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二つのR ~ 守護霊にResistanceとReactionを与えられた  作者: サクラ近衛将監
第二章 異変

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2ー15 怪獣対策渉外担当課長

 私は、近藤レミ、内閣府怪獣対策特別担当大臣の下に有る怪獣対策渉外担当課長になっている。

 渉外担当課というのは、単純に言うと、対外折衝の何でも屋である。


 各省庁との根回しや連絡調整が主たる業務ではあるけれど、モンスターハンターの調査も担っている。

 目下一番疑わしき人物の特定を進めているのだが、相手は一筋縄では行かないのだ。


 年齢は18歳、本来は今年の三月に高校を卒業していたはずの人物だ。

 樺太におけるキメラ討伐の際に偶然にも映り込んだ画像、それに石垣島での飛竜討伐の際にとらえられた画像の二つを、AIによる画像分析にかけて、絞り込んだ対象者が32名だった。


 そのうちH県在住者は2名のみであり、黒龍討伐の際に自衛隊のレーダーから消えた飛行物体がH県のF市内上空で消息を絶っていることから、H県に当該人物が居住している可能性が大きいと推測された。

 一方で、石垣島での飛竜討伐の際にも、レーダー映像から飛翔物体の動きを掴むことができ、宮古島にて遂に自衛隊が設置した監視カメラに映像が捉えれられたのだが、シルエットはわかっても、顔が不明で特定は難しかった。


 しかも、当該人物は瞬時に視界から消えることをやってのけており、米国のオタクがSNSで申し立てているように、空間移動(テレポーテーション?)の能力、若しくは、それに近い何かを有していると思われることが判明したのだった。

 阿蘇山の黒龍、樺太のキメラ、石垣島の飛竜の三体はいずれも後に身体内部に金属の球を内蔵していることが判明している。


 黒龍と飛竜には三個存在することが判明しており、いずれも純粋な銅の塊であることが科学者の手により分析されている。

 これらの体内にあった銅の塊がそもそもモンスター固有の器官である可能性はゼロではないが、生物学者は疑問を呈しており、組織の中に銅の塊が放り込まれたように思えるとの推測を出している。


 因みに、樺太のキメラについては外地であることから詳細な分析がなされていないが、同じく金属球二個が発見されているという非公式情報がある。

 そうしてまた、欧州軍が討伐したモンスターにはそうした金属球が体内に無いこともわかっているのである。


 さらに言えば、ここ一年の間に各国の偵察衛星から得られる情報では、概ね昨年7月以降、台湾から始まって、東南アジア、中央アジア、中央ロシア、ロシア東部、C国及びD国の順に多数の大型のモンスターが討伐されているのである。

 生憎と偵察衛星では追いきれないものもあって詳細は不明なのだが、この10か月ほどで八千体余りの大型モンスターが討伐されていると見做されている。


 但し、日本で討伐されたモンスターとは異なり、体内には金属球が無いことが確認されている。

 欧州軍の軍医が、アゼルバイジャンで解剖した事例では、モンスターの枢要な生体器官が二か所で破壊されている可能性があると伝えている。


 この情報について問い合わせを行うと、飽くまで詳細は不明ながら、生体の重要な器官そのものが二か所で抜き取られているように思えるのだが、何せ解剖までにかなりの腐敗が進行しており正確な診断は難しいという返答がやって来た。

 この件で課内で自由討議型ディスカッションを行ったが、とある課員が言った。


「モンハン(課内では特定されていないモンスターハンターのことをモンハンと称している)は、おそらく空間移動の特殊能力を持っています。

 その派生で物体を転移させる能力も有している可能性があります。

 モンハンが活動を始めた当初は、金属球で心臓等の枢要な生体器官と置き換えていたものが、その手法が進化して、生体器官そのものを取り出すようにしたのではないかと思われるのです。

 そうでなければ、日本でのモンハンとアゼルバイジャンでのモンハンが別人という可能性もあるのですけれど、時系列的に見て、台湾から徐々に西方向へ行き、再度東へと討伐が進んできた状況からモンハンは一人の蓋然性が高いと思われます。」


 現在は、私もこの意見に賛同している。

 偵察衛星の情報分析から大まかなモンハンの動きが分かったからである。


 昨年7月に始まり、5月に終了した大遠征のルートである。

 無論、夜間に討伐されている事例もあるようなので推測の域は出ていないのだが、おそらく大枠では間違いが無い筈だ。


 そうして、その活動時期が、秦山英一郎なる18歳の若者の家出時期に合致しているのである。

 直接会って話をしてみたが、ほとんどの質問にノーコメントで確証は得られなかったが、この人物がモンハンである可能性は非常に高いと言える。


 ある意味で彼がモンハンであるとするなら随分と変わった気質の人物だろう。

 若者ならば有名を()せる願望が少なからず有るだろうに、この若者はむしろ目立つことを避けているようだ。


 本来であれば、この人物を政府に取り込みたいところではあるが、本人が望まないのであれば強いるわけにも行かない。

 ウチの課員の推測が当たっていれば、彼は遠距離を瞬時に移動できる能力を持っている。


 そんな人物に無理を強要すれば、海外に逃げ出すだろう。

 少なくとも家出から帰宅する前日の夜に、マレーシアのクアラルンプールから●TubeとXXに『半ば終息宣言』を投稿した|Tan Yǒngxiángタン・ヨンシャンなる人物若しくはPEMBURUなる団体又は組織が存在するかどうかは不明だが、モンハンが少なくとも色々な海外の基地を持っていることは確実だろう。


 仮に秦山君が、モンハンだとしても、この10か月もの間、いずれの国家の支援もなしに外地、それもほとんど人の住んでいない場所で生き抜いてきた能力は(あなど)れない。

 彼がモンハンであるならば、いつでも海外に逃げてそこで生活ができる力を持っていると思われるのである。


 一方で、彼は、高校一年在学中に全く新たな方式の地中探査機器を開発しており、文科大臣賞をもらっている至極優秀な人物である。

 中学時代の成績は最上位というわけではないが、高校に入って間違いなくAクラスの学力を見せ始めた人物でもある。


 特殊能力?

 周辺を当たっても彼がそのような能力を持っているかどうかは不明であった。


 普通であれば何某(なにがし)か表面に出てきてもおかしくはないのだが、彼の場合、余程隠蔽(いんぺい)が上手なのか表面化していないのだ。

 いずれにしても彼に海外に逃げられると、我が国の損失になるから、これ以上の深入りは禁物だろう。


 彼の善意に甘えておく方が我が国にとっても利益になるだろうと思われるのだ。

 但し、監視の目は続けることにする。


 彼の能力が暴発しても困るのでね。

 政府の立場で考えた時に、彼を追い込むことができないのは事実なのだ。


 そもそも推測以外の証拠がまるで無い。

 家出後の足取りすら一切つかめないのだから、どうしようもない。


 せめて家出中に外国に彼が存在したという証拠でも見つかれば相応に追及もできるのだが・・・。

 多分、その証拠を得て身柄を確保しても、彼がモンハンならば厳重に見張られている留置場からでも逃亡し、二度と姿を現さないだろう。


 我々にできることは、無駄とも思える鋭意監視を続けることしかできないのだ。

 彼の場合、監視カメラにも盗聴にも気づいている可能性が高い。


 少なくとも、家庭の会話の中でモンハンに関する会話が一切出てこないのだ。

 彼の親しい彼女に、小林梓なる人物がいる。


 彼女は高校を卒業し、既にK薬科大学に進学している。

 将来は、薬師というより薬学の研究員になりたいらしい。


 家出から戻った後で彼女とのデートがF市内であったようで、監視チームがその動静を追ったが、有益な情報は得られなかった。

 むしろ、我々の監視が(わずら)わしいので家出をして姿をくらませていたというような話を聞かされたようだ。


 少なくとも、彼が我々の監視に気づいているという証拠でしょうね。

 小林梓との関係は、親しい女友達と云うよりも、恋人同士に近い関係と報告は受けている。


 彼女を人質(ひとじち)にすれば彼を手に入れられる?

 いや、それは絶対にやってはならない悪手でしょうね。


 仮に、彼がモンハンであるならば、一国の軍隊でも歯が立たないモンスターを一人で蹂躙(じゅうりん)できる化け物なのだ。

 もしも、彼が切れてしまったなら、軍隊でも抑えきれないだろう。


 もう一つ、米国から得た秘密情報によれば、D国の秘密研究所における実験が今回のモンスター出現の元凶である可能性があるらしい。

 そうして重要なことは、その詳細不明な実験によって時空の亀裂が生じ、その亀裂からモンスターが大量に流入したという仮説が出ていることである。


 亀裂は、2034年3月初めに発生し、5月上旬には消滅していたらしい。

 亀裂消滅の理由は定かではないのだが、推測では地下深くにあった原子力発電所が停止したことによるらしい。


 因みに、原子力発電所の作業員は3月下旬の時点では死んでいるものと推測されている。

 食糧と水が補給されていないからであり、また、衛星情報では発電所から逃げ出した所員多数がモンスターにより捕食されている画像が有るようだ。


 もう一つ重要なことは、亀裂発生から四日後には、C国が当該亀裂周辺のモンスターに対して核攻撃を加えていることだ。

 このために、実験施設及び原子力発電所周辺地域には高い放射能が充満しており、とても人が生存できる環境ではなかったようだ。


 一方で作業員が、手動で発電所を停止した場合は一月ほどで発電所が停止するらしく、米国のDARPAでは、何者かが2034年4月上旬頃に原子力発電所に侵入し、発電所を停止するシーケンスを起動させたのではないかと推測している。

 この何者かが、秦山君の可能性もあるわけだけれど・・・・。


 さて、致死性の放射能が充満する場所に高校生だった彼氏が危険を冒して潜り込む?

 ちょっと考えにくいのだけれど・・・・、どうなのでしょうねぇ。


 あるいは、放射能を防護できる能力も彼が持っているのかしら?

 D国については、放射能の低減状況をみつつ、現地調査が可能になれば日本を含めて国際合同調査団を送ることになっており、その際にこのDARPAの推測が正しいかどうかわかるでしょうね。


 もう一つは、秦山君の保護ですね。

 監視を続ける一方で、海外の諜報員等が彼に接触することを防止しなければならない。


 何処やらの〇×党議員の御蔭で、少なくともCIAとMI6には、モンハンの候補者として秦山君の名が内閣府内で挙がっていることを察知されている。

 従って、彼らも我々と同様の推測をしている可能性が大なのだ。


 とくにCIAは、非合法組織も抱えていることから注意をしなければならない。

 ウチでも、内調や陸自防諜部隊の協力を得て、周辺監視を強化しているところだけれど、エスピオナージまで出て来ると本当に厄介になるわよねぇ。



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