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二つのR ~ 守護霊にResistanceとReactionを与えられた  作者: サクラ近衛将監
第二章 異変

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2ー12 とりあえずの最終局面と帰還

 C国南部域に入って、ちょっと問題が発生した。

 湖南省、江西省、福建省辺りから昆虫の化け物が増えだしたんだ。


 特に始末に困ったのが蜂のモンスター(キラー・ビー)だ。

 スズメバチの体長は、精々3センチから4センチ、スズメバチの女王でも5センチ程度のはずだろうけれど、C国南部に蔓延(はびこ)っていたのは、体長が1mに近いでかい奴だ。


 これが花の蜜じゃなくって、肉を食らっている。

 胴体の径が15センチほどもあって、時速200キロほどの速度で移動するし、武器ともなる尻の針は20センチを超えているかもしれない。


 この針で動物を刺してその毒で麻痺させ、肉を食らい、あるいは、巣に持ち帰るという奴で、集団で獲物に(たか)るから、既存の大型動物でも余程皮膚の堅い奴じゃなければ対抗できないかもしれない。

 こいつが、大型の昆虫のモンスター(体長7mほどのカマキリに似た昆虫、ラノベではキラー・マンティスだっけか?)に集って食べているのを目撃したが、まぁ、凄まじいの一言だな。


 既存の動物でも熊やパンダぐらいなら簡単に食われてしまうかもしれないな。

 それと繁殖率が高そうだ。


 飽くまで餌があることが前提なんだろうが、餌を求めて女王蜂が南下しているところに遭遇したから、放置すると東南アジア全域が危ないかもしれない。

 幸いにして、女王蜂の移動速度が一日に数十キロ程度なので、今のところベトナム辺りには届いていないけれど、こいつもいずれ脅威になるのは間違いない。


 軍の持つ装備でも退治はできるかもしれんが、レーダーでの捕捉は難しいだろうし、数が多い上に働き蜂の速度が異様に速いからね。

 狙いが付けにくいんじゃなかろうか?


 俺が何とか出来るかというと、ちょっと工夫をせにゃならん。

 まずは相手の動きを止めなければ話にならんよな。


 俺の方は、D国の原発に行った時のように、周囲360度をチタン壁にした球状の殻の中に籠り、空中に浮かぶ。

 この移動要塞の中でなら蜂モドキがいくら襲ってきても大丈夫だろう。


 それから守護霊の黄さんが提供する周囲の情報に従って、一番南下している奴のところへ行き、周囲の空気抵抗を広範囲にわたってじわりじわりと上げてやると、蜂の羽ばたき速度が遅くなり、やがて飛翔できなくなって、地上に落ちるんだ。

 そこを狙って金属塊をアスポートさせて、蜂に同化させることで退治する方法をとったよ。


 蜂にも(コア)があれば、そいつを狙ってアポートするんだけれど、あいにくと蜂にセンサーをかけても核の位置が不明だったんだ。

 でやむなく、蜂の身体全体を金属塊に取り込むようにアスポートして同化させたわけだ。


 真っ先に狙うのは女王蜂な。

 これ以上増えてもらっちゃ困るから、大本(おおもと)を絶ってから下っ端を片付けることにした。


 女王蜂が分蜂(ぶんぽう)したのか、最初から居たのかよくわからないけれど、女王蜂だけで5匹もいたぜ。

 それらに従っていた蜂が、各200匹から300匹もいたからね。


 討伐にも時間がかかった。

 結局こいつらの討伐だけでも丸々一月半もかかったよ。


 見逃していなければ良いのだけれど、黄さんの情報では他には見かけていないとのことだった。

 やっぱり、寒くなって南に下がっている途中だったのだろうな。


 こいつが片付いてから、湖南省、江西省、福建省に戻って、これまでと同じように南北を行ったり来たりして討伐を続けている。

 やっぱり西方域や北方域に比べると、モンスターの数が多そうだ。


 ラノベに出てきそうなゴブリンやらオークやらは今のところ見ていないな。

 四足モンスターはよく見かけるけれど、人型魔物がそもそもいないのか、弱肉強食の生存競争に負けてしまったか、あるいは、そもそもこちらの世界に渡れないほど弱かったのかもしれないな。


 ゴブリンなんかは、ラノベでは繁殖率が非常に高いモンスターという設定のはずだから、あんなのが来ていると困るよね。

 まぁ、そんなのがいたにしても、そいつらは各国の軍隊に任せておこう。


 そうしてさらに数か月、ようやく俺の捜索域が東シナ海と日本海に達したよ。

 俺が日本を発ってから討伐したモンスターは総数で1万3千ぐらいのはずだ。


 残りは地面に潜っているワームとか、小さいのでその痕跡を手繰れなかった奴、それに、モンスター同士で生存競争を行って自滅した奴もいるからな。

 大枠で大型のモンスター討伐は済んでいるんじゃないかと思っている。


 それからも、黄さんの霊界ネットの情報に基づいて極東から東南アジアにかけて散在している大型モンスターを狩り続け、一応の討伐が終わったのは2036年5月のことだった。

 もう俺の同級生はみんな高校を卒業し、進学若しくは就職しているんだろうなぁ。


 俺は、家出して休学中だからな。

 三年生に留年のままのはずだ。


 学籍は多分消されていないはずだけど、今更、高校に通うのもなぁ。

 いずれにしろ、取り敢えずは実家に戻ろうか。


 何となくほっとして、緊張感が薄れた所為か、疲れが出て来たし、みんなの元気な顔を見たくなったよ。

 但し、その前に国外の都市に寄って、現ナマの確保と物資補給をしておこうと思う。


 万一の場合は、国外への逃亡も考えておかねばならんからな。


 あちらこちらに手配がかかるかもしれないから、偽の身分証も必要かもね。

 黄さんの情報によれば、シンガポールとかマニラ当たりの闇ルートならば、日本の偽パスポートが入手できるかもしれないということだった。


 無論、日本で使うつもりはないんだが、外国でなら使えるところがあるかもしれない。

 パスポートってのは、素人ではわからないような本物か偽物かを判別できる仕組みがあるようなんだ。


 だから、そいつをよく知る闇のシンジケートを利用するしかないな。

 ある意味で危ない奴らだから、こっちもしっかりと用心しなけりゃならん。


 最終的に黄さんの霊界ネットで情報を貰い、シンガポールの闇ルートでパスポートを入手したよ。

 但し、日本国籍ではなくって、シンガポール国籍な。


 日本製のは、やはり難しいようだ。

 俺の名前は、|Li Chung Wenリー・チャン・ウェンという中国系のシンガポール人の名前になったよ。


 これを使うには、シンガポールから出るところから始めなければならないんだが、取り敢えず今は使わない。

 パスポートやら身分証明書を作るのに二週間、米ドルに純金インゴットを替えるのに、バンコック、シンガポール、マニラ、台北で闇ルートを使って、各500グラムのインゴット四枚2キロを換金して、約17万ドル程度を得たよ。


 四か所合計で、約67万ドル(円換算で言えば約1億円程度かな)余りになる。

 今のところ、銀行なんぞは使えないから、全部現金のまま保管だ。


 それぞれの闇ルートで百ドル札1700枚程度だから、さほどの量ではないけれど、サービスで現金の詰まったアタッシュケースや買い物袋ごと貰ったよ。

 それに以前換金した残りがまだあって、それらを合計するとさらに5割増しぐらいの金額になるんだ。


 一生大丈夫とは言わないけれど、しばらくは余裕で暮らせるだろうな。

 この金を使うことが無ければ一番よいんだけれどね。


 もう一つ、クアラルンプールにも寄って、マレー系の身分証を闇で入手、これを使ってパソコンとスマホを購入したよ。

 何に使うかというと、半ば終息宣言のための小道具かな?


 未だどうするかは決めていないんだけど、正式に家に姿を現す直前にはネットに仕掛けておきたいと思っている。

 文章だけのSNSとか、画像を含めて●tubeとかに乗っければ、真実か否かは別として、そこそこ拡散するでしょう。


 勿論、俺の顔や声は一切出さず、人物のシルエット画像と文字だけのアップで、これまで討伐したモンスターの映像をいくつか乗っけてやれば真実味が増すだろう。

 配信者は、「Pemburu(マレー語で狩人の意味)」にでもしておくつもりだし、発信もクアラルンプールからする予定。


 取敢えずの保存食料も仕入れて、ブルネイ、フィリピン、台北を経由して沖縄に跳び、島伝いに九州へ、さらに四国経由で我が家に着いたよ。

 この頃には、転移ポイントさえ明確になっていれば、一挙に1500キロぐらいの距離の転移が可能になっていたからね。


 夜間に飛翔と転移を繰り返して、我が家の上空に辿り着いていた。

 2036年5月24日午前4時19分のことだった。


 夜明けにはまだほんの少し早い時間だが、既に東の空は明るくなり始めている。

 我が家で一番朝早く起きるのは祖母だが、それでももう一時間ほど後じゃないかな。


 黄さんに我が家の周囲上空に航空機が居ないことを確認してもらってから、我が家の上空500mに転移し、そこから自分の部屋に転移したから、外に監視カメラが有っても気づかれる心配はまずないだろう。

 黄さんの霊界ネットによれば、政府筋の者らしき人物が仕掛けた監視カメラが、我が家を俯瞰ふかんできる電柱やビル屋上等三か所に設置されており、我が家の出入り口も常時見張られているそうだ。


 俺の部屋は、カーテンが閉まっているから中までは覗けないはず。

 まずは俺の無事な姿を見せて、皆を安心させてから、改めて家に出入りすることにしようか。


 今日は、土曜日だから、会社も学校も休みのはずだ。

 ただ、母のお弟子さんたちが午後には来るんだろうな。


 家の食事は朝の7時なんだが、これは土曜・日曜でも変わらない。

 俺が朝食時に急に出て行くと、用意していた食事の数が合わなくなるかもしれないから、自分の朝飯分は保存食料から出すことにしよう。


 台北で購入したモスバーガー辺りが良いかもな。

 7時5分になったので、二階から降りて、食堂に行くと、家族みんなの顔が一斉に振り向いた。


 その瞬間に、盗聴防止のために用意していたスマホからの音楽を結構な音量で流したよ。

 花奈(かな)麗花(れいか)が、ガタっと椅子を蹴飛ばしながら立ち上がり、俺に飛びついてきたよ。


 二人とも顔をしかめながらむせび泣いている。

 俺は小声で云った


「みんな、ただいま。

 世間には内緒だけれど、一応、無事に戻って来たよ。

 朝飯の用意はあるから、俺の分は要らない。

 それと、盗聴されている恐れもあるから大声は出さないでね。」


 とりあえず、笑顔を見せて、手に持っている紙袋を見せながら俺はそう言った。

 それからが色々と聞かれて大変だった。


 取り敢えず、家に戻ってくるためには正式に玄関若しくは裏口から入る必要があること。

 家が少なくとも三方から監視カメラで狙われていることを教えたよ。


 流石にリビングの奥にある食卓までは狙っていないようだけれど、我が家の人の出入りや庭が間違いなくチェックされているし、家の中での会話や電話などは盗聴されているだろうことも教えた。



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