
因みに個人購入も可としているが、こっちについては販売網が設定されていないので、今のところ自分で買いに来てもらうしかないんだ。




