同室
「いや〜、ライもレオナも了承してくれてよかったよ」
「……」
シーラと僕が同室という提案、もちろん僕とレオナは反対した。しかし、レオナはシーラの「命令だよ」の一言で撃沈。かくいう僕も、「ライは私と同じ部屋は嫌?」という言葉の前には無力だった。
今は晩御飯も食べ終えて、部屋にはシーラと僕以外誰もいない。シーラも四六時中ハイテンションなわけではなく、今は少し落ち着いている。よかった、常にあのテンションについていくとなると少し疲れる。
「ライ! お風呂入ろう!」
「はい、浴場行きますか? 用意してきます」
「何言ってんの、それじゃ一緒に入らないでしょ」
「え?」
「実は大浴場以外にも、各々の部屋にお風呂は用意されてるんだよ。私の部屋は特別にちょっと大きく作ってもらってるんだよね。だから二人で入っても大丈夫だよ!」
さっきまで落ち着いていたのは、どこに行ったんだろうか。一瞬でハイテンションに戻ってしまった。
「って、いやいやいや。なんでそうなるの!?」
「え〜、何か問題あるの?」
「何かも何も問題しかないじゃないか!」
「大丈夫だよ、湯浴み着があるから。もちろんライの分もね」
そう言ってシーラは、クローゼットの中を漁る。湯浴み着といったらあれだろうか、柔らかな素材で貫頭衣のような。
「あった! これこれ、はい、ライの分!」
手渡されたのは、短パンのようなもの。男性用のものはこのような形状なのか。
「って、何それ!?」
「何って湯浴み着だよ」
シーラが手にしているものは、男性用のライのものと比べても明らかに布面積が少ない。そう、現代日本風に表現するなら、マイクロビキニ風といったところだろうか。
「ほとんど下着同然だよ!?」
「別にライはもう私の下着見たことあるでしょ」
「あ、あれは、不可抗力だって!」
く、くそっ! このまま話を続けていると、シーラに言いくるめられる未来しか見えない。な、なんとか、話題の転換を……。
「そ、そんなことより、明日から仕事が本格的に始まりますけどーーー」
「話を逸らさない! 私はライと一緒に入りたいけど、いや?」
「いやではないけど、いやではないけどっ! それとこれとは話が違う!」
そうここは譲るわけにはいかないのだ。ここで負けたら、明日からも大浴場を利用できない日々が続くかもしれない。
「なんでライは一緒に入るのをそんなに嫌がるの? ちゃんと理由があるなら、言ってくれれば私も考えるよ」
「理由……理由…………」
別に僕もシーラが嫌いなわけではない。まだ出会って1日も経っていないけど、いい人なのはわかっている。だからこそ、嫌な理由はないのだ。
「ない……です…………けど」
「じゃあオッケーだね、早く行こ!」
パァッと輝くシーラの笑顔、対照的に浮かない顔の僕。果たして、僕は大浴場を使う日は来るのだろうか。
「いや〜、いい湯だったね!」
「……はい」
いい湯だったことを否定する気はない、けれどもう少しいい湯を楽しめる状況であってほしかった。お風呂の中でもハイテンションのシーラは洗いっこしよー、と提案、湯船に浸かっている時には、こちらに抱きついてくる始末。シーラも女性な訳で、つまりその身体的な発育が大きくないとはいえある。それがいちいちふれるものだから、ライはずっとドキドキしっぱなしだった。ちなみに、レオナは絶壁だ。
「もうそろそろいい時間だし、寝よっか!」
「ベッドは……」
おかしいな、さっきまであったはずなんだけど。最初来た時には一つしかなかったが、ここが自室だと紹介された時には二つに増えていた。同室にするにあたって増やしたのだろうと思っていたが、なぜなくなっている。お風呂入る前まではあったのに。
「あのベッド不良品だったらしくてね〜。替えのベッドも全部不良品でさ〜」
「隠す気ないだろ」
つい口に出てしまった。これはあれだろうか、一緒に寝ようとかだろうか。だがこれは僕も少しは予想していたこと、対策は練ってある。
「だからさ〜、ライ。一緒に寝よっ!」
「うん、分かった」
「おおっ、らいも素直になったね。いいことだよ!」
都市長様のベッドともなれば、かなりのサイズとなる。二人で寝てもかなりスペースが余る。シーラは当然のように、くっつこうとしてくるが、ここは素直に従う代わりに少し間を空けさせてもらう。
「電気消すね、おやすみ〜」
「おやすみなさい」
電気を消してすぐ、シーラの方から寝息が聞こえる。よかった、寝つきはいいようだ。そしてここからが今回僕が考えている作戦。シーラが寝てから布団を出て床で寝るだ。馬小屋暮らしが常だった僕からすれば、絨毯だけでもありがたい。言い訳は寝相が悪いからとでも言っておけばいいだろう。
(起こさないように、静かに……)
「ん〜、ムニャ……、ライ〜」
「っ!?」
背後から柔らかな感触。こ、これは、抱きつかれているっ!? 現実とは非情である。数回の寝返りで空けていた間を埋めたシーラが僕に抱きついてきた。しかも、腕をどかそうにも、力が強くて全然動かない。必死に頭を動かすが、解決策は見つからない。僕は諦めて、徹夜を決意する。いかなる場所でも寝る自信のある僕だが、流石にこの状況で寝れるとは思わなかった。
(というか、寝言で名前呼ぶのは、普通幼馴染とか関わりの深い人だけでしょ)