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思い人は、ただ一人の家族。

さくっと読めるものを目指します。

 この思いは家族愛ではなく、恋愛である。


 自覚したのは、三年前。いや、本当はもっと早く分かってはいたのかもしれない。でも、はっきりと言葉で自分の気持ちを表せたのはその時だった。


 そう、私──秋原桃香には好きな人がいる。その人のことを考えると、どうしようもないくらいに好きって気持ちで溢れて、どきどきが止まらなくなってしまう。そんな相手が。


「ふぁぁ……おはよう、桃香ちゃん」

「おはようございます。杏子さん」


 神崎杏子さん。私の保護者であり、同時に片思い相手。


「あ、朝ご飯……いつもごめんね?」

「いえ、杏子さんは毎日夜までお仕事頑張っていますから、これくらいは」

「桃香ちゃんもいつも学校で頑張ってるのに……起きれなくてごめんね。いつもありがとう」


 あの日、一人ぼっちになってしまった私に手を差し伸べてくれて、一人でここまで育ててくれた、すごい人。恩人と言っても過言じゃない。


「いただきます」

「はい、召し上がれ」


 美味しそうに朝ご飯を食べる杏子さん。……かわいい。素敵。もう言葉に出さなくてもいいくらい嬉しい反応。このために毎日杏子さんより早く起きてるくらいだ。今日一日の元気をここで貰ってるっていいくらいには、嬉しい。


 杏子さんが私を迎えてくれたのは、丁度今の私より少し年上の時。高校を出てすぐ働き始めて、その時に引き取ってくれた。きっと大変だったはずなのに、今までわたしを見捨てないでいてくれた。感謝しきれてもしきれない。


「美味しいなぁ。流石桃香ちゃん!」

「うふふ、ありがとうございます」


 だからこそ、私はこの思いを杏子さんに伝えない。伝えられない。


「いやぁ、本当に桃香ちゃんは自慢の娘だよ!」


 何故ならそれを、杏子さんは望んでいないから。


 杏子さんからしたら、私は年が離れすぎている。何より、私は杏子さんの義理の娘。そんな関係なんてきっと杏子さんは望んでない。


 勿論、杏子さんが好きという気持ちは変わらない。好きだからこそ、杏子さんには幸せになってほしい。もし杏子さんが彼氏を見つけてきて、結婚するとなった場合でも、それが杏子さんの幸せになるなら素直に祝福するつもりだ。


「ありがとうございます。でも、育ててくれた杏子さんのおかげですよ?」

「あー、そういってもらえるの凄く嬉しいな。っていうか本当にキレイに育っちゃって……」


 きっと、杏子さんは気が付かない。自覚して以来、私が杏子さんと会う時は基本的にメイクをしてることを。好きな人にはいつだって、素敵な自分を見てもらいたいから。


 少しくらい、気がついてもいいのにな。多分これは我儘なんだろうけど。


「おいしかったよ。ごちそうさま」

「はい、お粗末様でした。ではそろそろ登校時間になるので、片付けをお願いしてもいいですか?」

「任せてー。いつものことだし、これくらいはやらないとね」


 笑顔で返事する杏子さん。……やっぱりかわいい。最高です。このために生きてるってほどに。


 もう少し見ていたいけど、行かなきゃいけない。ここで遅刻なんてして杏子さんに迷惑をかけたくないから。


「いってきます」

「いってらっしゃい。気を付けてね」


 私と杏子さんはきっと一生結ばれない。それは分かってる。分かっているけど……。


 でもせめて……せめて、今だけは。二人で暮らしてる今だけは、この日常を──貴女と過ごすこの大切な時間を独り占めさせてくださいね。

ところどころ変わってますが、以前書かせていただいた作品のリメイクだったりします。

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