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死神の世界  作者: surpertank
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試練

「今日、強化週間最終日は、ライに試練を与える!」

「試練って……」

「熊型の死獣、猪型の一個上の死獣だね。それを倒してもらう。ちなみに、熊型はベテランの冒険者でも一対一で倒すのは苦労するね」


 なるほど、つい二週間ほど前までは、最低の依頼しか受けることのできなかった僕が、そんなに強い死獣に挑めるだけの力を手に入れたというのか。なんというか、胸に込み上げてくるものがある。


「……って、流石におかしくない? 一週間だよ」

「ああ〜、普通は一人で死獣狩ったりしないからね。いくら戦闘系能力を持っている人でも、最初は複数人でないと犬型も倒せないんだよ。ライの神器が異常なだけ」


 改めて感じる神器の素晴らしさ。そして、その神器を他にも複数人に与えているというらしい、シーラの恐ろしさ。無能力もいれば、理不尽なほどに強い能力を持つもいる。神はパワーバランスの調整が苦手なのだろうか。


「今日は熊型のいる森の奥まで行くからね、早めにしゅっぱーつ!」




 途中で出会った犬型、猪型はその都度倒していたので、森を進むペースが少し遅くなった。森の奥へ進んでいる間に正午になってしまう。


クゥ〜


「どうしたのレオナ? お腹減った?」

「いえ、私ではありませんが……」

「じゃあ、ライか!」

「いや、流石に騙されないよ!? お腹鳴ったのどう考えてもシーラだったよ!」

「くっ、やはり誤魔化せなかったか!」

「そろそろお昼にする? ってか、よくよく考えたら、なんで付き添ってるだけのそっちがお腹鳴らしてるの……」


 シートを広げて、弁当箱を取り出して準備をする。さらさらと木の葉が揺れ、それに合わせて木漏れ日も揺蕩っているのが心地よさを感じさせられる。小鳥の囀りも自然の雰囲気を作るのに一役買っている。


「今日のお昼は熊型死獣のお肉!」

「それは、なんでまたこのタイミングで?」

「熊型と戦う時に、俺はさっきお前を食べたんだぞ! って考えたら、なんか勝てそうな感じしない? 一種の験担ぎみたいなものだよ」

「そういうものなのかな……」

「そんなんじゃ、勝てないよ! もっと暑くなってかないと!」

「シーラ、これに関しては私もライと同意見です……」


 静かで優しい雰囲気の中で、暑苦しく騒ぎ回るシーラ。元気が有り余っている。いやほんとに、なんでさっきお腹鳴ったんだよ。


 今日は熊肉サンドイッチを作ってきてくれたようだ。作ったのがシーラなので、例の漏れず普通以上普通以下に美味しかった。ただ、肉は独特ではあるものの、今まで食べてきたものの中で、最も旨味があった。


「ふうー、美味しかったー! 食べてすぐもなんだし、ちょっとしてから熊型と戦いに行こうか」

「そうしてくれると、僕としても嬉しいね」


 近場にいた猪型死獣を数匹倒して腹ごなしの運動とする。猪型を倒すようになってからは、さらに成長速度を体感することが多くなった。神器に頼って戦っているせいか、魔力による身体能力の上昇は猪型を討伐できるレベルに達していない。明らかにレベル差の合わない相手を倒し続けているから、こんなにも成長率が高いようだ。


「ん? んん〜? あっちから気配が」

「死獣にも気配とかあるんですね」

「経験でなんとなくは分かることはあります、特殊な音がしたり匂いだったり」

「私の場合勘だけどね!」


 シーラの勘とやらに従って森を進んでいくと、何かを砕くような音が聞こえてくる。ちらっと黒い物体が見えた気がする。恐らくあれが熊型の死獣なのだろう。


「私達はここら辺で見とくから。頑張ってきてね、レッツゴー!」

「行ってきます!」


 死獣はまだ僕に気付いていないようで、何やら木を殴って粉砕している。縄張りでも作っているのだろうか。あの拳に猪型の全体重をかけた突進と同じ威力があると思うと、足が震える思いだ。身体の大きさは猪型と同じくらいなのだろうが、今までの死獣と違い二足歩行をしているので、距離があるのに見上げるようになる。


「奇襲とか出来たらよかったんだけど、自分から攻撃できないからね。強い異能だから我儘は言っちゃダメなんだけど」


 声に反応した死獣がこちらに振り向く。縄張りに侵入したことを告げるように、低い唸り声でこちらを威圧してくる。すぐに襲って来なかったり、縄張り意識があったりと、今までの死獣と比べて、少しは頭がいいようだ。


「グルゥァア!」


 威嚇しても全く動かないライを見て敵と判断したのか、死獣はこちらに駆けてくる。動きはたどたどしいが、体がでかいだけあって早い。しかも、右手にはさっきまでへし折っていた大木を持って、振り回している。かなりの大きさなのだが、爪を突き刺し、器用に扱っている。


「武器は僕たちの特権でしょ!?」


 二足歩行なだけあって、器用な戦い方をする熊型。左手を地面に突き刺したかと思うと、腕を大きく振り上げる。何をしているのか理解できなかったライも、次の瞬間、自分が窮地に追いやられたことに気づく。


ズシャァ!


 死獣の左手により大量の土砂がこちらに叩きつけられる。砂土の一粒一粒の威力はそこまで高くないが、視界が塞がれる。今まで、ライが死獣から攻撃を比較的受けずに戦闘できていたのは、左手の籠手の異能のお陰。しかし、その異能も相手の攻撃を防げなければ意味がない。視界を潰されたのは、大きな痛手となる。


「これは……、やばいかも」

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