都市長
「なんでこうなった……」
今僕はシーラの部屋で一人立ち尽くしている。
というのも、服を着替えてからすぐ、使用人の方がシーラを連れていってしまったのだ。何やら仕事があるらしい。シーラはかなり立場の高い職に就いているようなので、仕事も多いのだろう。シーラは渋々といった感じで部屋を出ていった。
「ええ〜、また仕事? まあ、しょうがないけどさ〜。あ、ライは部屋でくつろいでてね、そうそう、パンツはタンスの右下の引き出しに入ってるから、盗りたかったら盗っていいよ」
「いや、盗りませんよ!?」
「またまた〜、照れちゃって。じゃあ行ってくるね」
人がいる前でそういう誤解を招くような発言は控えた方がいいと思う。ほら、呼びにきた使用人、何こいつみたいな目で見てる。絶対誤解された。明日からここで働くんだけど、どうしてくれるのだろうか。
と、途中このような一幕があったが、何はともあれ今シーラの部屋で一人なのだ。そして、やることがない。シーラはああいっているが、さすがに女性のタンスやクローゼットの中身を物色するのはまずいだろう。
とりあえず、壁に掛けてある絵画を見てみる。おそらく値の張る物なのだろうが、豊かな芸術センスを持っていないらいにとっては、何がいいのかよくわからない。
他に何かやることはないだろうかと、部屋を見渡す部屋の隅に布の塊。さっきまではタンスの陰に隠れて見えていなかったけど、あれは……服かな。脱ぎ散らかしていたのを一箇所に集めたのだろうか。あのままでは見た目も悪いし、畳んであげよう、召使いとしての初仕事だ。
「って、なんでこんなものまであるんだよ!」
服を畳み始めた僕は、ぎこちないながらもきちんと服を畳めていた。そこまでは良かったのだが、積み重なる服を畳んでいくと、明らかに面積の小さい布からが発掘されたのである。そう、パンツである。
「脱ぎ散らかしていいのは服とズボンだけでしょ……。どうすんのこれ」
親指と人差し指でパンツをつまみ上げる。別に汚いとか思っているわけじゃなく、ベタベタ触るのはシーラに悪いと思ったからだ。
ガチャ
「シーラ、仕事がまだ残っているのですから、って、いない? 行き違いになってしまい……まし……た…………」
「……」
「……」
部屋に入ってきた青い髪の女性と目が合う。一応、自分の右手も確認しておく。右手につままれているのは、シーラのパンツ。終わった。
なんでこんな絶妙に最悪なタイミングに人が入ってくるのだろうか。事情を知らない人から見て、この状況はどう映っているのだろう。少なくとも、よく映っていないのは確かだ。また誤解が生まれてしまった、明日から働いていけるだろうか……。
「シーラ付きの使用人……ではないですね。下着泥棒ですか。この部屋に入るとはいい度胸です」
「いやっ、違いますって!」
「罪を突きつけられ錯乱した犯人は、誰でも根拠の伴わない反論をします。今のあなたみたいにね!」
「本当に違うんです。僕はシーラに雇われて……」
「ん? あなたの着ている服、シーラの服ですね。そこまで変態でしたか……」
「それは同じ商品を買っただけかもしれないでしょう!」
「本当にそうなら、言い切るはずでは? それにその服はオーダーメイドです」
新事実発覚、そんな服を僕なんかに渡してしまって良かったのだろうか。というか本当にどうしよう、何を言っても悪い方向に持っていかれるんだけど。周りから見ると完全にこっちが悪いことをしているだけあって言い訳が見つからない。
「それと! よくシーラに雇われたなど嘘をつけましたね、本人確認しに行きましょうか、貴方の罪を白日のもとに晒してあげましょう」
そう言って、青い髪の人は僕の手を掴んで部屋の外に引きずり出す。そこからもほとんど引きずられるかたちで、西棟を出る。建物の外に出て、向かう先は本棟だ。ここに来るまで、すれ違った人全員に二度見されたんだけど。悪い噂が広がらないことを願うのみだ。もう遅いのだろうけど……。
青い髪の人は本棟に入って迷わず階段を上がっていく。着いた先は最高階、6階の右奥の部屋。両開きのよくわからない模様の彫り込まれた立派な扉、その横には間の抜ける文字で『としちょーしつ』と書いてある。えっ、シーラってもしかして……
「シーラ! 下着泥棒を連れてきました!」
「下着泥棒って……、え!? ライじゃん。ほんとに盗んだんだ、もう、えっち〜!」
「違うんだって! 僕は」
「違うも何も、私が部屋に入った時、シーラの下着の匂いを嗅ぎながら、気色の悪い顔で笑っていたではありませんか!」
「え、きも」
「脚色されてるっ!?」
シーラ本気で引いちゃってるじゃん。シーラまで敵に回したら僕の味方はいなくなる、どうすればいいんだ!?
「本当に誤解なんだ、シーラに部屋に置いてかれてやることもなかったし、脱ぎ散らかしてあった服でも畳もうかなと思ったら、服の下から下着が出てきて……」
「なんだ、そうだったの。ありがとうね! だってさ、レオナ。早とちりはダメだよ〜」
「その言葉が嘘だという可能性も……はぁ、わかりましたシーラがいいならいいです」
青い髪の人、レオナっていう名前なのか、透明感のある淡い青色のセミロングの髪をストレートに下ろしている。目の色は青というより藍色で深みのある色だ、顔立ちもキリッとしていてとてもクールな印象を受ける。
「それと、シーラに質問なんだけど、シーラって年長だったの?」
「そうだよ言ってなかったっけ? あ、そうだレオナ、このライって子を今日から私の召使いにするから、私付きの使用人外しといてね。もう言ってたっけ?」
「「言ってないよ(ませんよ)!!」」